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2011年11月3日木曜日

VT ?




HR150程のQRS幅の狭い頻拍に、アデホス(ATP)5mg を急速投与したところ、装着していた心電図モニター画面全体がこんな波形となり、HR280くらいのデジタル表示になりました。

アデホスでVTになっちゃった???

と一瞬思ってしまうような現象でしたが、何の事はない、心房粗動の心室伝導が低下したことで、鋸歯状波が明瞭となっただけでした。心電図モニターが鋸をR波として認識し、誤カウントしたようでした。おどかすなよー(笑)。





結局は、すぐに元の心房粗動2:1に戻りましたが、何が起ころうとも対処できるように、アデホスを使用するときは除細動器をそばに置いておく事が基本です。

2011年4月30日土曜日

頻拍・頻脈

先の、「徐脈ですが、徐拍ではない」 の記事に "徐拍”は一般的でないと、書きましたが、"頻拍”はよく使いますね。
頻拍、頻脈、混同して使ってしまいますが、正確には異なるものなのでしょう。
例えば、脈なし心室頻拍 (pulseless VT)は、「頻脈ではない(脈なし)が、頻拍である」、、という解釈でよいのかな。
頻拍性心房細動の場合は、心拍数と脈拍数が大きく異なることが多いですね。

2011年2月17日木曜日

ATPと喘息




また来た、安定したQRS幅の広い頻拍症。高齢男性。

粗動波らしきものが見えるような気もするし、変行伝導+心房粗動2:1伝導を強く疑いました。

まあ、でもVTも完全には否定できない。。。



みなさん、どうしましょう。





G2010頻拍アルゴリズムに沿って、ATPを考慮します。

心房粗動なら、ATP投与により、心室応答が低下し、鋸歯状波が明瞭に見えるようになります。
心室頻拍なら、多くの場合、ATP投与しても頻拍は不変です。


簡単に問診すると、気管支喘息の既往あり。吸入ステロイド等使用中。うーん。


しかし、大きな発作は30年出ていないとのことでATP使用可能と判断しました。



ATP10mg急速静注。心電図は全く変化なし。頑固だなあ。


ATP20mg急速静注。。。。。あれ、あれれ?? 


患者さんはみるみる息苦しそうな様相を呈し、咳き込み、喘鳴著明 !!

激しい喘息発作を生じてしまいました。がーん(汗)。


酸素投与し、気管支拡張薬吸入、ネオフィリン静注、ステロイド静注、、、、患者さんも冷や汗かいていましたが、こちらも冷や汗。。。

なんとか10数分後には喘息発作は軽減、落ち着きました。よかった。

肝心の頻拍発作は、、、

ATP投与直後、喘鳴著明となり激しくもだえて、記録していた心電図はノイズ著明で判別不能となってしまいましたが、モニター心電図でノイズの向こうに心室応答低下したことで明確になった鋸歯状波を、複数の人が確かに目撃。

やっぱり心房粗動でした。喘息治療もあり頻拍は絶好調に継続、、、すいません、、、。

その後心室応答コントロールをヘルベッサーで行いました。反応悪く、かなり頑固な頻拍でしたが、何とか病状改善に向かいました。





ACLS プロバイダーマニュアルには、「アデノシンは気管支攣縮を引き起こすおそれがあり、反応性気道疾患を有する患者への投与を避ける。」と記載されています。

喘息患者といっても程度は様々です。

個人的には、本当にアクティブな病勢の喘息患者や、重症な発作の既往のある患者でしたら投与はもちろん避けていましたが、そうでなければ投与してしまうことは少なくありませんでした。これまで喘息の著明な発作を誘発しまった経験はありませんでした。ちょっとぴゅーぴゅーいうくらいはありましたが。

今回もATP使用の必要性が、喘息誘発リスクを上回ると判断しての使用でしたが、判断がやや甘かったようです。
このような事態にも陥りうるとして学びが多い一件でした。喘息既往を有する患者さんにはやっぱりATP投与は慎重に考えましょう。


今回のケース、ATP使用しなければどうしていたか。

安定した幅の広い頻拍。心房粗動を最も疑うが、心室頻拍(VT)も完全には否定できない。VTの可能性も否定できないので、ジルチアゼム(ヘルベッサー)やベラパミル(ワソラン)はちょい使いづらい。β遮断薬も使いづらいし、そもそも喘息あるためダメです。
問診からは発症時期不明でしたので、リズムコントロールは塞栓症のリスクも否定できず避けたいところでした。G2010頻拍アルゴリズムのプロカインアミド、アミオダロンもちょい使いづらいし、電気的カルディオバージョンもやりづらい。
おまけに左室機能も中等度低下していました。

