2009年8月20日木曜日

急性大動脈解離による脳卒中

意識障害、左上肢の痙攣と、左上下肢の麻痺で搬送された高齢女性。救急隊現着時は意識レベル100/JCS、血圧90台。当院搬入時は意識3/JCS、血圧100台/。痙攣は消失するも、麻痺は残存していました。NIHSS18。脳梗塞を疑いましたが、正確な発症時期が不明であり、痙攣あり、MRIでは所見に乏しかったこと、また臨床症状が改善傾向でありtPAは控え、Todd麻痺の疑いとして保存的に対処致しました。
その後バイタルサインや神経学的所見は改善傾向を示しましたが、数日の経過で炎症反応高値を呈し、入院約1週間後胸部CTを撮影したたところA型の大動脈解離が発覚しました。がーん。入院時のイベントは急性大動脈解離によるもので間違いなさそうです。病態悪化がなく幸いでした。

初期治療の際、一歩間違えれば、tPAを投与してしまう可能性も十分ありえたケースでした。
カルテを見返してみると、血圧の左右差や末梢動脈触知などはチェックされていないようでした。ただ、意識状態改善後も含め胸部症状は一貫して認めなかったようで、症状的には大動脈解離は疑いずらかったと思われます。胸部レントゲンでは縱隔がやや拡大傾向でしたので、レトロスペクティブに検討してみて、気づくチャンスがあったとすれば、このへんでしょうか。
脳卒中を疑うようなケースは必ず急性大動脈解離を忘れてはいけません。教育的症例でした。

2 件のコメント:

  1. 教育的な症例の紹介ありがとうございました。血圧が90と低めだった事に注意が向けば良かったのかも知れませんが、、、、後ではなんとでも言えますね。

    私もこういった患者さん経験があります。最近は脳卒中の人では全例胸部CT撮っています(過剰診療でしょうか、、、、)。脳出血でも解離があった人がいました。脳出血→高血圧→解離と言うシナリオだそうです。

    臨床は難しいですね!!

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  2. 確かに血圧は一つのポイントですよね!
    貴重な御意見有り難うございます。

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