2017年6月3日土曜日

今日のちょい当てエコー

中年男性。突然の胸背部痛で緊急搬送。救急外来に搬入された瞬間、後期研修医、看護師、自分の3人で、バイタル測りつつ静脈路確保試み、12誘導心電図記録。搬入時血圧230/160mmHg、PR70bpm、SpO299% (6LO2)。12誘導心電図記録は明らかなST変化はなさそう。血圧高いので、とりあえずニトロ舌下。




12誘導心電図の記録が終わるとほぼ同時くらいでちょい当て心エコー。描出不良だが、左室は良く動いていそう。上行大動脈に明らかなflapなし、ARなし。心嚢液なし。胸骨上窩から大動脈弓部を覗くと、、、おお!やっぱり!




大動脈弓遠位、左鎖骨下動脈分岐直後から可動性を有するflapあり。急性大動脈解離の確定診断。恐らくStanford B型。
搬入後5分もかからず、診断がつきました。ちょうど静脈路も確保できたので、ミリスロール、ペルジピン、インデラルでガンガン降圧!人手が増えて、モルヒネオーダー。血圧落ち着いたところで、痛みも和らぎ、造影CT撮影へ。案の定、急性大動脈解離Stanford B型でした。

今日も、エコーが役立ちました。

CCF測定で感じること

めちゃくちゃ久し振りです。

2009年に始めたこのブログも、諸事情もあり、ここ数年はほとんど更新していませんでした。

2017年 ゼロ
2016年 ゼロ
2015年 3記事
2014年 ゼロ

ですから笑。

こんな、ほぼ終わっているブログでも、訪問してくださる方が毎日、細々でもいらっしゃることに、改めてインターネットの力を感じます。


意味・意義のあること、学びが得られることを書いていると、同じ悩みや問題に当たった方がググって、訪問してくださるわけです。このブログがそれほどまでに深いことを書いているとは思いませんが笑、普遍的な問題解決などにつながるような情報をかけば、ブログは立派な「資産」になるわけですね。


ありがたいことに、今になり突然、某サイトにリンクまで貼って頂いちゃったこともありますので、今後も、たまには更新していこうと思います(本当か?笑)




ACLSもようやく日本語版DVDが出て、G2015準拠のコースになりました。


G2015では、質の高いCPRの指標の1つとして、CCF(Chest Compression Fraction (胸骨圧迫施行時間/全CPR時間))を挙げていますが、このブログの2013年の記事「CCF測定 in ICLS」では既にCCFを測定していますね。進んでるやん笑!


VTシナリオ:69%、56%、73%、70%、45%、72%
PEAシナリオ:76%
複合シナリオ:67%、74%、67%


その際のCCFはこんな感じでした。

現在、AHA ACLSコースでは、最終的には概ねCCF80%前後くらいになります。充電中に胸骨圧迫を継続しますし、パッドを使う場合は尚更です。上のICLSコースは、パッドは使用していません。このあたりが、ICLSとAHA ACLSのCCFの差になっています。充電中の胸骨圧迫継続、大事です。パッドも大事です。


AHA BLSコースでは、CCFを測定しなければいけないセッションがあります。CCF70%くらいの場合が多いです。AEDの場合、解析の時間、充電の時間に、胸骨圧迫中断を余儀なくされて、かなりイライラします笑。


CCFを測定することで、院内であればAEDよりも手動式除細動器がベターなことを身にしみて実感します。




ということで、CCF測定により、

・AEDよりも手動式除細動器
・パドルよりもパッド

の思いが強くなりました。










2015年5月6日水曜日

ACLSコースで楽しかったこと。

ACLSコースの頻拍のセッション。クリニックの内視鏡室に勤務されている看護師Aさんが受講生でリーダー役のケース。担当のインストラクターが、「内視鏡室で生じたunstable VT」を提示しました。Aさんは、不安定頻拍と判断し、手動式除細動器を要請して、同期電気ショック施行、洞調律に復帰。適切な対処ができました。終了。


不安定頻拍のアルゴリズムを学ぶには悪くないシナリオです。彼女の背景に合わせた状況設定は、学習へのモチベーション向上を促すことでしょう。

ところで、そのクリニックには手動式除細動器があるのでしょうか?疑問を抱いたので、それを見ていた自分が介入し、確認させて頂いたところ、クリニックにはAEDしかないことが発覚しました。

即ち、先のシナリオでの対処は、現状の彼女にとっては完全にバーチャルな世界だったわけです。アルゴリズムの型は学べても、それは現場での実践に繋がりません。

それでは、手動式除細動器がないクリニックでunstable VTを発症したらどのすれば良いのでしょうか?彼女はどのように対応すれば良いのでしょうか?彼女が取るべき具体的な行動は?

・AEDを使う?
・薬を使う?
・補液でしばらく様子を見る?
・薬を使った上で救急要請、転送?
・薬を使わず救急要請、転送?