対処が難しい症例ですね。まさにExpert consultationです。

consultationされた循環器医は、12誘導心電図一枚から心房粗動と確信し、ジルチアゼムで心室応答コントロールが妥当なところでしょうか。経食道心エコーで左房血栓チェックして、カルディオバージョンもありでしょう。

QRS幅の広い頻拍へのATP投与

先日の安定したQRS幅の広い頻拍へのATP投与。

V1誘導です。





T波の頂点が2峰性になっています。心室→心房への逆行性伝導によるP波と思われます。

これが、ATP投与すると、房室(室房)伝導が断たれ、逆行性Pが無くなり、洞性Pが出現し、房室解離を呈します。
2拍目、7拍目のQRS直後のふくらみが洞性P波と推測されます。
QRS波自体は不変です。






興味深いですねー。

波形提供してくれたE先生に感謝感謝。

2011年2月16日水曜日

ACLSコース翌日

週末ACLSコースを受講して頂いた受講生からメールあり。

ACLSコース受講翌日、救急外来にこんな患者さんが来ましたー! って。



キター!  The ACLS !(笑)。The G2010 ! (笑)   横向き波形すいません。

若年男性。単形性、QRS幅の広い頻拍。バイタル安定。

安定した頻拍。 ACLS providerの皆様、どうします?

以前の非発作時12誘導心電図と比し、軸は同じそうです。

変行伝導を伴ったPSVT?、右室流出路付近からのVT (RVOTVT)?、、、。難しいです。





いずれにしてもG2005なら、Expert consultation。

G2010的には、、、、、、、、、、Expert consultationも勿論良いですが、ATP考慮の選択肢があります。

その受講生、G2010に準じて、ATP投与したそうです。

10mg、20mg、20mg。 (AHA的には6mg,12mg,12mgだけど。)

頻拍波形は微動だにしなかったそうです。

ATP20mgを正しく投与して、変化なしなら、それは、VTである可能性がかなり高いです。

ACLS providerなら、次は抗不整脈薬を考慮、即ち、Procaineamideあるいは、Amiodaroneの選択肢はありますが、個人的には、同期下電気的カルディオバージョンが最も安全かと思います。勿論、expert consultationしてくださいね。



ここからは、大人の世界です(笑)。


expert consultation後の不整脈専門家の対処。

不整脈専門家でもPSVTか、VTか、確たる鑑別はつかなかったそうです。

PSVT、RVOTVT、いずれの可能性を考えて、ワソランIV。無効。(子供はまねしないように(笑))

ATP30mg、40mg IV。無効。(子供はまねしないように(笑))

次は、インデラルIV。(子供はまねしないように(笑)) これで止まったそうです。

でもその後再発し、アミオダロンIV。無効。

セデーションしたら止まったそうな。

VT stormの時のセデーションは極めて有効なことが多々あります。

結論は、RVOTVT。

早々にablationしたそうです。


ATP投与した時に、QRSは不変だったが、retrograde P (II誘導等で見えるQRSの後ろの上向きの波)が消失して、房室解離を呈したそうです。これもVTを示唆する有力な所見ですね。

いろいろ勉強になります。 専門家の対処、すごいです。

繰り返しになりますが、このような症例、非循環器医なら、ATP投与せずexpert consultationが最も安全でしょう。
ATP投与もありですが、無効なら、expert consultation、或いは、電気的カルディオバージョンをお勧め致します。

2010年4月20日火曜日

昨日のtachycardia

高齢女性。軽い動悸のみで症候は乏しいが、頻脈あり、とのことで他院から転送されてきた方。他のバイタルサインは問題ありませんが、御指摘のようにHR150bpm程の頻拍。






初期研修医と対応。研修医に質問してみました。
「安定したQRS幅の狭い頻拍ですね。どんな不整脈が鑑別に挙がりますか?」
「・・・・洞性頻脈!」
「他には?」
「・・・・・・・・・・・」

