2011年2月17日木曜日

ATPと喘息




また来た、安定したQRS幅の広い頻拍症。高齢男性。

粗動波らしきものが見えるような気もするし、変行伝導+心房粗動2:1伝導を強く疑いました。

まあ、でもVTも完全には否定できない。。。



みなさん、どうしましょう。





G2010頻拍アルゴリズムに沿って、ATPを考慮します。

心房粗動なら、ATP投与により、心室応答が低下し、鋸歯状波が明瞭に見えるようになります。
心室頻拍なら、多くの場合、ATP投与しても頻拍は不変です。


簡単に問診すると、気管支喘息の既往あり。吸入ステロイド等使用中。うーん。


しかし、大きな発作は30年出ていないとのことでATP使用可能と判断しました。



ATP10mg急速静注。心電図は全く変化なし。頑固だなあ。


ATP20mg急速静注。。。。。あれ、あれれ?? 


患者さんはみるみる息苦しそうな様相を呈し、咳き込み、喘鳴著明 !!

激しい喘息発作を生じてしまいました。がーん(汗)。


酸素投与し、気管支拡張薬吸入、ネオフィリン静注、ステロイド静注、、、、患者さんも冷や汗かいていましたが、こちらも冷や汗。。。

なんとか10数分後には喘息発作は軽減、落ち着きました。よかった。

肝心の頻拍発作は、、、

ATP投与直後、喘鳴著明となり激しくもだえて、記録していた心電図はノイズ著明で判別不能となってしまいましたが、モニター心電図でノイズの向こうに心室応答低下したことで明確になった鋸歯状波を、複数の人が確かに目撃。

やっぱり心房粗動でした。喘息治療もあり頻拍は絶好調に継続、、、すいません、、、。

その後心室応答コントロールをヘルベッサーで行いました。反応悪く、かなり頑固な頻拍でしたが、何とか病状改善に向かいました。





ACLS プロバイダーマニュアルには、「アデノシンは気管支攣縮を引き起こすおそれがあり、反応性気道疾患を有する患者への投与を避ける。」と記載されています。

喘息患者といっても程度は様々です。

個人的には、本当にアクティブな病勢の喘息患者や、重症な発作の既往のある患者でしたら投与はもちろん避けていましたが、そうでなければ投与してしまうことは少なくありませんでした。これまで喘息の著明な発作を誘発しまった経験はありませんでした。ちょっとぴゅーぴゅーいうくらいはありましたが。

今回もATP使用の必要性が、喘息誘発リスクを上回ると判断しての使用でしたが、判断がやや甘かったようです。
このような事態にも陥りうるとして学びが多い一件でした。喘息既往を有する患者さんにはやっぱりATP投与は慎重に考えましょう。


今回のケース、ATP使用しなければどうしていたか。

安定した幅の広い頻拍。心房粗動を最も疑うが、心室頻拍(VT)も完全には否定できない。VTの可能性も否定できないので、ジルチアゼム(ヘルベッサー)やベラパミル(ワソラン)はちょい使いづらい。β遮断薬も使いづらいし、そもそも喘息あるためダメです。
問診からは発症時期不明でしたので、リズムコントロールは塞栓症のリスクも否定できず避けたいところでした。G2010頻拍アルゴリズムのプロカインアミド、アミオダロンもちょい使いづらいし、電気的カルディオバージョンもやりづらい。
おまけに左室機能も中等度低下していました。

対処が難しい症例ですね。まさにExpert consultationです。

consultationされた循環器医は、12誘導心電図一枚から心房粗動と確信し、ジルチアゼムで心室応答コントロールが妥当なところでしょうか。経食道心エコーで左房血栓チェックして、カルディオバージョンもありでしょう。

2 件のコメント:

  1. 喘息注意します!!

    スーパードクターKに麻酔をかけたら喘息発作、、、という話がありましたね。それにも患者は忘れていたり、子供の時だけという事もあるみたいな事が書いてありました。

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  2. Kim先生有り難うございます。
    救急外来ですと、ついつい情報収集が甘くなりがちですね。気をつけないとですね。

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