受講生、インスト、皆が様々な意見を出し合いました。

その経過で、

・AEDの使用対象は「心停止」のみであること
・AEDは同期電気ショックはできないこと
・不安定頻拍に対して抗不整脈薬を使うことのリスク
・不安定頻拍→心停止のリスク

なども確認できました。

結論として、ベターな対処は、「余計なことをせず救急要請、転送」ということになりました。

このような議論を経た上で、

「もし内視鏡担当医が『輸液をして、ちょっと様子を見よう』と言ったらどうする?」

とAさんに最後に質問したら、「救急要請するように意見します」と建設的介入を施す旨お答え頂きました。
頼もしいです。

アルゴリズムを遵守して対応できればそれがベストでしょうが、全ての職場環境でその対処が可能なわけではありません。限られたリソースしかない環境で、このACLSコースの2日間で学んだ知識、スキルをどのように活かすのか。そんなことまで考えたコースにしたいと思っています。確たる正解がない問題も多々あるでしょう。そんなことはコースの目標から外れている、という意見もあるでしょう。

それでも、今回のように、それを受講生、インスト皆で議論を交わせたあの時間は、自分にとってめちゃくちゃ楽しい瞬間でしたし、その場にいた受講生、インストも、学びへのモチベーションが上がったと思います(主観笑)。

2015年2月16日月曜日

ROSCについて考え中。

ROSCの話の続き。
ちょっと自分でも混乱しており、前回の記事も少し手直ししました。

前回記事での混乱の一つの原因は、

頚動脈触知のROSC判断への「精度」

という漠然とした指標を使うからだろうと思い、

頚動脈触知のROSC判断への「感度」と「特異度」

に分けて考えようと思いました。

すなわち、

ROSC判断の感度=ROSCしていることを、ROSCしたと判断する
ROSC判断の特異度=ROSCしていないことを、ROSCしていないと判断する

ということです。

それでは、「ROSCの定義」を調べてみますと、、、、、

多くの文献は、「頚動脈触知=ROSC」と定義しています笑。
これでは、感度、特異度、、、という話にはなりません笑。

中には、平均動脈圧50mmHgをROSCと定義している文献(Vukmir et al 2004)もあります。

本当は、「頚動脈触知」よりも優れたROSCの指標があるはずです。

頚動脈は触れないけれども、最低限脳灌流が保持されており、CPRを中止しても良い状態があるかもしれません。
頚動脈は触れているけれども、脳灌流が不足しており、CPRを継続したほうが良い状態があるかもしれません。

カテ室で、動脈圧ラインが挿入されている状態で、患者の血圧が低下してしまった。頚動脈触知は明確ではなく通常ならCPRを始めるところだが、動脈圧ラインで動脈圧波形が出ており、収縮期血圧50mmHgくらいあるのでCPR開始しない、、、このような場面は正直あり得ると思います。それが、許容されることか、許容できないことか、よくわかりません。収縮期血圧50mmHgなら良いのか?60mmHgなら良いのか?あるいは、40mmHgでも良いかも?

どなたか、良い情報あれば教えて下さい笑。

こんな表も作って見ました。数値に関しては、参考値ですので細かい相関に関しては無視してください。
ご意見あればお願いします。




2015年2月14日土曜日

ROSCについて議論の場があったので、健忘録。

めちゃくちゃ久しぶりです笑。

とある場で、CPR後の自己心拍再開(ROSC)に関しての議論がありました。一言でいうと、頚動脈触知=ROSCでよいのか?という話。
その際のこと一部を、健忘録としてここに残しておきます。



ROSCは、「あり」「なし」と表現するが、実は連続したスペクトラム

頸動脈触知できれば、最も虚血に脆弱である「脳」への灌流は最低限確保できたと考えます。脈拍触知したらROSCと判断し胸骨圧迫は中止します。しかし、頸動脈触知=全身の灌流が十分、というわけでは決してありません。「ROSC」にも幅があります。「脳」への灌流がギリギリの「ROSC」もあれば、脳を含めた全身臓器の灌流が十分な「ROSC」もあります。「ROSC」は、「あり」「なし」ではなく、連続したスペクトラムです。ROSCしても、十分でない場合は、脳を含めた全身の灌流をさらに至適レベルまで改善させ(ABCの是正)、心停止の再発予防と臓器保護を施す、これがROSC後の管理の主たる意義です。


ROSCの評価方法について


ROSCの判断を「簡便さ」と「至適循環評価の精度」という切り口で分類してみました。上図ご参照ください(あくまでも個人的なイメージですので、あまり細かく考えないでください)。
当然、簡便でかつ精度の高い循環評価の方法が理想です。でも、まだそんな理想的な方法はありません。
上記のようにROSCは連続したスペクトラムです。すなわち「脳灌流を最低限確保」レベルから「全身臓器の至適灌流」レベルまであります。
「頸動脈触知」は特別な器具も不要で、簡便で汎用性に富んだ手技であり、これが一般的な臨床現場でのROSC判断のスタンダードな方法ですが、「脳灌流はざっくり、とりあえずありそう」レベルの判断になります。「脳灌流を最低限確保」レベルへの感度は高くはないかもしれませんし、もちろん、「全身臓器の至適灌流」レベルの判断もできません。