この初期研修医、昨年循環器科をローテートしているし、循環器科が行った不整脈の勉強会にも参加しているはずなのですが。。。。
narow QRS tachycardiaの鑑別、対応法は十分にお伝えしているつもりなのですが、なかなかご理解頂けていないようです。
優秀な研修医が集うとされている当病院。指導医としての伝え方が不十分なのでしょう、きっと(苦笑)。反省。

洞性頻脈の他の鑑別、上室性頻拍(PSVT)、心房粗動(2:1伝導)といった代表的鑑別を解説した後、ATP(アデホス)を急速静注。
鋸歯状波が明確となり、AFL2:1伝導と結論し、ヘルベッサーにて心室応答コントロールの方針に至りました。

教育とは難しいものです。
先日読んだ本の一説。
「一度しか読んだり聞いたりしたことのないものは、ほとんど覚えていられない。だから、「少数のものを何度も」学ぶべきであり、「多数のものを一度、二度」学んでも意味がない。」
情報過多が、知識の実践の障壁になっているとのことです(なぜ、ノウハウ本を実行できないのか ケン・ブランチャード+ポール・J・メイヤー+ディック・ルー著)。




医療の発展とともに”情報過多”が余儀なくされる現状。研修医も、勿論我々ベテラン(苦笑)とされる年代の医師も、なかなか苦労の連続です。

どの科に進んでも遭遇しうる循環器疾患の初期対応。
ベーシックなことを繰り返しお伝えし、身につけて頂く。これが自分の重要な業務の一つと思っています。
この分野においては、AHA ACLS の教育スタンスは、大変有用なmodalityと思っています。

2010年2月10日水曜日

高齢者のCSM

安定したQRS幅の狭い頻拍に対して施行しうる「頚動脈洞マッサージ(CSM)」。頚動脈の動脈硬化から脳塞栓症等の合併症が危惧されますので、G2000ACLSプロバイダーマニュアルには「高齢者,さらには中年後期の患者に対してCSMを行う専門家はほとんどいない。」と記載されていました。その記載が非常に印象的で、自分としては、高齢者には”ほぼ禁忌”という認識でいました。
ACLSリソーステキストP132には、「高齢患者にはとくに気をつけ、除外基準に十分注意する」とか、「CSMの合併症は数多く報告されているが、除外基準に十分注意を払い、手技を慎重に行えば、高齢患者でも副作用や合併症の発現率が低くなる」との記載あり、気をつければ高齢者でも施行可能とのニュアンスです。
ちなみに除外基準とは、頚動脈雑音、脳卒中や一過性脳虚血発作の既往、最近の心筋梗塞、致死的心室不整脈といった記載があります。

自分の認識と少々ずれがありました。高齢者でも、上記除外基準が該当しなければ施行してよいんですね。
でも現場では自分は絶対やらないです(笑)。

2010年1月20日水曜日

研修医当直御法度

最近色々と多忙で、ブログ更新がすっかり滞っています。そんな状況ですが、たまたま「研修医当直御法度」という本をちょっと目にする機会がありました。大変評判の良い本とのことです。たしかに、陥りそうなピットホールをわかりやすく解説しており、すっかり循環器バカになっている自分にとっては勉強になることばかりです。素晴らしい本です。専門外分野のみならず、恥ずかしながら自分の専門のはずの循環器分野でも勉強になることがあります(苦笑)。

頻脈性不整脈に対しワソランを使う場合、血圧が低下してしまうケースがありますが、「ワソラン投与前にカルシウム(カルチコール5-10ml)を前もって投与しておくと血圧低下を予防できる」だそうで、知りませんでした。勉強になります。

ただ、同じページに、「アデホスはアデノシン三リン酸で, アメリカのアデノシンニリン酸とは力価が異なる. アデホスを使用する場合は,1回目10mg,2回目20mgとして使用する(Am Heart J 119:316-323,1990))」なる記載があり、気になりました。
アメリカのアデノシンはアデノシンであり、アデノシン二リン酸ではないはずです。





アデホスの量については、こちらで話題になりました。

一文で二カ所正確性に欠けると思われる記載があり、この文章以外の部分も信憑性は?とちょっと不安な気持ちにもなったりして。
まあそんなことで本の価値が下がるわけではありません、たぶん。

2009年12月17日木曜日

恐怖のベプリコール

心房細動を有する高齢男性。心不全の既往あり。リズムコントロール目的にこれまでいくつかの抗不整脈薬が処方されたようですが、無効で、最近ベプリコールが処方開始されました。その2週間後、繰り返す失神を主訴に救急受診されました。著明なQT延長、Torsades de pointes(TdP)による失神でした。



