2010年11月28日日曜日

G2010前、G2005BLS

昨日は久し振りに他施設開催のBLS for HCPに参加しました。いつもは自施設開催で、CD業務や裏方業務に終始してしまうことが多いため、ブースに入って受講生を直接指導するのも久し振りでした。
G2010が発表されて、頭の中はもうG2010モードですが、G2005のコースです。当然ABCですし、当然"見て聞いて感じて"です(笑)。はやくG2010コースにならないかなー(笑)。
異論のある方は当然いらっしゃると思いますが、それでも、受講生を混乱させない程度に、G2010のエッセンスを少々入れて傷病者の生存率向上に寄与しようと個人的企みをもち、主に2点、以前と少々違ったインストラクションをしました。1つは死戦期呼吸。G2005ではコース終盤のDVDでちょっと触れるだけですが、それをコース前半から言及。死戦期呼吸によって心肺停止の認識が遅れ、CPR開始が遅れ、救える命が救えなくなることが少なくないことをお伝えしたり、休憩時間に死戦期呼吸の映像をお見せしたりしました(反則?(苦笑))。もう1つは、チームワーク。お互いの役割を明確にし、お互いの手技を確認し合い、励まし合い、2人でコミュニケーションを十二分にとって、協力して最高のCPRを傷病者(マネキン)に提供することを繰り返しお伝えしました。
担当した受講生は循環器内科の不整脈専門医の先生と、ベテラン看護師さんでしたが、楽しんで学んで頂けたと思います。今回学んだことを、各々の職場、現場でもきっと活かしてくれると思います。

チームワークについては、G2005ACLSのteam dynamicsの概念を、BLSコースでも自然に無理なくお伝えできればいいなと思います。残り少ないG2005コースですが、インストする機会があればもう少し工夫してみます。G2010BLSではどのように伝えることになるのか、楽しみです。

今回のコースは様々な所からインストラクターが参加され、また開催施設のインスト、スタッフの皆さんも大変良く働いて頂き、スムースなコース運営でした。コース後の反省会でも貴重な意見が交わされ、勉強になりました。有り難うございました。
あまりに楽しくて、その後の懇親会では、飲み過ぎ、意識不明になりました。反省です(毎回同じこと言ってる(汗))。御迷惑をおかけてしてたらすいません。

team dynamics 2010

約1年前にteam dynamicsについてこんな記事を書いています。

http://jblog20090211.blogspot.com/2009/10/team-dynamics.html

G2005のプロバイダーマニュアルになぜ、突如team dynamicsが出てきたのか?、evidenceはあるのかな?という疑問の話でした。

G2010には、「チームワークは様々な臨床状況で患者のアウトカムに影響を与えると報告されている。チームワークやリーダシップのトレーニングは、蘇生行為を改善させることが示されている。」といった感じの記載があり、チームワークとリーダーシップのトレーニングはACLSコースに含めるべきである(Class I LOE B) と推奨しています。へーそうなんだ。

引用文献も沢山あります。自分の情報収集能力不足でした。ちょっと読んでみたい題名がいっぱいです。

112. Does teamwork improve performance in the operating room? A multilevel evaluation. Jt Comm J Qual Patient Saf. 2010;36:133–142.
113. The cognitive basis of effective team performance: features of failure and success in simulated cardiac resuscitation. AMIA Annu Symp Proc. 2009;2009:599–603.
114. Teamwork: crew resource management in a community hospital. J Healthc Qual. 2009;31:14 –18.
115. Teams communicating through STEPPS. Med J Aust. 2009;190(suppl):S128 –S132.
116. Does team training improve team performance? A metaanalysis. Hum Factors. 2008;50:903–933.
117. Surgical team behaviors and patient outcomes. Am J Surg. 2009;197:678–685.
118. Brief leadership instructions improve cardiopulmonary resuscitation in a high-fidelity simulation: a randomized controlled trial. Crit Care Med. 2010;38:1086 –1091.
119. Teaching teamwork during the Neonatal Resuscitation Program: a randomized trial. J Perinatol. 2007;27:409–414.
120. Development of a leadership skills workshop in paediatric advanced resuscitation. Med Teach. 2007;29:e276–e283.
121. Improving medical emergency team (MET) performance using a novel curriculum and a computerized human patient simulator. Qual Saf Health Care. 2005;14:326–331.
122. Assessment of CPR-D skills of nurses in Goteborg, Sweden and Espoo, Finland: teaching leadership makes a difference. Resuscitation. 2007;72:264 –269.
123. Error reduction and performance improvement in the emergency department through formal teamwork training: evaluation results of the MedTeams project. Health Serv Res. 2002;37:1553–1581.
124. Improving in-hospital cardiac arrest process and outcomes with performance debriefing. Arch Intern Med.2008;168:1063–1069.

