2011年4月30日土曜日

原子炉時限爆弾



原子炉時限爆弾 広瀬隆 ダイヤモンド社

地震大国の日本の地に、安全性が全く保証されていない原発が乱立している危険性を説いている本です。東日本大震災のおよそ半年前の2010年8月に出版されています。

正に、今回の福島原発事故が、この本の危惧する事態そのものです。この本を読むと、今回の福島原発事故は”原発産業がもたらす暗黒時代”のほんのプロローグで、今後更なる深刻な事態が続発することは間違いない、、、という思いを抱かざるを得ません。

再処理、増殖炉、プルサーマル、、、さらに危険な状況に進みつつある原発産業。

「電力会社が、自分が何をしているかさえ、誰も分からないまま、全体が集団的な無責任体制のまま、無自覚に暴走してしまっている。」

筆者の心配が,今回の福島原発の東電のずさんな対応にも垣間みれます。

筆者の心の叫び、それでいて冷静かつ客観的分析、そして今にでも自分の身に降りかかってきてもおかしくない現実味に、引き込まれます。まだ未読の方は、御一読をお勧めします。

頻拍・頻脈

先の、「徐脈ですが、徐拍ではない」 の記事に "徐拍”は一般的でないと、書きましたが、"頻拍”はよく使いますね。
頻拍、頻脈、混同して使ってしまいますが、正確には異なるものなのでしょう。
例えば、脈なし心室頻拍 (pulseless VT)は、「頻脈ではない(脈なし)が、頻拍である」、、という解釈でよいのかな。
頻拍性心房細動の場合は、心拍数と脈拍数が大きく異なることが多いですね。

徐脈ですが、徐拍ではない

中年男性。自宅血圧計で、脈拍が30台/分と遅いので心配、、、とのことで救急外来を受診されました。脈が遅い、というだけで、それ以外の自覚症状はありません。
研修医の先生が対応してくれまして、バイタルサインは安定、自覚、他覚症状ともに問題ありません。心電図を記録して、当直の私まで連絡をくれました。

「ご自宅では30台/分の徐脈のようでしたが、今は60台/分に戻っています。PVCsが出ています」





なるほど。洞調律ですが、PVCs(心室性期外収縮)の二段脈となっています。正常洞調律とPVCs合わせて、心拍数60台/分となっているようです。ただ、末梢動脈を触知してみると、正常洞調律時はしっかり触知するものの、PVCsの時はごく微弱か、殆ど触知できません。
つまり、自宅でも洞調律+PVCsの二段脈で心拍数はおおよそ60台/分だったものの、自宅血圧計ではPVCs時の脈拍をカウントできずに、30台/分と表示してしまったものと推測されます。
病歴と諸検査よりPVCsの原因となる、急を要する疾患はなさそうで、無症候性"徐脈"、無症候性PVCsであり、とりあえず経過観察で帰宅としました。
徐脈ですが、徐拍ではない、とでも言うのでしょうか。"徐拍”という表現はあまり一般的ではないですね。。。
まあ、心拍数は必ずしも脈拍数と同じではないということです。

このような二段脈で、PVCsの拍動が極めて弱く、めまいなどの徐脈症状を呈することもあるそうです。私は遭遇したことはないですが、先日不整脈専門家先生が言っていました。

2011年4月29日金曜日

手の位置

新年度になり、循環器科スタッフが1人減ってしまい、業務増。その影響がボディーブローのように効いてきています(苦笑)。やれやれ。他の病院に比べれば医師の数はかなり多い方ですから贅沢は言えませんが。。


ということで、久し振りの更新。
先日あらためて感じた事。(以前にも同じような記事を書いた気がしますが、現場は改善されていないということでしょう。。。)
肺塞栓症による、院外心停止、PEA症例。救急隊の目の前でPEAになったようで、すぐさまCPRが開始されています。搬送中、当院搬送後、合わせておよそ40分弱のCPRが施行され、自己心拍再開しています。CTにて肺塞栓の診断が付き、血栓溶解療法を行いたいところでしたが、胸骨圧迫によると思われる肺の損傷で気管からの出血が著明。結局、血栓溶解療法の施行は見合わせ、抗凝固療法のみで対処となりました。

正しく胸骨圧迫しても、肋骨骨折や臓器損傷が生じてしまう可能性は勿論あります。しかしながら、多くのケースでは、手の位置が胸骨からずれて肋骨を押してしまうことが大きく関与している印象を持っています。G2010になり、少なくとも5cm、少なくとも100回/分、強く速く押しますから、正しい手の位置を強く意識していないと余計に肋骨骨折、臓器損傷を来しやすくなります。

BLSコースで、正しい手の位置を意識すべく、胸骨が確認できる骨の図(G2005 Supplemental materials P86)をコースで提示したことがたびたびありましたが、G2010BLS for HCPs student manualにはマニュアルの本文にこんな図が載っています。より印象的ですし、指導もし易くなると思います。




肺塞栓のマネージメントには、種々議論があります。血栓溶解、PCPS、IVC filter、、、。
Circulationに、statementが出ました。参考までに。

Management of Massive and Submassive Pulmonary Embolism, Iliofemoral Deep Vein Thrombosis, and Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association

2011年4月17日日曜日

BLSとACLSとスタッフと

久し振りの更新です。最近忙しいです! 鬱病になるかと思いました! が、にっこり笑顔を作ったら治りました(笑)。

当施設では数年前からAHA BLS for HCPは毎月定期開催していました。AHA ACLSは数ヶ月に一度の不定期開催としていましたが、ここ数ヶ月は頑張って、毎月ACLSコースを開催していました。

その影響か、以前よりも心肺蘇生教育に興味を示すスタッフが増えてきました。
ACLSコース受講を経て、その後ACLSコースにスタッフ参加し、更にBLSにも興味を抱き、BLSインストラクターを目指すひとが増えてきました。

BLSより、ACLSのほうが興味を引き易いのでしょう。手動式除細動器や、点滴、薬剤、、などちょっとかっこよく?見えますし。
その、ACLSの中で、BLSの重要性を強調することで、更にBLSへの理解が深まるのでしょう。
G2010暫定コースになり、明らかにG2005時代よりもHigh Quality CPRを強調するコースになっています。高度なACLSであっても、絶対的に重要なBLS。これを理解してくれているのだと思います。


当コースの受講生の多くは看護師、医師初めとする院内医療従事者。リアルな状況設定を意識したACLSコースを経験することにより、自分たちの職場環境の中でのBLSの重要性を認識するのだと思います。

BLSが重要であるという熱い思いを一人でも多くの人に伝え、motivationを高めることができれば、もっともっと心肺蘇生教育に携わろうという人が増えると思います。現場も変わると思います。



ただ、見方を変えれば、BLSコースだけでは、BLSが重要であるという熱い思いを伝え切れていない、とも解釈できます。このへんが今後の課題です。