ベプリコール(ベプリジル)は持続性心房細動に適応が認可されています。しかし副作用としてQT延長によるTdPの出現が少なくありません。心房細動への投与にて約1%の頻度で出現するとされますが、基礎心疾患や心不全を有する場合は5%にも及ぶとのデータもあります。しかも、不整脈専門家が慎重に用量調節や心電図チェックをしていても、そのくらい生じるということですから、非専門家が不用意に処方すると、恐らくもっと高率に出現するものと推測します。抗不整脈薬による心房細動のリズムコントロール(洞調律に戻すこと)は生命予後改善のエビデンスはありません。生命予後の改善が明らかでない治療で、致死的不整脈が出現するというのはやはり問題です。よほどの専門家以外はベプリコール処方を避けた方が無難なような気がします。

2009年12月10日木曜日

アミオダロンの除細動閾値への影響

すっかり忘れていました。11月21日の不安定頻拍性心房細動に関する話。不安定頻拍にcardioversion施行するも再発するためアミオダロンを投与したところ、かえってcaridoversionできなくなってしまった、という展開でした。
後日K大学の不整脈専門家K先生とそのケースのお話をする機会がありました。K先生の御経験では、不安定頻拍性心房細動を呈しているケースに対しアミオダロンを静注することで洞調律に復し、難を逃れることが少なくないとのこと。しかしながら、アミオダロンを投与することで除細動閾値を上げてしまうことはやはりあり得るので、電気的除細動閾値を下げる目的ならニフェカラントの方がよいでしょう、とおっしゃっていました。
11月21日のケースで、アミオダロンを投与しても洞調律に戻らず、かつ電気的除細動も無効であり、依然不安定の状態が続いているなら、ニフェカラントを使用し除細動閾値を下げた上で電気的除細動を施行する手もあったのでは?と貴重な意見を頂きました。プロフェッショナルの世界の話です。非不整脈専門医は真似しないほうが無難かも(笑)。非循環器医は真似してはいけません(笑)。
アミオダロンの除細動閾値上昇作用はICDで使用される比較的小エネルギーのレベルのことであり、体外式の除細動のレベルではあまり影響の無い程度のもの(8/23)、と聞いたこともあるのですが、本当のところはどうなんでしょう。
今回のケース以外にも、以前VTにアミオダロンを投与しかえってcardioversionできなくなったケースがありました。たった2回だけですが、臨床現場での経験はimpressiveです。経験的には、体外式の除細動でも影響がありそう、、、と思ってしまいます。

2009年11月21日土曜日

不安定頻拍性心房細動

5-6時間前からの嘔気、嘔吐、気分不良で救急搬送された中年男性。血圧60-80/とショック状態で、心拍数190bpm前後とかなりな頻拍。ぐったりとした感じで重症感あり。
心電図は基本はQRS幅の狭い頻拍ですが、時にQRS幅が広くなります。


RR間隔は不整であり、P派も判然とせず、頻拍性心房細動が最も疑われました。QRS幅が広くなることろは変行伝導でしょうか。いずれにしてもこの頻拍が状態を悪くしている可能性が高く、不安定頻拍として同期下電気的cardioversionを試みました。二相性100Jでショックしましたが、一瞬洞調律に復すものの直ぐに心房細動に戻ってしまいました。念のため、もう一度150Jで試みましたが同様に直ぐに再発してしまいました。再発予防としてアミオダロン150mg/10分で静注しました。
またこの間、著しい代謝性アシドーシス(pH7.0)が発覚し、メイロンも併用しました。アミオダロン投与後、再度150Jでショックしましたが、今度は全く洞調律に回復しなくなりました。200Jに上げてショックしましたが、やはり一瞬も洞調律に戻らず、無効でした。
ただ、アミオダロンの陰性変時作用のためか心拍数は160-170bpmほどに低下傾向、アシドーシス補正も効いたか、血圧はやや上昇傾向80-90/、自覚症状も軽減し、著しい不安定状態からは脱してきました。心臓超音波検査で観察すると、左室収縮能は悪くなく、器質的異常は明らかではありませんでした。左房拡大なく心房細動も慢性なものではない可能性が高いと推測されました。血管内脱水もあり、補液を増量しました。ジギタリスと少量のヘルベッサーを投与し心拍数コントロールを試みました。循環動態は徐々に軽減改善し、数時間後には洞調律に回復しました。

