2010年6月9日水曜日

夜間の高齢入院患者の転倒

高齢化社会で、当然高齢の患者さんの入院も増えます。不穏や、夜間徘徊などなど、管理に苦労することが少なくありません。
あってはならないこととはいえ、現実的には夜間の転倒もしばしばです。

消化性潰瘍にて入院中の高齢男性が早朝未明にトイレへ独歩、トイレで転倒しました。当直の後期研修医が呼ばれ、対応しました。意識状態初め、バイタルサインは大きな問題なく特に打撲や外傷はありませんでした。ただの転倒かと思いきや、少々息苦しい感じがあり、若干のSpO2低下も伴うとのことで、心電図を記録しました。




あらら、ST変化あり、、とのことで循環器の当直が相談されました。

ちょっといやな心電図ですね。2,3,aVFでST低下、aVR,V1-2でST上昇しています。
心エコーをしてみると右心負荷あり。造影CTを撮影してみると。。。。。やっぱり。






両側肺動脈に血栓を思わせる陰影欠損あり。肺塞栓です。





CTでも右心系拡大が分かります。
両側大腿静脈にも血栓がありました。バイタルサインは最低限保たれていましたので、酸素、ヘパリン、IVC filterで対応しました。

今回のケースは、高齢者のただの転倒ではなく、肺塞栓発症に続発した心拍出の低下によりふらついて転倒したものと推測されます。
高齢者の転倒に対応するとき、またか、、、という気持ちで、いい加減になってしまうことも少なくないと思います。いつでも慎重さをもって対応しなくてはいけないという、教育的には良いケースでした。
後期研修医の先生、よく心電図とってくれました。命の恩人です。

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