2010年1月31日日曜日

アミオダロン300mg

ACLSコースでは、治療抵抗性VFに対して抗不整脈薬を考慮する場合、「アミオダロン300mg!」と当たり前のように受講生から指示が出ます。皆さんよく勉強しています。しかし、現場でアミオダロン300mgをボーラスで使用している方や、施設はかなり少数派と思われます。
治療抵抗性VFに対するアミオダロン300mgはevidence basedの用量ではありますが、日本は勿論、米国でもオフラベルです。

日本のガイドラインの1つである「救急蘇生法の指針2005医療従事者用」では、”欧米では初回投与量として300mgの1回投与、追加投与量として150mgが推奨されている。我が国では2007年1月に静注製剤が認可されたが、現時点ではVF/無脈性VTに対する投与量は確定していない。」と我が国での推奨投与量の記載は有りません。

先に御紹介した、「循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン」では「初回150~300mgを静脈路/骨髄路からボーラス投与する.その後もVF持続する場合,2度目は追加150mgを1回だけ3~5分間かけて追加投与」と記載されています。注記として、「静注用アミオダロンは我が国においては心停止に対してはオフラベルである.使用量,投与方法についてはAHAのガイドラインの推奨およびVTに対する我が国の用品を勘案した.我が国でのデータを蓄積し検証する必要がある」と記載がありますが、我が国での一応の推奨投与量が150-300mgと記載されていることは驚きです。
AHAガイドライン通り、或いはそれに少しでも近い投与法が現場で発揮されやすい環境を助長してくれることが期待できます。

かつて、ある救急医が難治性VFにアミオダロン300mgを投与したら循環器医に「多過ぎる!」と叱られたというエピソードがありました。そんなことも起こりづらくなるかもしれません。

2010年1月26日火曜日

頸椎損傷

身近な所でスポーツ中に頸椎損傷が生じました。事故直後グラウンドで一時心肺停止になったとのことですが、迅速な対応でCPR施行、呼吸停止に対しその場で気管挿管もしたとのことです。一命を取り留めましたが、今なお懸命にリハビリ中のようです。
原因究明、再発予防が最も重要なことで、様々な対策が講じられつつあるようです。
事故現場では幸い複数の医師(含救命医)が居合わせ、迅速かつ適切な対応で最悪の事態を回避できたようです。不幸中の幸いです。そういえばこんなこともありました(横浜スタジアム事故、三沢光晴)。1日も早い回復をお祈り致します。

2010年1月20日水曜日

研修医当直御法度

最近色々と多忙で、ブログ更新がすっかり滞っています。そんな状況ですが、たまたま「研修医当直御法度」という本をちょっと目にする機会がありました。大変評判の良い本とのことです。たしかに、陥りそうなピットホールをわかりやすく解説しており、すっかり循環器バカになっている自分にとっては勉強になることばかりです。素晴らしい本です。専門外分野のみならず、恥ずかしながら自分の専門のはずの循環器分野でも勉強になることがあります(苦笑)。

頻脈性不整脈に対しワソランを使う場合、血圧が低下してしまうケースがありますが、「ワソラン投与前にカルシウム(カルチコール5-10ml)を前もって投与しておくと血圧低下を予防できる」だそうで、知りませんでした。勉強になります。

ただ、同じページに、「アデホスはアデノシン三リン酸で, アメリカのアデノシンニリン酸とは力価が異なる. アデホスを使用する場合は,1回目10mg,2回目20mgとして使用する(Am Heart J 119:316-323,1990))」なる記載があり、気になりました。
アメリカのアデノシンはアデノシンであり、アデノシン二リン酸ではないはずです。





アデホスの量については、こちらで話題になりました。

一文で二カ所正確性に欠けると思われる記載があり、この文章以外の部分も信憑性は?とちょっと不安な気持ちにもなったりして。
まあそんなことで本の価値が下がるわけではありません、たぶん。

2010年1月15日金曜日

STEMI?