その後アルコール多因歴などが明らかとなり、アルコール性ケトアシドーシスが病態の主と疑われました。アシドーシスと著しい脱水状態から頻拍性心房細動を続発し、状態がさらに悪化した、、、というようなシナリオの可能性が高いと推測されています。頻拍性心房細動による純粋な不安定頻拍ではなかったということです。臨床はシンプルにはなかなか行きません。本当に難しいです(汗)。
結果的には決して間違った対処にはなっていませんが、学びの多い経験でした。

1.不整脈そのもののみならず全体的な病態を見る習慣を忘れてはいけません、とまたまた再認識致しました。
2.アルコール性ケトアシドーシスという病態を学びました
3.頻拍性不整脈の改善においてもH's and T's(脱水、アシドーシス)の補正が重要であることを認識する良い例でした
4,アミオダロンの除細動閾値上昇作用の可能性を再認識しました

各項目についてはまた後日触れようと思います。

2009年11月9日月曜日

QRS幅の広い頻拍

高齢女性が呼吸苦、食欲不振を主訴に救急受診。血圧110/70、PR150程と頻脈。SpO290%強。心電図をとったら急患室は騒然となったそうな(苦笑)。


うーん、確かに。QRS幅の広い頻拍。ドキッとします。”わからねばVTと考えよ”。
その通りです。非循環器医やコメディカルの方なら、循環器医に直ぐに相談しましょう。
相談しつつ情報収集。こんなとき役立つのは?そう、過去の心電図ですね。

今回も、有りましたー!1年前の心電図(喜)。


洞調律ですが、今回の頻拍時のものと極性は同じです、どの誘導もQRSの向きが同じです。頻拍時のRR間隔は不整ですから、これは元来の左脚ブロック+頻拍性心房細動の可能性が高そうです。非循環器医がここまで読む必要はないですが、QRS幅の広い頻拍であっても明らかなるRR間隔不整であればVTではない可能性が疑われるわけです。
このケース、ジゴキシン、ヘルベッサー静脈内投与により、こんなになりました。P波は確認できず、RR間隔は絶対不整、明らかに心房細動です。


結局、頻拍性心房細動により心不全に陥ったという病態だったようです。
心室応答コントロールで病態は改善傾向を示しました。

心不全症状を有する頻拍ですと、ACLS的には不安定頻拍と考えることになるでしょう。とすると、cardioversionが第一選択になります。非循環器医のみで対処せざるをえない状況においては、その方針も悪くないです。でも可能な限り循環器医にコンサルトすることがやっぱりより安全です。

循環器医はより専門的な判断で、上記の対処になります。しかしながら安易に非循環器医が真似をしないほうがいい、ということは常に研修医にはお伝えしています。

2009年10月11日日曜日

幅広いQRSの頻拍にアデホス

Up To Dateによると、幅広いQRSの頻拍にワソランやアデノシンを投与して頻拍が停止した場合は上室性頻拍を強く示唆する、と記載があります。しかし、これらの薬剤で停止する特殊な心室頻拍も存在しますので、完全な鑑別にはなりません。
そもそも非循環器医が幅広いQRSの頻拍に上記薬剤を投与すること自体極めて危険です。より重篤な事態に陥る可能性が十二分にありますので、確実に上室性であると確信が持てない場合は投与を避けるべきです。

循環器医としては、幅の広いQRS頻拍の鑑別目的でアデホスを投与することがあります。十分量のアデホスを、正しい投与法で投与しても、心電図上全く変化がない場合は心室頻拍であることを強く示唆します。

診断に迷った場合、自分としても稀にそのような使い方をすることはあります。しかし一度、投与直後心静止に移行してCPRをするはめになり、やっぱり安易にやるものではないと痛感したことがありました。数分間のCPRで何とか回復しましたが(苦笑)。

2009年10月9日金曜日

リドカインで停止するQRS幅の広い頻拍

幅の広いQRS頻拍を目の当たりにした時、不安定な状態であれば当然同期下電気的cardioversionです。安定している場合、AHA のアルゴリズムではアミオダロンが第一の選択肢となりますが、現実的には救急カートに入っていなかったり、諸々の事情でリドカインが使用されることも少なくありません。