2010年11月20日土曜日

小児病院

ある小児専門病院の敷地内で心肺停止に陥った成人男性の方がいらっしゃいました。院内緊急コールがなされ、CPR開始、その小児病院の初療室にとりあえず搬送、ACLSを継続したようです。難治性VFで、アドレナリン、アミオダロンも使用され、10回以上の電気的除細動が試みられましたが洞調律に復さず、CPR施行したまま当院に転送されてきました。

結局ACSからのVFで、PCPS、PCI、低体温療法などで対処しました。

小児科の先生方も、ACLSはしっかりとマスターされているようです。さすがです。
自分は、、、、PALS未受講です。うーん。近いうちに、受けようかな。

さすが小児科の先生と思った点。静脈路が確保しずらかったのでしょうか、腸骨と脛骨近位に1本ずつ、計2本の骨髄路が確保されていました。きっと慣れているんでしょう。ぱちぱち。

2010年11月16日火曜日

。。。。。

実際の臨床では、なかなか教科書通りに治療がはかどらない方が少なくありません。

高度〜完全房室ブロックで、心肺停止に近い状態で入院されてきた高齢者。本来恒久的ペースメーカー植え込みの適応でしたが、感染症併存などの事情あり植え込みできず。感染症治療に難渋し、数ヶ月というspanで保存的に対処されていました。一時的ペースメーカーも抜去され、幸いその間、心臓的な病状は落ち着いていました。ようやく感染症も落ち着きをみせ、恒久的ペースメーカーもそろそろ植え込めるか、、という時期でした。



重篤な心疾患を有していることなどすっかり忘れてしまっていたこの時期。。。。。突如高度房室ブロックから、心静止に移行しました。心電図モニターの異常に気づいた看護師が訪室、反応なく、脈拍も触知しないためCPR施行となりました。早々に医師らも訪室。High qualityを意識したBLS、とりあえずは換気はBVMです。ACLS secondary surveyとして、静脈路を確保したいのですが、とれません。静脈が大変細い方です。頸骨粗面から骨髄路確保を試みましたが、硬くて骨髄針が曲がってしまいました(汗)。やり慣れない手技ですから、コツがつかめていないのでしょうか。気管内投与を念頭に気管挿管しました。並行して、大腿静脈確保を試みて、こちらが確保できたので、大腿静脈からアドレナリン1mgを投与しました。
また、心静止にはTCPは推奨されていませんが、病態的にペースメーカーも有効な可能性があり、TCPも試みました。もちろん胸骨圧迫を中断しないことを心がけました。アトロピンもG2010ではルーチンには推奨されていません(し、完全房室ブロックには効果はないかもしれません)が、有効な可能性もありましたので、投与しました。

その後自己心拍が再開しましたが、ご高齢な方だけに、その後もなかなか厳しい経過を辿りました。。。。


G2005にせよ、G2010にせよ、心停止ルゴリズムが提唱されています。それに準ずることは大切ですが、病態によりmodifyすることはいくらでもあります。重要なことは、HighQuality CPRを常に心がけることです。

例えば 、VF患者の生存退院率を上げるのは早期CPRと早期除細動のみである。他のACLSの治療、即ち、薬剤投与や、気管挿管などは、中には自己心拍再開率改善のデータを有するものはあるものの、生存退院率改善を示したものは全くない、とG2010に記載されています。
ただ、それらのデータは、High Quality CPRや蘇生後のケア(低体温療法など)が強調されるようになった時代以前のものであり、ACLSの各種治療がHigh Quality CPRや至適な蘇生後ケアとともになされれば、生存退院率改善につながる可能性がある、、、といった記載が続きます。

その通りだと思います。今後も、High Quality CPRや至適な蘇生後ケアの状況下での成績に基づき、新たな知見が出てくる可能性は十分にありますね。

2010年11月14日日曜日

11/13BLS

昨日はBLS for HCP。更新コースと新規コースの2本立てでした。
初参加スタッフが複数御参加頂き、コース中や、終了後の反省会でいろいろと質問が出ました。

・乳児の脈拍確認はなぜ頚動脈ではなく、上腕動脈なのですか?

よく出る質問ですが、明確な答えはよくわかりません。以前、自分で調べたのもすっかり忘れていました。最近物忘れが激しい(笑)。

http://jblog20090211.blogspot.com/2009/08/blog-post_11.html


・心臓マッサージと胸骨圧迫、どちらが正しいのですか?

