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2011年9月14日水曜日

院外心肺停止に対するアドレナリンの効果

Effect of adrenaline on survival in out-of-hospital cardiac arrest: A randomised double-blind placebo-controlled trial.
(Resuscitation. 2011 Sep;82(9):1138-43. Epub 2011 Jul 2.)


背景:心肺蘇生においてアドレナリンは長年標準的に使用されているが、生存率改善を示した臨床試験はほとんどない。この研究の目的は、院外心肺停止患者に対し、アドレナリン投与することで生存退院率が向上するか否かを調べることである。
方法:院外心肺停止患者におけるアドレナリンの二重盲検無作為プラセボ対照試験。ALSのガイドラインに従い、傷病者にアドレナリン1mgまたはプラセボ(生理食塩水)を無作為に投与しCPRを行った。一次アウトカムは生存退院、二次アウトカムは病院前自己心拍再開(ROSC)と良好な神経学的予後(CPC1-2)。
結果:研究期間中の4103人の心肺停止の内、601人を無作為に2群にわけた。不十分なデータ例をのぞいた534人が解析対照。プラセボ群262 人、アドレナリン群272人。年齢、性別、バイスタンダーCPRの有無など、両群の患者背景はよく合致していた。ROSCはプラセボ群22人(8.4%)、アドレナリン群64人(23.5%) (OR=3.4;95% CI2.0-5.6)。生存退院はプラセボ群5人(1.9%)、アドレナリン群11人(4.0%) (OR=2.2; 95% CI0.7-6.3)。うち、アドレナリン群2人以外全員はCPCスコア1-2と良好であった。
結論:心肺停止患者に対するアドレナリン投与は、自己心拍再開率を改善させたが、生存退院率改善については統計学的有意差はなかった。



アドレナリンには確たるエビデンスはないものの、心肺蘇生においては標準的薬剤とされており、こんなRCT、よくぞ倫理的に許容されたものです。しかしながら、どうやら倫理的問題を提起する意見もあったようで、予定通りに研究を進めることができず、nも予定よりだいぶ減ってしまったようです。RCTとは言え、限界も色々とあるようですが、それでも、もう少しnが多ければ生存退院率に有意差が出た可能性があり、惜しい気がします。もう二度とこんな研究はできないことでしょう。

2011年5月27日金曜日

気分不良の心電図

さて、この心電図、なんでしょう?
中年男性、気分不良を訴えています。







完全房室ブロック、心室補充調律はHR20か、それ以下。この心電図の波はP波です。QRS波は全く出ていません。こんな12誘導心電図はなかなか珍しいですよね。心静止(asystole)の定義は混沌としていますが、AHA G2010ガイドライン(S735)には、「asystole(ventricular asystoleと表現したほうがベター)は心房の電気的活動の有無に関わらず、心室の電気的活動が同定できないもの」と記載されています。この記載からすると、これは心静止の12誘導心電図ということになりますね。。。。
しかし、一応意識はありますので、すべきことは、超症候性超徐脈の処置です。アトロピンは無効でした。同時にTCP作動、すぐさま経静脈ペーシング挿入しました。G2010でちょっとランクアップしたカテコールアミンは使わなかったなー。

2011年3月1日火曜日

アトロピン

G2010ではnon shockable rhythm(PEA/asystole)へのアトロピンのルーチン投与は推奨されなくなりました。
CJにそれに関連する論文が掲載されました。やはりアトロピンの有効性は否定的な結果でした。