この幅の広いQRSの頻拍は恐らくは心室性だろうが確信が持てない、、、。そこでリドカインを投与してみて、幸い洞調律に回復したら、”やはり心室性だったね!”と考えることが時々ありました。
改めてUp To Dateを読んでみると、”幅の広いQRS頻拍にリドカインを投与し頻拍が停止した場合は、心室性頻拍であることを示唆するが、確定できるわけではない。稀ではあるが上室性頻拍、特にAVRT(房室回帰性頻拍)はリドカインで停止することがある”と記載されていました。
ふーん、そうなんだ。初めて知りました。

2009年10月8日木曜日

過去の心電図

循環器医の方は読まなくてよい記事です(笑)。
動悸、胸部不快を主訴に救急外来に独歩来院した中年男性。血圧120/80程、心拍数200bpm。
12誘導心電図はRR間隔整のQRS幅の広い頻拍。ちょっとドキッとしますよね。
ACLSコースでは「上室性であると確信が持てなければ、心室頻拍として対処しましょう。」と指導しています。これは大変大事なことです。
一般的に、幅の広いQRS頻拍が上室性か心室性かの判断は循環器医にとっても難しいこともありますし、非専門医やコメディカルの方にとっては尚更です。難しいアルゴリズムを使った鑑別法もありますが、非専門医が覚える必要はありません。
そんな時、まず是非とも欲しい情報は以前の心電図です。この方の場合、、、ありました、過去の心電図!ヨカッタ(笑)。

洞調律ですが、確かに以前から右脚ブロックです。今回の心電図とQRSの形や極性は変わっていません。これで、今回の心電図は上室性頻拍+右脚ブロックと結論できます。PSVTか心房粗動の可能性が高そうです。
安心して”安定したQRS幅の狭い頻拍のアルゴリズム”に準じて対処できます。そこで、、バルサルバ手技を行って頂きました。が、びくともしません。アデホス10mgを急速静注しました。HR180bpmくらいまで低下しましたが、止まらず、また200bpm程に戻ってしまいました。20mgの急速静注をしたところ、洞調律に戻りました。
もとの洞調律波形と同じ波形です。めでたし、めでたし。今回の頻拍はPSVT+右脚ブロックだったということで、アブレーションをお勧めして、お帰り頂きました。
救急外来の初期研修医は多忙をきわめ、他の患者にかかりっきりで、この症例にはたずさわれませんでした。初期研修医にとってはそれなりに勉強になるケースだったので残念でした。
ひとりぽっちで、対処して少し寂しかったです(笑)。

2009年9月7日月曜日

まあ、いろいろってことで。

Cardioversionにおける抗不整脈薬の役割で、多くの抗不整脈薬はcardioversionの閾値を上げると記載しました。Flecainide(タンボコール)も上げると書いたのですが、この文献(J Am Coll Cardiol 1999;33:333-41.)では、internal cardioversionではありますが、Flecainide(タンボコール)静注は心房細動のcardioversionの閾値を下げたと書いてあります。
Sotalol静注も閾値を下げるそうです(Pacing Clin Electrophysiol 1997;20:2442-52.)。
まあ、いろいろですね。

2009年9月5日土曜日

上室性頻拍の対処法

山下武志先生「不整脈で困ったら」(メディカルサイエンス社)もなかなか興味深い本で、非循環器医の方には特にお勧めです。


この本の上室性頻拍(PSVT)を停止させる方法についてちょっと興味深い記載がありました。
「昔の教科書を紐解くと、眼球圧迫とか頚動脈マッサージとか恐ろしげな方法が書いてありますが、いまやそんな方法はとりません。」と記載あり、山下先生の今現在の方法としては、「インデラル20mgとワソラン80mgを一度に頓服として服用してもらい、外来待合室で30分程待機してもらいます。(中略)精神的に落ち着いている患者ならかなりの確率で自然停止します。停止しなかった場合には、洗面器に水を入れてその中に息ごらえをしながら顔をつけてもらうと、更に停止しやすくなります。」そして、アデホスなどの静注による対処は”最後の砦”と位置づけています。

AHAの推奨とはずいぶん異なりますね。

眼球圧迫が恐ろしげな方法であることは良いとして、頚動脈洞マッサージも今や恐ろしげな方法みたいです。確かに、動脈硬化素因のある患者に対しては”恐ろしげ”な方法であることは間違いありません。山下先生にとっての優先すべき迷走神経刺激手技は息こらえと顔浸のようです。安全性が高いので、基本的には僕も賛成です。