CPR中に動脈圧ラインを挿入、モニターし、平均動脈圧65mmHgを確認できれば、「全身臓器の至適灌流」レベルのROSC判断が可能になります。しかし、CPR中に動脈圧ラインを挿入することは一般的にはかなりハードルが高く、現実的ではありません。
ETCO2も有用ですが、CPR中に気管挿管する必要があり、やはり手間を要します。

「簡便さと精度のバランスの良さ」で現在のROSC判断は頚動脈触知が主流となっているのでしょう。精度の低さを補うのが迅速かつ適切なROSC後の管理です。

「脈拍触知=ROSC」これこそパラダイムです。そうでない考え方もあり得るという、一種のパラダイムシフトを、一連の議論の中で体験した気分です。将来的には、簡便かつ精度の高い、頸動脈触知よりも優れた新しいROSCの判断方法が生み出されるかもしれません。rSO2もその1つかもしれません。「当たり前」を疑うことから、始まります。

※自分で書いていて、自分でも混乱してきました笑。で、2/16ちょっと手直ししました。

2013年7月21日日曜日

CCF測定 in ICLS

ICLS WSのCDをしたりと、最近ICLSへの関わりもそれなりにあります。
自分の本拠地はAHAコースですが、良き学びの場であれば、AHAコースだろうが、ICLSだろうが、その他のコースだろうが、あまりこだわりなく、協力したいですし、自分も学びが得られれば嬉しいです。

ということで、昨日は当直明けでしたが、当院開催のICLSコースに参加しました。

重要な担当パートもなく、時間を作れましたので、CCF: Chest Compression Fraction (胸骨圧迫施行時間/全CPR時間)を測定してみました。AHAはCCF>80%が推奨です。
心停止と判断して胸骨圧迫を開始した時間から、ROSCと判断した時間までを全CPR時間としました。
測定できたシナリオのCCF(%)は以下の通り。

VTシナリオ:69%、56%、73%、70%、45%、72%
PEAシナリオ:76%
複合シナリオ:67%、74%、67%

80%に達しない主な理由として、VFに対する除細動の際の胸骨圧迫中断、脈拍チェックの中断、の影響が大きい印象を受けました。

当院のICLSは、看護師や医師看護師以外の職種の、救急医療に関しては経験の少ない方の参加が多いので、安全第一の方針です。故に充電中の胸骨圧迫は特に推奨していません。また、AHA ACLSと異なり、パルスチェックとリズムチェックの使い分けをしてらず、VF継続中でも必ずパルスチェックをするような方針になっています(理由は知りません笑)。

総じて言うと、CCF>80%って、なかなか大変と感じました。
「絶え間ない胸骨圧迫が重要」と言うだけでは、達成できません。

これを達成するためには、

①充電中の胸骨圧迫継続
②リズムチェック、パルスチェックの使い分け、これらのスキルの向上(いい加減ではなく、かつ迅速に)

この2点が必要かと思いました。

当院で行っているAHAコースなら、達成できそうかな、という印象ではあります。次回測定してみたいです。
ただし、時間・業務に余裕がないと、マニュアルで測定するのは難しいと感じました。
Heart Simのプログラムでは測定できるのかな?未確認です。測定できるのなら楽ですね。

でもうちのAHAコースは主に、高研のセーブマン。。。。。

2013年7月19日金曜日

心室粗動 Ventricular Flutter

心室粗動 Ventricular Flutterって何ですか?と質問されたら困りませんか?。
僕は困ります笑。

ちょっと調べてみました。


Braunwald  Heart Diseaseには、

「規則正しい大きな振幅のサインカーブを呈した150-300bpm(通常200)の波形です。早いVTと心室粗動の区別は困難で、通常は学問的な関心に過ぎません。ともに、血行動態に破綻します。」

と書かれています

P813に出ている心室粗動のFigureです。確かに、VTと区別つきません。。。




Chou's Electrocardiography in Clinical Practiceには、「VTと心室粗動の相違は、心拍数よりも主に波形の形状に基づいている」「心室複合体(→つまりQRS)の個々の形状が認識出来なくなったとき、心室粗動と診断される」とあります。後者は特によくわかりません。
同本P426に出ている心室粗動のFigureです。一応、QRSは認識できると思うけれど。。??


Up To Dateには、「心室粗動とは、とても速い−通常300bpm程の単形性心室頻拍です。T波は識別不能で、QRS間の基線は認めません。P波はも認めません。」とあります。
VTと区別していないような記載です。VTの一亜形?


本によって、微妙なばらつきがあります。

ということで、質問されたら、

「規則正しい大きな振幅のサインカーブを呈した150-300bpm程の波形です。速い単形性VTとの区別は難しいです。VTと同様に扱えばよいです。」

てな感じで対応してみようと思います。