Circ J 2011; 75: 580 –588

英語が苦手な方は以下を参考にして下さい。


背景
G2005ではnon shockable rhythm(PEA/asystole)にアトロピンの投与が推奨されていたが、臨床的なデータは十分ではない。

方法と結果
SOS-KANTO研究のnon shockable rhythmを呈した成人患者7448人において、アトロピンの効果を検証した。主要評価項目は心停止30日後の神経学的予後良好。Asystole6419人において、アドレナリン+アトロピン投与群(n=1378)は、アドレナリン単剤投与群(n=5048)に比し有意に自己心拍再開率が高かった(調整オッズ比1.6(95%CI 1.4-1.7,P<0.0001)。しかし、30日後の神経学的予後良好においては2群間で有意差はなかった(調整オッズ比0.6 (95%CI 0.2-1.7,P=0.37)。PEA1029人において、自己心拍再開、30日後の神経学的予後良好については共に2群間で有意差はなく、アドレナリン+アトロピン投与群は、アドレナリン単剤投与群有意に30日後の生存率が有意に低かった(調整オッズ比0.4(95%CI 0.2-0.9, P=0.016)。

結論
non shockable rhythmによる院外心停止患者へのアトロピン投与は、長期神経学的予後改善には寄与しない。アトロピンはPEAを呈する成人には有用でない。

2010年12月26日日曜日

G2010 Adult Cardiac Arrestの疑問点

G2010 Instructor Updateの際、出た意見。Adult Cardiac ArrestのAlgorithmについて。





Box.10の次のrhythm checkでorganized rhythmが出た場合、どこに進めば良いのでしょう。このflow chartを純粋に辿れば、pulse checkせず?、Box.11に進んで2分間CPRを追加することになってしまいます。ほんとかいな??? もっともな意見です。

普通に考えれば、Box.10終了後organized rhythmが出たら、pulse checkをして、脈拍触知するようなら、Box.12に進むわけで、その矢印も本来必要ですね。もうguideline、Handbookは出版されていますから、直しようがないですね(笑)。

2010年10月31日日曜日

復活

先日の心筋炎の若年女性、無事に急性期を乗り越えてIABP、PCPS離脱、人工呼吸器も離脱しました。本当によかったです。まだICUですが、食事も食べ始めました。本人も頑張りましたが、担当の研修医たちも頑張りました。

2010年10月22日金曜日

G2010BLS 実践

若年女性。昨日心筋炎の疑いで入院。低心機能で、ぎりぎりの呼吸循環動態、CCUで管理。PCPSも念頭に、FA,FVは確保されています。
本日早朝急に意識レベル低下したとのことで、当直の自分がコールされました。来室すると、看護師3人ほどでアタフタしており、HR120bpm程、洞性頻拍、血圧70/ほど、末梢冷たくSpO2拾えず、「くるしい、息が出来ない、、」の訴えあるものの意識は朦朧。顔面蒼白、末梢冷感あり、重篤そうな様相です。PCPSが必要と思われ更に応援要請、40%ベンチュリマスクでしたので、リザーバーマスク15Lとし、ドーパミンの用量を上げ、、としていたら、意識レベルが低下、反応が鈍くなりました。頚動脈は触知
できましたので、頭部後屈顎先挙上させ、NPAを挿入、人的余裕が得られたら、気管挿管もしたほうが良さそう、、なんて言っていたら、、反応が鈍くなり、呼吸が微弱となり、頚動脈触知試みても、10秒以内には触知
できず、すぐに胸骨圧迫を始めました。心電図モニターは依然120bm 程の洞性頻拍でした。頻拍性のPEAです。正しい手の位置を意識しつつ、5cm以上しっかり押して、full recoil、100回/分以上のペース、も心がけました。アドレナリンIVの指示を出し、準備が出来たところで、(アルゴリズム通りではないですが)脈拍触知してみたら、明らかに触れました。呼びかけにも開眼するようになりました。CPRは中止。胸骨圧迫は1-2分したでしょうか。アドレナリンは保留にしました。血がスでアシドーシスあり、メイロン投与、その後主治医、担当医などが駆けつけてくれて、気管挿管し、カテ室に移動、PCPS,IABPを挿入しました。
恐らくは原病による心機能の増悪、代謝性アシドーシスなどが悪さをしたものと推測されました。レトロスペクティブに見れば、後手に回ってしまったのが反省点でしょうか。でもリカバリーショットは打てています。今後の回復を願うばかりです。