PSVTに対する単回経口療法(Pill in the Pocket)として、ヘルベッサー120mg+インデラル80mgという組み合わせが、ACC/AHA/ESCの上室性頻拍のガイドラインに引用されていましたが、海外での用量であり、日本人に使用するには多すぎると思われ、試したことはありませんでした。上記山下先生推奨の用量は大変参考になります。機会があれば試してみようと思います。

AHAが全てではありませんし、いろいろなオプションを持っていることは良いことだと思います。

ただ、上室性頻拍に対する自分としての対処法は、AHA推奨通り、迷走神経刺激→アデホスが原則です( 笑)。

2009年9月3日木曜日

adenosineの使用経験

上室性頻拍に対するadensine使用に関する文献(Am J Emerg Med. 2008;26:879-82.)。abstractのみしか読んでません(汗)。
救急外来において、5年間で約500人の上室性頻拍患者にadenosineをボーラス静注を行っています。頻拍の平均心拍数は162bpm。adenosine6mgの投与で73%の患者が反応し、15%の患者が12mgの追加投与に反応しました。11%は更に12mgの追加投与で反応しました。11%は反応がなかったとのこと(あれ?合わないですね??)。
軽度の副作用は高率に生じ、胸部不快83%、顔面紅潮39%、死にそうな感覚7%(苦笑)。1例のみ重篤な副作用が生じたとのこと。12mg投与により房室伝導が1:1になり、心房粗動(未診断だった)の心室レートが著明に促進されたとのこと。

予期せぬ重篤な副作用は1/500ってところですかね。

2009年9月2日水曜日

上室性頻拍と突然死

古い文献(JACC1991;18:1711-9)ですが、突然死から救命された290人のうち、13人(4.5%)が、上室性頻拍から心室細動に陥ったのを目撃された、或いはそれを強く疑われた例だったそうです。

13人のうち5人が副伝導路と心房細動を有しており、1人が副伝導路とAVRT(房室回帰性頻拍)を有しており、各々心室細動に至ったとのこと。
3人はAVNRT(房室結節回帰性頻拍)、4人は心房細動で、各々発作時に房室伝導が促進され心室細動に至った。

AHA ACLSメガコードケースBの規則的で狭いQRS幅の安定した頻拍患者がその後心室細動に移行するというシナリオ。以前も病態の推測を書きましたが、上記文献からすると、確率的には4/290=1.4%(心房細動を除いた)とやっぱり稀なケースですね。

2009年8月26日水曜日

Cardioversionにおける抗不整脈薬の役割

8/23の記事と関連したことです。
amiodaroneはじめ、抗不整脈薬は除細動もしくはcardioversionの閾値へ影響があります。Up To Dateを見てみると、

Lidocaine(リドカイン) 上昇もしくは不変
Quinidine(キニジン)     上昇
Phenytoin(アレビアチン)上昇
Amiodarone (アンカロン)  上昇
Flecainide(タンボコール)上昇
Bretylium                              低下

だそうです。多くの薬が閾値を上げるんですね。ちなみにBretyliumは日本にはない薬です。
ACC/AHA/ACCの心房細動のガイドラインを見てみると、Pretreatment with amiodarone, flecainide, ibutilide, propafenone, or sotalol, which may also prevent recurrent AF.(ClassIIa)だそうで、やはり上に出てきた薬剤は再発予防の薬効が主のようです。 
 Among patients with persistent AF, beta blockers, disopyramide, diltiazem, dofetilide, procainamide, or verapamil; the ability of these drugs to increase the success of DC cardioversion or to prevent early AF recurrence is uncertain.(ClassIIb)β遮断薬、Disopyramide(リスモダン)、Diltiazem(ヘルベッサー)、Procainamide(アミサリン)、Verapamil(ワソラン)などはエビデンスは乏しいが、cardioversionの成功率を上げたり(閾値を下げる?)、早期再発を予防するかもしれない、、、とのこと。
なんか、VFとAFが混然としてわけわかりませんが、僕もよく分かりません(笑)。
循環器医として、cardioversionもしくは除細動に抗不整脈薬を併用することは少なくないですが、経験的にテキトーに使っていたことに反省します。その役割は主に再発予防であることを再認識致しました。