中年男性。数年前に大腸癌手術既往あり。現在椎間板ヘルニアによる痛みで、NSAIDs内服中。
1-2ヶ月前頃から、歩行すると100m程度で心窩部痛、両側顎下部痛がみられていた。疼痛出現後も歩行を続けていると、少し楽になるときもあり、休むとすぐに疼痛改善見られた。症状の出現はほぼ毎日であった。
相変わらず同症状が出現するため心配になり、かかりつけの外科を受診。腹部エコーにて胆石あり、これによる痛みか、NSAIDsによる症状が疑われ、上部消化管内視鏡を予約し帰宅。また、顎下痛に対して耳鼻咽喉科受診を勧めらたため、2日後近医耳鼻科を経て当院耳鼻科受診。エコー等が予定された。
その2日後の朝、胸痛・心窩部痛で覚醒、起床、冷汗あり、顎下部痛も伴った。改善せず、救急外来受診。
BT 36.1℃ HR 79 BP 162/114 SpO2 98%
V1-4でST上昇みられ、STEMIと診断、CAG施行し、左冠動脈前下行枝の完全閉塞認め、primary PCI、ステント留置し早期再灌流療法を施行しました。その後経過は順調でした。
8月からの症状は心筋虚血による労作性狭心症だったようです。危なかったです。心窩部痛は、やっかいです。顎への放散もくせ者です。かつて同様のケースで歯科を受診してしまった方もいました。いずれも、虚血性心疾患も頭の片隅にいれておく必要があります。後出しジャンケンですが、このような経験を皆で共有することが大事です。
循環器に限らず、その分野を専門としない者も、致死的となりうる病態を見逃さない視野の広さが求められます。人ごとではありません。気をつけましょう。
勉強になります。話には聞いていましたが、やはり顎が痛くなる人がいるんですね。
返信削除私の分野では腹痛の人を診た場合には忘れてはならない疾患です。
Kim先生、有り難うございます。
返信削除循環器医にとって、腹痛は大変苦手な主訴です(苦笑)。