2010年11月16日火曜日

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実際の臨床では、なかなか教科書通りに治療がはかどらない方が少なくありません。

高度〜完全房室ブロックで、心肺停止に近い状態で入院されてきた高齢者。本来恒久的ペースメーカー植え込みの適応でしたが、感染症併存などの事情あり植え込みできず。感染症治療に難渋し、数ヶ月というspanで保存的に対処されていました。一時的ペースメーカーも抜去され、幸いその間、心臓的な病状は落ち着いていました。ようやく感染症も落ち着きをみせ、恒久的ペースメーカーもそろそろ植え込めるか、、という時期でした。



重篤な心疾患を有していることなどすっかり忘れてしまっていたこの時期。。。。。突如高度房室ブロックから、心静止に移行しました。心電図モニターの異常に気づいた看護師が訪室、反応なく、脈拍も触知しないためCPR施行となりました。早々に医師らも訪室。High qualityを意識したBLS、とりあえずは換気はBVMです。ACLS secondary surveyとして、静脈路を確保したいのですが、とれません。静脈が大変細い方です。頸骨粗面から骨髄路確保を試みましたが、硬くて骨髄針が曲がってしまいました(汗)。やり慣れない手技ですから、コツがつかめていないのでしょうか。気管内投与を念頭に気管挿管しました。並行して、大腿静脈確保を試みて、こちらが確保できたので、大腿静脈からアドレナリン1mgを投与しました。
また、心静止にはTCPは推奨されていませんが、病態的にペースメーカーも有効な可能性があり、TCPも試みました。もちろん胸骨圧迫を中断しないことを心がけました。アトロピンもG2010ではルーチンには推奨されていません(し、完全房室ブロックには効果はないかもしれません)が、有効な可能性もありましたので、投与しました。

その後自己心拍が再開しましたが、ご高齢な方だけに、その後もなかなか厳しい経過を辿りました。。。。


G2005にせよ、G2010にせよ、心停止ルゴリズムが提唱されています。それに準ずることは大切ですが、病態によりmodifyすることはいくらでもあります。重要なことは、HighQuality CPRを常に心がけることです。

例えば 、VF患者の生存退院率を上げるのは早期CPRと早期除細動のみである。他のACLSの治療、即ち、薬剤投与や、気管挿管などは、中には自己心拍再開率改善のデータを有するものはあるものの、生存退院率改善を示したものは全くない、とG2010に記載されています。
ただ、それらのデータは、High Quality CPRや蘇生後のケア(低体温療法など)が強調されるようになった時代以前のものであり、ACLSの各種治療がHigh Quality CPRや至適な蘇生後ケアとともになされれば、生存退院率改善につながる可能性がある、、、といった記載が続きます。

その通りだと思います。今後も、High Quality CPRや至適な蘇生後ケアの状況下での成績に基づき、新たな知見が出てくる可能性は十分にありますね。

2 件のコメント:

  1. 「考える料理人」ですね。確かにコース受講生やインストにもいますね。ガイドラインに反する事を許さない人が、、、、

    「ルーチンに」使用する事を勧めていないだけで、患者さんによっては効果があるので、、、アトロピンも以前から効果がないのは分かっていたんですが、副作用もそれほど、、、で使っていた訳ですから、J先生の対応は素晴らしいですよね。

    臨床は難しいですが、だからこそ面白いとも言えます。裁判等で考慮して頂けると嬉しいですが、これも難しいですよね。

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  2. Kim先生、有り難うございます。「考える料理人」、懐かしいですね。G2000のプロバイダーマニュアルは、ACLSも、BLSも、結構好きです。

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