2012年3月13日火曜日

ネガティブフィードバック

ネガティブフィードバックが分からない(笑)。
普通に考えると、フィードバックはプラスの変化を指し、プラスの変化ができない場合、ネガティブフィードバックとなるはずです。

しかし、「良いこと」を「良い」と褒めることをポジティブフィードバック、「良くない事」を「良くない」と指摘することをネガティフィードバック、と表現している場に出会う事が少なくありません。

ICLS 指導者ワークブックP36にも同じような記述があります。「出来なかったことを「出来なかった」と伝えるのがネガティブフィードバック」であり、これは、受講生からすると、自分が(誤って)進もうとしていた方向を是正されるので「ネガティブフィードバック」なのだそうです。

うーん。でも、出来なかったことを出来なかったと伝えることにより、受講生が結果的にプラスの変化を得ることができれば、これはネガティブフィードバックではなく、ポジティブフィードバックになるような気がします。

AHAのCore Instructor Courseでは、受講生にプラスとならないフィードバックをネガティブフィードバックとしています。即ち、手技ではなく個人を評価したり判定したり、具体的でなく漠然とした言い方、主題に関連していない、タイムリーでない、、、そのようなフィードバックを、"ネガティブフィードバック”としています。上記のICLSのワークブックとはニュアンスが異なりますが、”フィードバック”の本来の意味を踏襲していると思われます。
(ちなみに、関連した手技に関して、具体的に、タイムリーに、こうすればできると伝えるのがコンストラクティブフィードバック。)


この件について、複数のえらい先生方に御聞きしましたが、返答は様々でした。
とある重鎮先生は、"広義のネガティブフィードバック”と”狭義のネガティブフィードバック”があるんだと思います、とおっしゃっていました。

現時点の私としては、AHAのCICのフィードバック論に一票。

フィードバックの混迷

フィードバック〖feedback〗
〘名〙(スル)
1
ある機構で、結果を原因側に戻すことで原因側を調節すること。電気回路では出力による入力の自動調整機能、生体では代謝•内分泌の自己調節機能など。
2
反応すること。反響。「ユーザーの要望に対して迅速に—する」





なるほど。心肺蘇生教育に当てはめると、

受講生の手技(出力)に介入することで、受講生の入力(考え、理解力、頭脳)を調整し、新たな(より良い)手技(出力)に改善する。

ということでしょうか。

他の辞典などひもとくと、そもそも“フィードバック”はもともと工場で使われていた言葉だそうで、プラスの変化を指す。

即ち、ポジティブフィードバックという言葉はおかしい。フィードバックは、そもそもポジティブだから。

"ポジティブ""フィードバック"は、いわば「頭痛が痛い」といった感じ。あってる?

間違った認識でしたら、ぜひ御教授をお願い致します。

2012年3月11日日曜日

イブストゥピ

教育学にはあまり興味はなかったのですが、心肺蘇生教育にも当然そのような概念が多分に浸透してきており、自分としてもやっぱり勉強しなくてはいけません。この週末は、SimTikiやWISERに留学していた先生方、JATECを作り、育て、普及させた先生などなど、simulation教育に精通した方々に教育手法はじめ様々なこと御教授頂ける機会に恵まれました。僅か2日間でしたので、あまりに短かったのですが得るものはいろいろありました。感謝です。
なんとなく日々やっていることを、改めて教育学的な視点で見直すことができた気がします。
用語が難しいです。ぶっちゃけ用語なんて、どうでも良くて、その概念を教育の場で発揮できればよいわけです。用語を知らなくても受講生を存分に高めるインストラクションはできるわけです。でもやっぱり共通言語は必要です。。。Instruction、Facilitation、Briefing、Debriefing、Coaching、Feedback、positive feedback、negative feed back、、、当たり前のように使っている言葉も、実は理解できていなくて、明確な定義がわからなかったりします。一部は解決しましたが、まだ未解決な部分もあります。

AHAも踏襲しているThe International Board of Standards for Training, Performance and Instruction (ibstpi ) のibstpiが「イブストゥピ」って読むのも初めて知りました(笑)。すっきり(笑)。