そんな感じで、G2010を少々意識した対応をしてみました。
反応を確認しつつ、正常の呼吸か否か見てみる、(救急コール、AEDの要請)、脈拍触知10秒以内、無ければ胸骨圧迫、、、
自分にとっては、大変自然に思えました。G2005のBLSの流れよりも、practicalです。今まで現場でやっていた感じに近いです。
一緒に処置をした看護師達にも解説しながらやりました。”正常ではない呼吸”の良い例でした。
また、かえって心電図などモニタリングされていると、ついついそれに気を取られて、心肺停止に気づくのが遅れることが少なく有りません。HR120洞調律でも、頚動脈が触れなければCPRを開始する必要があること、などお伝えする良い機会になりました。若い看護婦さんたちにとってはimpressiveな体験だったと思います。成長を願います。

この方は、BLSのみで自己心拍再開しましたが、この日この後、高齢男性の院内心肺停止が発生、今度はACLSまで行きました。早々に記事にしたいと思います。

2010年1月15日金曜日

STEMI?

寒い日が続きます。そんな中、なかなか興味深い心電図を目にしました。
高齢者。意識障害で救急搬送。搬送中に心室細動になりました。電気的除細動等で対処、VFは繰り返しましたが、その後PEAを経て自己心拍再開しました。そして記録した12誘導心電図。




STEMI→VF??カテか!?なんて話になりましたが、情報を集めてみると、なんと体温23度。
ST上昇して見えますが、これは貫壁性虚血ではなく、J wave(Osborne wave)なのでしょうか。
J wave(Osborne wave)とは、低体温の時等に見られるQRS終末とST部分の早期の間あたりに見られる波のことを言います。
心エコーでも明らかな局所的左室壁運動異常は認めませんでした。

復温後の心電図です。



ST付近の変化も軽減致しました。
都会では重症低体温の頻度は恐らくあまり多くはないと思いますので、勉強になりました。

2010年1月9日土曜日

アドレナリン








今さらですが、まあ、こんな感じで、当院採用のテルモのエピネフリンも”アドレナリン"に名称変更になりました。
アドレナリンが正式名称になることに異論はありませんが、現場で「エピアト!」(当院救命センターではPEA/Asystoleに対しエピネフリンとアトロピンを同時に投与するアルゴリズムです)という言葉が良く聞かれましたが、今後は「アドアト!」になるのかな?
アドレナリンとアトロピン、少し似た名前でもあり、間違いが起こり易くなるかもしれません。

2009年11月29日日曜日

心タンポナーデの心電図モニター

AHA ACLSプロバイダーマニュアルには、PEAの原因検索における役立つ情報として”心電図モニター上の手がかり”の項目があります。心タンポナーデは心電図モニター上は「狭いQRS幅の頻拍」と記載されています。
確かに、慢性的に貯留した心嚢液によりタンポナーデに陥った場合は頻拍になるものと推測されます。しかしながら突如貯留した心嚢液によりタンポナーデに陥った場合は、(恐らくは迷走神経反射亢進が生じ)いきなり徐脈になることが多いのではないでしょうか。最近たびたび登場した急性大動脈解離Stanford A型により心タンポナーデに陥ったケースにおいても頻脈になった経験は全くありません。突然徐脈になります。

2009年11月12日木曜日

また、、、

その後、また一例ありました。
重症心筋梗塞で入院中の患者。PCIから1週間程経ち、病状は落ち着いていたのですが突如ショックとなりました。原因検索や、中心静脈路確保など対処中に心肺停止、PEAになりました。
結論としては、CTにて後腹膜腔に巨大血腫を認め、この出血によるhypovolemiaでした。カテとは直接の関連はありません。抗血小板薬は複数投与されていました。
血栓症と、出血性合併症は本当に紙一重で、特に高齢者はなかなか難しいです。



