最近色々と多忙で、ブログ更新がすっかり滞っています。そんな状況ですが、たまたま「研修医当直御法度」という本をちょっと目にする機会がありました。大変評判の良い本とのことです。たしかに、陥りそうなピットホールをわかりやすく解説しており、すっかり循環器バカになっている自分にとっては勉強になることばかりです。素晴らしい本です。専門外分野のみならず、恥ずかしながら自分の専門のはずの循環器分野でも勉強になることがあります(苦笑)。
頻脈性不整脈に対しワソランを使う場合、血圧が低下してしまうケースがありますが、「ワソラン投与前にカルシウム(カルチコール5-10ml)を前もって投与しておくと血圧低下を予防できる」だそうで、知りませんでした。勉強になります。
ただ、同じページに、「アデホスはアデノシン三リン酸で, アメリカのアデノシンニリン酸とは力価が異なる. アデホスを使用する場合は,1回目10mg,2回目20mgとして使用する(Am Heart J 119:316-323,1990))」なる記載があり、気になりました。
アメリカのアデノシンはアデノシンであり、アデノシン二リン酸ではないはずです。
アデホスの量については、こちらで話題になりました。
一文で二カ所正確性に欠けると思われる記載があり、この文章以外の部分も信憑性は?とちょっと不安な気持ちにもなったりして。
まあそんなことで本の価値が下がるわけではありません、たぶん。
寺澤先生は非常に有名な先生です。講義も面白いですし、私も好きです。研修医当直御法度は私も読んでいます。救急医で知らない人はいないと思います。
返信削除この本の価値が下がる事は絶対にありません!!是非、ここはこうではないかと出版社にメールを送ると良いと思います。私は以前そういう事をしたら、図書券くれたり、文献くれたりしました(それを目的にやる訳ではないですが(^.^))。
以前どこかでカルシウムの静注は危険な行為なので絶対にやってはいけないと勉強しました。だから大量輸血をしてもカルシウムの補充は必要ない、、と。
例えばthe ICU Book第3版(英語版)のP.644には以下のようにあります。
Intravenous calcium replacement can be risky in select patient populations. Calcium infusions can promote vasoconstriction and ischemia in any of the vital organs.
以下は私の下手な訳&要約です。
カルシウムの静注は血管収縮を起こし、特に心拍出量が減少し、血管収縮状態にある場合に危険が高い。過剰なカルシウムが細胞内に入ると細胞障害を来す可能性もあり、症状のある低カルシウム血症か、イオン化カルシウムが0.65mmol/l以下の場合に限るべきである。
ワソランを静注して心停止になった人を診た事がありますし、心筋肥大があると危険なんでしょうか??
私は素人同然の医者なので、やはりAHAにならってATPを使うか、循環器の先生を早く呼ぶか、、、、どちらかにしています。
J先生はワソランを使わざるを得ない状況があるでしょうから、、、色々大変ですね。
ワソラン・・・おそろしい薬です。自分が研修を受けていた病院では初期対応に使用する薬剤のなかでは群を抜いて使用頻度が高かったと思います。
返信削除しかし、ワソランの恐ろしさを一度でも目の当たりにしたらおいそれと使えなくなりました。やってアデホス、どうしようもなくて、心機能低下がなくて、心筋傷害なくて・・・・などなどリスクがない場合に自分で対応しなければいけない場合はワソランという風にかなり優先順位が下がりました。日々これ勉強です。
Kim先生、詳細かつ貴重な情報誠に有り難うございます。本当に博識で、尊敬してしまいます。
返信削除consommeさん、有り難うございます。
確かにワソランは怖いことが起こりえる薬剤で、注意が必要ですよね。ちなみにどんな恐ろしことを経験されたのか、教えてください!
1型呼吸不全を呈した患者がHR190-200台の上室性頻拍を呈したためワソランを使用したところ心停止しました。後で判明したことですが、結果的には呼吸不全の原因は2次性心筋症による心不全であり、心筋傷害がベースに潜んでいる症例にワソランを使ってしまったという経験です。患者は助かりましたが、二度と同じ轍は踏むまいと心に刻みました。
返信削除consommeさん、貴重な経験をご教授頂き誠に有り難うございます。怖いですね。明日は我が身です。このような症例を皆で共有できると良いですね。
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