寒い日が続きます。そんな中、なかなか興味深い心電図を目にしました。
高齢者。意識障害で救急搬送。搬送中に心室細動になりました。電気的除細動等で対処、VFは繰り返しましたが、その後PEAを経て自己心拍再開しました。そして記録した12誘導心電図。




STEMI→VF??カテか!?なんて話になりましたが、情報を集めてみると、なんと体温23度。
ST上昇して見えますが、これは貫壁性虚血ではなく、J wave(Osborne wave)なのでしょうか。
J wave(Osborne wave)とは、低体温の時等に見られるQRS終末とST部分の早期の間あたりに見られる波のことを言います。
心エコーでも明らかな局所的左室壁運動異常は認めませんでした。

復温後の心電図です。



ST付近の変化も軽減致しました。
都会では重症低体温の頻度は恐らくあまり多くはないと思いますので、勉強になりました。

2010年1月12日火曜日

こんなの出てきた。



ゴミためのような自分の机周辺を掃除していたらこんな心電図モニターが出てきました。なかなかimpressiveです。
随分前の症例と思いますが、確か心電図上2束ブロックを呈している"失神"が主訴で入院された高齢者だったと思います。補充収縮が全くでずに、1分近くP波のみの"心静止”です。こんな時はTCPが大変役立ちますよね。

2010年1月9日土曜日

アドレナリン








今さらですが、まあ、こんな感じで、当院採用のテルモのエピネフリンも”アドレナリン"に名称変更になりました。
アドレナリンが正式名称になることに異論はありませんが、現場で「エピアト!」(当院救命センターではPEA/Asystoleに対しエピネフリンとアトロピンを同時に投与するアルゴリズムです)という言葉が良く聞かれましたが、今後は「アドアト!」になるのかな?
アドレナリンとアトロピン、少し似た名前でもあり、間違いが起こり易くなるかもしれません。

2010年1月8日金曜日

とあるSTEMI

比較的若めの男性。1年前胸痛を主訴に救急外来受診歴あり。その時の心電図。




2,3,aVFでST上昇、3,aVFではQ派も伴い、明らかに下壁心筋梗塞って感じですが、循環器専門医が対応し、心臓超音波検査で壁運動異常なく、心筋マーカー陰性。急性冠症候群ではないとして帰宅しています。ホントかな(汗)??、、、という気もしますが。その先生はエコーの本も出版しているくらいの専門家ですから本当だったはずです。
まあ、いずれにせよ、その後全く問題なく経過していたようです。

今回胸痛を主訴に救急外来再受診されました。心電図。



前回と比し少々変化がありますね。今回は心臓超音波検査で壁運動異常を認め、心筋マーカーも上昇しており、ホントに急性冠症候群で、緊急CAG、RCAへのprimary PCIが施行されました。

1年前、本当にSTEMIではなかったのか、わかりませんが、もしそうだとすると、心電図の奥深さに驚嘆せざるをえません。

2010年1月7日木曜日

循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン

年末に日本循環器学会から「循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン」が発表されました。残念ながらまだHPには反映されていませんが、近いうちにPDFでダウンロードできるようになるかと思います。
基本的なコンセプトとしては、「AHA ACLSの要旨に加えて、ACLSによる心肺蘇生後の専門医へのコンサルテーションとして循環器医のなすべき心血管救急のガイドライン」だそうです。
それなりにボリュームがありますので、まだ全部は読んでいませんがなかなか興味深そうです。心血管系のみならず中毒、電解質異常、低体温などにも記載は及んでいます。JCSもACLS-EPに侵出か(笑)?