2009年11月10日火曜日

恐怖の経鼻胃管挿入

高齢女性に経鼻胃管を挿入中、突如心肺停止、PEAに至った事例がありました。
直ぐにCPRを開始、途中VFにも移行し、除細動や、アドレナリンも要しました。
自己心拍再開し,一命を取り留めました。
それなりに重症疾患を有する患者でしたが、心肺停止に直結する病態が特に見当たりませんでした。
経鼻胃管挿入は迷走神経反射を亢進しうる手技です。強い反射を促し、心肺停止に至ってしまったのでしょうか。なかなか経験しないケースと思います。当院では経鼻胃管はたいてい初期研修医が行う手技ですが、このようなケースもあり得るという認識が必要かもしれません。

2009年10月15日木曜日

心タンポナーデ

最近心タンポナーデによるPEAに2度遭遇しました。急速に心タンポナーデに陥る症例は心嚢液の絶対量は決して多くなく、心嚢穿刺もなかなか難しい傾向があります。心肺停止になり胸骨圧迫をしていたら尚更です。刺す時はどうしても胸骨圧迫を中断せざるをえませんし、とはいえその中断は最小限にしたいものです。2症例ともに結構苦労しました。
穿刺しなければ心肺停止からの脱却も難しいわけですから、割り切って穿刺できるまで胸骨圧迫を中断する方法が結局はいいのかな、なんて思います。一発で入れば10秒くらいで済むかもしれませんが、難渋する場合は分単位でかかる場合もあるでしょう。1分くらいの胸骨圧迫中断ならまだ許容範囲内かな?なんて、いろいろ考えますが、自分なりの結論は出ていません。
外科的に切開する手もあるでしょうが、急性大動脈解離なんかの場合は、大きくあけたら出血が止まらなくなり収集つかなくなる可能性もあるでしょう。内科医としては何とか穿刺で対処したいところです。
皆さんどうしているんでしょうか。PEA時の心嚢穿刺の良いtipsをご存知の方、教えて下さい。

2009年10月7日水曜日

出血

ACLSコースにおいて、Asystole/PEAで特に重要なH' & T'。
その中でも頻度が比較的多いHypovolemia。代表的な病態が出血です。
自分は循環器医ですから、出血性の疾患に関わる機会はあまり多くありません。
内因性疾患による出血では、その過程で何らかの自覚、他覚所見が生じるでしょうから、対策を講じることができるので心肺停止にまで至ることは少ないのでは?と密かに思っていました。ただし、大動脈瘤破裂などの大血管のトラブルは別ですし、勿論外傷も別です。

先日の急変は、十二指腸潰瘍からの出血でした。派手な下血もなく、吐血もなく、著明な自覚症状もないままに、心肺停止に陥ってしまうことに驚き、認識を新たにしました。

少し前には、入院中の方が、特発性の後腹膜出血による出血性ショックから心肺停止(PEA)にまで至ったケースがありました。この方も心肺停止になる少し前までは著明な訴えはありませんでした。

抗血小板薬・抗凝固薬が大好きな循環器医は注意が必要です。。。。




2009年10月6日火曜日

元気の源

最近急変が多いです。

早朝6時前。心筋梗塞で大部屋入院中であった高齢者が心肺停止になりました。病棟の心電図モニターがHR20bpm程の徐脈であることに気づいた看護師がベッドサイドに駆けつけると、意識なく、呼吸なく、脈拍触知 せず、心肺停止でした。すぐにナースコールで応援を要請、AEDを持って他の看護師が駆けつけました。AED装着したらショックの適応なし、CPRを継続しました。数分のうちに研修医、当直だった自分も到着。そのときはAsystoleでした。Critical conceptを意識したHigh Quality CPR、エピネフリン、アトロピンといった薬物投与、H' & T'による原因検索、、、。診療情報、状況、採血、エコー等の所見より、消化管出血による出血性ショックからPEA、Asystoleに陥った可能性が高いと思われ、輸血オーダーしつつ、輸液急速投与を施し血管内容量を是正することで自己心拍再開し、状態は落ち着いてきました。正に、ACLSコースのPEA/Assystoleのシナリオそのものでした。
勿論それなりにバタバタしましたが、チームとしてまずまず機能していたのではないかと思います。

