2009年5月26日火曜日

激しい背部痛

高血圧の既往があり、突然の激しい背部痛で搬送されてきた中年男性。救急隊現着時血圧170/。当院搬入時は150/。当然のごとく、急性大動脈解離を強く疑い、降圧しつつ造影CT撮影したところ、予想外に肺塞栓でした。もんどりうつほどの痛みを訴えていたので、肺塞栓では珍しいなと感じました。血行動態は落ち着いており、右心負荷所見もなく、リスクは高くなさそうなのは良かったのですが。。。
Up To Dateによると、肺塞栓の最も一般的な症状は呼吸苦(73%)ですが、それに次ぐのは胸膜痛(44%)です。ただ、当症例ほどの激しい痛みはもっと頻度が少ないのではないかと推測します。胸膜痛が生じる機序は、細かな血栓塞栓が最遠位、即ち胸膜近くにまで及ぶことで壁側胸膜に炎症を来すことによるらしいです。肺梗塞に至れば激しい痛みを生じるとも思いますが、肺梗塞は肺塞栓の10%ほどを占めるに過ぎず、当症例も組織破壊を示唆する逸脱酵素等の上昇は認めませんでした。肺は、肺動脈、気管支動脈、肺胞から、と3種の栄養供給路を有しており梗塞には至りにくいと聞いたことがあります。
肺塞栓もなかなか奥が深い疾患です。

1 件のコメント:

  1. 質問があります。

    この患者が痛みを発したのは昼間ですか?それとも夜ですか?

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