ご存知のように日本循環器学会は循環器専門医に対しAHA BLS/ACLS(PALS)受講を必須にしていることもあり、AHAと整合性を保った形にしているようです。それでも日本の実情に合ったようにモディファイされているところはあります。通常のAHA ACLSコースでしたら問題にならないでしょうが、JCS-ITC主催のAHAコースに循環器医が受講した場合、この日循ガイドラインとの相違などを質問されるかもしれませんね。
いずれにしても、今回の「「循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン」発表は、少なからず(?)存在する頭の固い循環器医の方々(苦笑)に対しては、良き影響を及ぼすことが期待できます。たぶん。
G2010発表後、日循ガイドラインも素早いアップデートがなされるようですと、日循はかなり本気!と対外的にも印象づけられるかもしれません。苦労もあるでしょうが、楽しみでもあります。

2010年1月5日火曜日

通報者へのCPRの指示

Dispatcher-Assisted Cardiopulmonary Resuscitation(Circulation. 2010;121:91-97.)なる文献。

救急通報の際、電話での通報者へのCPRの指示はバイスタンダーCPR施行頻度を増やしますが、その安全性について検証しました。
電話でのCPR指示がなされた1700例。55%(938例)は心停止でしたが、45%(762例)は非心停止でした。18%(313例)は非心停止患者に対し胸骨圧迫がなされました。
そのうちの経過が把握できた247例を検討してみると、12%(29/247例)が不快を訴え、2%(6/247例)がCPRによる損傷を生じました。2%(5/246例)が骨折しました。臓器損傷は認めませんでした。

結論:電話でのCPR指示によりなされる非心停止患者へのCPRで、重篤な外傷を生じる確率は低い。

バイスタンダーCPRの有用性は明らかであり、この安全性も併せて考慮すれば、電話での通報者へのCPR指示は積極的に推奨すべきものである、と論じています。

当たり前だと思っていることを、実際に検証してみることって、大事ですよね。

2010年1月2日土曜日

大学ラグビー

早稲田も負け、慶応も負け、明治も負け。外人パワー炸裂の東海と帝京の決勝か。そういえば、駅伝でも日大のダニエルも相変わらずの活躍だったそうな。頑張れ日本人!

青木真也

大晦日の格闘技番組は冗長さにうんざりするので,今年はビデオ録画して観ました。
魔裟斗選手の引退試合とか、石井慧選手のデビューとか、ちょっとした話題はあったものの物足りない試合内容でしたね。そんな中、青木真也選手の寝技にはしびれました。期待を抱かせる彼のパフォーマンスには感心します。次の試合も楽しみです。ただ、試合後の敗者廣田瑞人選手への失礼な態度は大変残念でした。。。それにしても、上腕骨が折れるまで止めなかったレフェリーの判断には疑問を抱きましたが、生放送でもないのに折れる瞬間の映像、ボキッと折れる音も逃さず放映したTBSにも驚きました。

2010年1月1日金曜日

除細動後の胸骨圧迫再開によるVF誘発

院外VFへのAEDによる除細動のお話。First shockでの除細動成功後の胸骨圧迫がVF再発に関与する、というアムステルダム発の興味深い文献(Chest Compressions Cause Recurrence of Ventricular Fibrillation after the First Successful Conversion by Defibrillation in Out-of-Hospital Cardiac Arrest)を見かけました。アブストラクトしか見ていませんが、是非原文を見たいと思いました。

院外VFに対し、AEDを作動。GL2000方式(ショック→リズム/パルスチェック→胸骨圧迫)、GL2005方式(ショック→胸骨圧迫)をランダムに施行(各々約70例)。ショック(除細動成功)後の胸骨圧迫再開までGL2000方式は30秒、GL2005方式は8秒(中央値)。VF再発は、各々40秒後、21秒後に見られた。胸骨圧迫再開からVF再発までの時間は各々6秒、8秒。CPR再開前に比する、CPR再開後初めの2秒におけるVF再発のhazard ratioは15.5。CPR再開8秒後では、VF再発のhazard ratioはCPR再開前と同等だった。
結論:除細動後の早期CPR再開は早期VF再発の原因となり得る

うーん。機序としては、非VFに対し胸部叩打を施すことで、かえってVFを誘発してしまうことがあり得るといった、いわゆる胸部叩打法(参考:AHAガイドライン2005 P83)と関係あるのかな?

元気な車




主張の強い車を見かけました(笑)。派手ですが、、正論です。