医師は自分と初期研修医1人。看護師は入れ替わり立ち替わりでしたが4人。計6人が関わりました。自分はAHA ACLSインストラクターで、研修医と看護師1人がAHA ACLSプロバイダーでした。その看護師はAHA BLSインストラクターでもあります。残り3人の看護師は全てAHA BLSプロバイダーでした。うち、1人は最近更新コースを受講した方でした。
BLSインストラクターの胸骨圧迫は見事でした。適切な建設的介入も随所に見られ、大変心強かったです。他のプロバイダーたちの胸骨圧迫も勿論high qualityで、良きチームメンバーとして動いて頂きました。

AHAコースが全てではありませんが、たまたまAHAコースのプロバイダーが集まり、各々が良き働きを見せ,適切な蘇生処置が出来たことに、ちょっと感銘を受けました。
AHAコースの活動を続けていく元気の源になる出来事でした。

2009年6月6日土曜日

Flat Line Protocol


傷病者にモニターを装着したらフラットライン。このフラットラインが本当にasystoleなのか否か確認する”フラットラインプロトコール”はG2000時代には良く使われていましたが、G2005ACLSプロバイダーマニュアルからはこの言葉は消えて、コースでもあまり聞くことがなくなりました。
しかしG2005ACLSプロバイダーマニュアルには"You should comfirm that the flat line on the monitor is indeed "true asystole" by validating that the flat line is,,,,,,"と、フラットラインの時は、他のリズムでないか、或は技術的なミスの結果ではないか、確認すべし、と書かれています。技術的な問題としてリード類の接続ミス、電源入れ忘れ、感度が低すぎる、が挙げられています。
ACLS Resource Textには更に詳しく記載されており、”フラットラインプロトコール”という言葉もしっかりと登場しています。その具体的方法についての記載(下記)はG2000ACLSプロバイダーマニュアルとほぼ同じ内容です。
僕の中ではフラットラインプロトコールは死語だったのですが、やはり忘れてはいけないもののようです。絶え間ない胸骨圧迫などHigh Quality CPRがおろそかにならないように、プロバイダーマニュアルにおいては遠慮がちな記載になったものと推測します。High Quality CPRがしっかりと確実になされている方は、それを継続しながらフラットラインプロトコールも必要に応じ実践することになるのでしょう。

・除細動器とモニタの双方の電源を確認。(電源が別になっている機種もある)
・3誘導モニタを使用している場合、全ての接続を確認
 除細動器→モニターケーブル
 モニターケーブル→モニターリード
 モニターリード→患者の胸壁
・クイックルックパドルを使用している場合、次の接続を確認。
 除細動器→パドルケーブル
 パドルケーブル→パドル
 パドル→伝導パッドやジェル
 伝導パッドやジェル→胸壁
・ゲインや感度の確認
・誘導選択の調節
・3点誘導なら全ての誘導で素早く確認(VFのベクトル説)
・パドル誘導なら、VFのベクトルを確認するために2つのパドルを90度ローテーション移動
・パッド使用なら、張り替えせずに、3点誘導リードを使用する

2009年5月29日金曜日

突然のAsystole

Asystoleは多くの場合はVFやPEAから移行した終末像です。しかしながら、稀に自己循環を有する状態から突然Asystoleに至ることがあると、種々の本には記載されています。過度な迷走神経刺激が原因と考えられています。僕もPCI中に2例ほど経験したことがあります。一度は、long tipのガイドカテーテルを左冠動脈主幹部にエンゲージした瞬間。一度は、やはり左冠動脈主幹部近傍でガイドワイヤー操作をしていた時。
いずれも全く安定している待期カテであり、無症状の洞調律でしたが突如asystoleになりました。12誘導が全てフラットになりました。リードがはずれたかと思いました。患者は呼びかけに反応せず、痙攣し、白目をむきました。いずれも左冠動脈主幹部に解離などの損傷を起こしたかと思い大変焦りましたが、胸骨圧迫を始め、10数秒位したところで自己心拍が再開しました。エピネフリンは投与せずに回復しました。その後全く元通りに回復し、造影上も左冠動脈主幹部に損傷はありませんでした。何事もなかったかのようにPCIは行われました。
左冠動脈主幹部付近には、強い迷走神経刺激を及ぼすツボでもあるのかな(笑)と思いました。