うーん。良い質問ですね。ついつい"心マ!”なんて言ってしまいますね。

信憑性は定かではありませんが、ウェキペディア( http://ja.wikipedia.org/wiki/心肺蘇生法 )には以下の記載あり。
胸骨圧迫(きょうこつあっぱく)とは、心臓あたりを両手で圧迫する応急手当。心臓マッサージと混同されることが多いが、両者は全くの別物である。 心臓マッサージは、外科医師が胸を切開し手で直接心臓を揉むという医療行為である。一方、胸骨圧迫とは、乳頭と乳頭を結んだ線上で身体の真ん中に手の付け根を置き、4 - 5cm程度沈むように圧迫する。肘を真っ直ぐ伸ばし、約100回/分の速さで圧迫を繰り返す。

こんな意見もあります。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1123532501


・窒息解除のためのHeimlich法は腹腔内圧上昇?胸腔内圧上昇?

たとえば、ERC G2005 にはこんな記載があります。

「背部叩打(back blow)、胸部突き上げ法(chest thrusts)および腹部突き上げ法(abdominal thrust)はいずれも胸腔内圧を上げ、気道から異物を除去できるようにする。症例報告の半数において、気道異物の除去には2つ以上の方法(more than one technique)が必要とされている41。最初にどの方法が行われ、どのような順番で行われていくべきかを示しているデータはない。もし一つの方法でうまくいかなければ、閉塞が解除されるまで別の方法を順に試みていく。」

ですから、やっぱり胸腔内圧上昇が大事なようです。

ちなみに、AHA ガイドライン2005 には以下の記載もあります。

「死体を用いた気道確保の方法に関する無作為化試験273),麻酔下のボランティアによる2つの前向き研究274.275)は,腹部突き上げ法よりも胸部突き上げ法を用いたほうが,高い気道内圧が持続することを示している」

G2010では、窒息に関して目新しい情報はなさそうかな。

・2人の救助者による乳児のCPRの胸骨包み込み両母指圧迫法の、親指以外の4本指の動かし方は?DVDでは見えないし!

たしかにDVDでは見えません。プロバイダーマニュアルには「親指で押し下げるときに、他の指で胸部を絞るようにする(As you push down with your thumbs, squeeze the infant's chest with your fingers.)」 とあります。
自分としては、親指と他の4本の指で乳児の体幹を挟むような動きをしていましたが、まあ胸骨圧迫がしっかり行えれば細かいことはどうでもよいのでしょう。
ところで、G2010では、この"絞り(sqeeze)"は有効であるデータはないとの記載があり、過去のもののようなニュアンスで書かれています。2本の親指でしっかり胸骨圧迫が行えればよいのでしょう。ということは、手が小さいかたは、"包み込み"しなくても2本の親指で強く押せればよいのかな? "包み込み"が出来なければ、通常の2本指法が推奨はされていますが。。。。どなたか教えてください。


新たな方が御参加頂くと、こちらも良き復習、良き学びを得ることができます。

2010年11月1日月曜日

外科→耳鼻科→耳鼻科→循環器内科

中年男性。数年前に大腸癌手術既往あり。現在椎間板ヘルニアによる痛みで、NSAIDs内服中。

1-2ヶ月前頃から、歩行すると100m程度で心窩部痛、両側顎下部痛がみられていた。疼痛出現後も歩行を続けていると、少し楽になるときもあり、休むとすぐに疼痛改善見られた。症状の出現はほぼ毎日であった。
相変わらず同症状が出現するため心配になり、かかりつけの外科を受診。腹部エコーにて胆石あり、これによる痛みか、NSAIDsによる症状が疑われ、上部消化管内視鏡を予約し帰宅。また、顎下痛に対して耳鼻咽喉科受診を勧めらたため、2日後近医耳鼻科を経て当院耳鼻科受診。エコー等が予定された。

その2日後の朝、胸痛・心窩部痛で覚醒、起床、冷汗あり、顎下部痛も伴った。改善せず、救急外来受診。

BT 36.1℃ HR 79  BP 162/114   SpO2 98% 




V1-4でST上昇みられ、STEMIと診断、CAG施行し、左冠動脈前下行枝の完全閉塞認め、primary PCI、ステント留置し早期再灌流療法を施行しました。その後経過は順調でした。


8月からの症状は心筋虚血による労作性狭心症だったようです。危なかったです。心窩部痛は、やっかいです。顎への放散もくせ者です。かつて同様のケースで歯科を受診してしまった方もいました。いずれも、虚血性心疾患も頭の片隅にいれておく必要があります。後出しジャンケンですが、このような経験を皆で共有することが大事です。

循環器に限らず、その分野を専門としない者も、致死的となりうる病態を見逃さない視野の広さが求められます。人ごとではありません。気をつけましょう。