2012年2月28日火曜日

15-30分、5-10分

AHA UA/NSTEMIのガイドライン

If the initial ECG is not diagnostic but the patient remains symptomatic and there is high clinical suspicion for ACS, serial ECGs, initially at 15- to 30-min intervals, should be performed to detect the potential for development of ST-segment elevation or depression. (Level of Evidence: B)

AHA STEMIのガイドライン

If the initial ECG is not diagnostic of STEMI but the patient remains symptomatic, and there is a high clinical suspicion for STEMI, serial ECGs at 5- to 10- minute intervals or continuous 12-lead ST-segment monitoring should be performed to detect the potential development of ST elevation. (Level of Evidence: C)

使い分けは難しい。。。。
5-10分で再検しましょう。その前に可能ならば循環器医を呼ぶことを、個人的には推奨です。

2011年11月3日木曜日

VT ?




HR150程のQRS幅の狭い頻拍に、アデホス(ATP)5mg を急速投与したところ、装着していた心電図モニター画面全体がこんな波形となり、HR280くらいのデジタル表示になりました。

アデホスでVTになっちゃった???

と一瞬思ってしまうような現象でしたが、何の事はない、心房粗動の心室伝導が低下したことで、鋸歯状波が明瞭となっただけでした。心電図モニターが鋸をR波として認識し、誤カウントしたようでした。おどかすなよー(笑)。





結局は、すぐに元の心房粗動2:1に戻りましたが、何が起ころうとも対処できるように、アデホスを使用するときは除細動器をそばに置いておく事が基本です。

2011年10月31日月曜日

しつこく、手の位置

前回10/23の記事に関し、同じような経験を複数しているという方から御連絡を頂きました。都内の某救命センター。VF,MI,CPAで救命センター搬入され、自己心拍再開、PCIもうまくいったが、その後急速に貧血が進行し、ショックに陥ったそうです。結論としては、肝損傷→腹腔内出血。恐らくは胸骨圧迫によるもの。どのような機序で、肝損傷に至ったか明らかではありませんが、そんな可能性を少しでも減らすべく、正しい手の位置を守ることは、やはり、大切そう。

2011年9月14日水曜日

院外心肺停止に対するアドレナリンの効果

Effect of adrenaline on survival in out-of-hospital cardiac arrest: A randomised double-blind placebo-controlled trial.
(Resuscitation. 2011 Sep;82(9):1138-43. Epub 2011 Jul 2.)


背景:心肺蘇生においてアドレナリンは長年標準的に使用されているが、生存率改善を示した臨床試験はほとんどない。この研究の目的は、院外心肺停止患者に対し、アドレナリン投与することで生存退院率が向上するか否かを調べることである。
方法:院外心肺停止患者におけるアドレナリンの二重盲検無作為プラセボ対照試験。ALSのガイドラインに従い、傷病者にアドレナリン1mgまたはプラセボ(生理食塩水)を無作為に投与しCPRを行った。一次アウトカムは生存退院、二次アウトカムは病院前自己心拍再開(ROSC)と良好な神経学的予後(CPC1-2)。
結果:研究期間中の4103人の心肺停止の内、601人を無作為に2群にわけた。不十分なデータ例をのぞいた534人が解析対照。プラセボ群262 人、アドレナリン群272人。年齢、性別、バイスタンダーCPRの有無など、両群の患者背景はよく合致していた。ROSCはプラセボ群22人(8.4%)、アドレナリン群64人(23.5%) (OR=3.4;95% CI2.0-5.6)。生存退院はプラセボ群5人(1.9%)、アドレナリン群11人(4.0%) (OR=2.2; 95% CI0.7-6.3)。うち、アドレナリン群2人以外全員はCPCスコア1-2と良好であった。
結論:心肺停止患者に対するアドレナリン投与は、自己心拍再開率を改善させたが、生存退院率改善については統計学的有意差はなかった。



アドレナリンには確たるエビデンスはないものの、心肺蘇生においては標準的薬剤とされており、こんなRCT、よくぞ倫理的に許容されたものです。しかしながら、どうやら倫理的問題を提起する意見もあったようで、予定通りに研究を進めることができず、nも予定よりだいぶ減ってしまったようです。RCTとは言え、限界も色々とあるようですが、それでも、もう少しnが多ければ生存退院率に有意差が出た可能性があり、惜しい気がします。もう二度とこんな研究はできないことでしょう。