2009年5月28日木曜日

AsystoleとPEA


重要な事項では全くありませんが、ついでに、AsystoleとPEAの境界も少し整理してみましょう。
G2005ACLSプロバイダーマニュアルP162には”心室活動が認められないか、認められても6回/分以下である”がAsystoleとされています。G2000ACLSプロバイダーマニュアルP119にも、”毎分6回未満の”瀕死の(agonal)”或いは”心室固有の”電気的波形群”はAsystoleとしています。また、この記載の欄外には”院外心停止リズムの疫学の研究者は、毎分11回以上のQRS波をPEAとし、それより少ない場合を”心静止”と定義している。”との注釈もあります。6回とか、11回といった数字の根拠は明らかではありません。
先にも示したように、The Textbook of Emergency Cardiovascular Care and CPR P311には、”Asystole is difined as the absence of any electrical cardiac activity(either atrial or ventricular) for seconds to minutes or electrical activity that is so profoundly slow(perhaps seen as only a single QRS complex) that for all practical purposes it is a" straight line"rhythm."とあり、示した心電図内でQRS波形が1個といったような大変遅いリズムはAsystoleとしうると受け取れます。

心肺停止患者の心電図波形を見たときに、視野範囲内にQRSが1個のみとか、毎分6回以下の極めて遅い電気的活動の場合はAsystoleとしてよさそうです。こんなこと書いてみたけど、だからどうしたって感じですね(笑)。

Asystoleの定義

Asystoleの定義としては、G2005ACLSプロバイダーマニュアルP162には”心室活動が認められないが、認められても6回/分以下である、いわゆる「P波心静止」では心房の刺激(P波)のみが存在する、P波が認められることはあるが、定義上R波があってはならない”と記載せされています。G2000プロバイダーマニュアルP119にも以下のような記載があります。”体表面電極からはなんら心臓の電気活動がみられないこと”、としながらも、いくつかのバリエーションを挙げております。”(1)P波のある心静止。心房の活動は残存しているが、心室が反応しない、(2)毎分6回未満の”瀕死の(agonal)”或いは”心室固有の”電気的波形群。”
総合して解釈すると、心室の電気的活動(QRS)が殆ど見られない波形がasystoleと言えそうです。今まで自分としてはこのように理解してきました。
ACLS Resource Textには”The word asystole means the total absence of ventricular contractile activity."とあり、ほぼ上の解釈と同様でしょうか。Up To Dateには、"Asystole is defined as a complete absence of demonstrable electrical and mechanical cardiac activity."とあります。これだと、心室のみならず心房を含めたあらゆる電気的活動が見られない波形と解釈できそうです。5月12日のブログのような、P波のみの電気活動は、asystoleの範疇には入らないことになります。
The Textbook of Emergency Cardiovascular Care and CPR P311には、”Asystole is difined as the absence of any electrical cardiac activity(either atrial or ventricular) for seconds to minutes or electrical activity that si so profoundly slow(perhaps seen as only a single QRS complex) that for all practical purposes it is a" straight line"rhythm."とあり、心房、心室双方の電気活動の消失と明記されています。更に、”It should be distinguished from bradycardia,complete AV block with ventricular asystole,and PEA."とあり、心室補充収縮の消失したP波のみの波形とasystoleは区別すべきと書かれています。
言葉の問題なので、あまり重要ではないのでしょうが、"asystole"はやや混然としてる用語なのかもしれません。ACLS Resource Textには、ventricular asystole、asystole、slow PEA、fine ventricular fibrillation、coarse asystole、Vf with an isoelectric vector that masquerades as asystoleなど類似した語群が羅列されており、これらの区別は臨床的には重要ではないと記載されています。