2015年2月16日月曜日

ROSCについて考え中。

ROSCの話の続き。
ちょっと自分でも混乱しており、前回の記事も少し手直ししました。

前回記事での混乱の一つの原因は、

頚動脈触知のROSC判断への「精度」

という漠然とした指標を使うからだろうと思い、

頚動脈触知のROSC判断への「感度」と「特異度」

に分けて考えようと思いました。

すなわち、

ROSC判断の感度=ROSCしていることを、ROSCしたと判断する
ROSC判断の特異度=ROSCしていないことを、ROSCしていないと判断する

ということです。

それでは、「ROSCの定義」を調べてみますと、、、、、

多くの文献は、「頚動脈触知=ROSC」と定義しています笑。
これでは、感度、特異度、、、という話にはなりません笑。

中には、平均動脈圧50mmHgをROSCと定義している文献(Vukmir et al 2004)もあります。

本当は、「頚動脈触知」よりも優れたROSCの指標があるはずです。

頚動脈は触れないけれども、最低限脳灌流が保持されており、CPRを中止しても良い状態があるかもしれません。
頚動脈は触れているけれども、脳灌流が不足しており、CPRを継続したほうが良い状態があるかもしれません。

カテ室で、動脈圧ラインが挿入されている状態で、患者の血圧が低下してしまった。頚動脈触知は明確ではなく通常ならCPRを始めるところだが、動脈圧ラインで動脈圧波形が出ており、収縮期血圧50mmHgくらいあるのでCPR開始しない、、、このような場面は正直あり得ると思います。それが、許容されることか、許容できないことか、よくわかりません。収縮期血圧50mmHgなら良いのか?60mmHgなら良いのか?あるいは、40mmHgでも良いかも?

どなたか、良い情報あれば教えて下さい笑。

こんな表も作って見ました。数値に関しては、参考値ですので細かい相関に関しては無視してください。
ご意見あればお願いします。




2015年2月14日土曜日

ROSCについて議論の場があったので、健忘録。

めちゃくちゃ久しぶりです笑。

とある場で、CPR後の自己心拍再開(ROSC)に関しての議論がありました。一言でいうと、頚動脈触知=ROSCでよいのか?という話。
その際のこと一部を、健忘録としてここに残しておきます。



ROSCは、「あり」「なし」と表現するが、実は連続したスペクトラム

頸動脈触知できれば、最も虚血に脆弱である「脳」への灌流は最低限確保できたと考えます。脈拍触知したらROSCと判断し胸骨圧迫は中止します。しかし、頸動脈触知=全身の灌流が十分、というわけでは決してありません。「ROSC」にも幅があります。「脳」への灌流がギリギリの「ROSC」もあれば、脳を含めた全身臓器の灌流が十分な「ROSC」もあります。「ROSC」は、「あり」「なし」ではなく、連続したスペクトラムです。ROSCしても、十分でない場合は、脳を含めた全身の灌流をさらに至適レベルまで改善させ(ABCの是正)、心停止の再発予防と臓器保護を施す、これがROSC後の管理の主たる意義です。


ROSCの評価方法について


ROSCの判断を「簡便さ」と「至適循環評価の精度」という切り口で分類してみました。上図ご参照ください(あくまでも個人的なイメージですので、あまり細かく考えないでください)。
当然、簡便でかつ精度の高い循環評価の方法が理想です。でも、まだそんな理想的な方法はありません。
上記のようにROSCは連続したスペクトラムです。すなわち「脳灌流を最低限確保」レベルから「全身臓器の至適灌流」レベルまであります。
「頸動脈触知」は特別な器具も不要で、簡便で汎用性に富んだ手技であり、これが一般的な臨床現場でのROSC判断のスタンダードな方法ですが、「脳灌流はざっくり、とりあえずありそう」レベルの判断になります。「脳灌流を最低限確保」レベルへの感度は高くはないかもしれませんし、もちろん、「全身臓器の至適灌流」レベルの判断もできません。

CPR中に動脈圧ラインを挿入、モニターし、平均動脈圧65mmHgを確認できれば、「全身臓器の至適灌流」レベルのROSC判断が可能になります。しかし、CPR中に動脈圧ラインを挿入することは一般的にはかなりハードルが高く、現実的ではありません。
ETCO2も有用ですが、CPR中に気管挿管する必要があり、やはり手間を要します。

「簡便さと精度のバランスの良さ」で現在のROSC判断は頚動脈触知が主流となっているのでしょう。精度の低さを補うのが迅速かつ適切なROSC後の管理です。

「脈拍触知=ROSC」これこそパラダイムです。そうでない考え方もあり得るという、一種のパラダイムシフトを、一連の議論の中で体験した気分です。将来的には、簡便かつ精度の高い、頸動脈触知よりも優れた新しいROSCの判断方法が生み出されるかもしれません。rSO2もその1つかもしれません。「当たり前」を疑うことから、始まります。

※自分で書いていて、自分でも混乱してきました笑。で、2/16ちょっと手直ししました。