心不全で入院中の高齢者。病状は改善傾向で退院間近。大部屋。ADLはベッドサイドへの移動がやっとできるか、できないか、くらいの方。食事はベッドをギャッジアップして自分で食べます。
ある日の夕食中。同室の他患者への用事で看護師が訪室すると、向かいのベッドでぐったりと斜めにもたれかかっている患者を発見。ベッドのテーブルには夕食があり、口の周りや、ベッドサイドには食べ物が付着、散乱していたとのこと。
反応に呼びかけなく、看護師は緊急ナースコールボタンで緊急要請。
看護師は、一見して窒息と思ったとのこと。頚動脈は触知
したとのことで、ベッドを平らにして、口腔内を除いたところ食物があったのでそれをかきだした。心電図モニター(ベッドサイドではなく、ナースステーションで見れる)がもともと装着されていた方で、ナースステーションでモニターを確認した他看護師、研修医らがやってきて、「徐脈傾向」との情報。早々に持参されたAEDを装着。AEDのモニター(モニター付きAED)で更に徐脈傾向になっており、相変わらず反応はなく、そして再度脈拍触知を試みたところ触れなさそう、ということで、その時点でCPR開始。AEDの解析が始まると、当然胸骨圧迫中断。ショック適応なし。CPR再開。その後、ACLS、気管挿管等も施行し自己心拍再開はしました。
看護師・研修医の皆さん、懸命な心肺蘇生行為をしてくれました。迅速な対処で感謝です。
しかし、何事も振り返りが重要です。
重症心疾患を有する高齢者ですので色々な可能性があり、病態を断定することは難しいですが、仮に窒息とした場合。後から見直してみると、窒息で意識消失しているのであれば、視認できる口腔内食物を書き出した後(たとえ脈拍触知できていても)すぐさま胸骨圧迫開始となるのでしょう。
初めに脈拍触知はできたそうですが(この判断も難しいですよね)、どこかの段階でPEAに移行したと思われます。この移行の判断は大変難しいと思われます。だからこそ、窒息で意識消失した場合は(異物排出の期待とともに)いつでも移行しうる心停止に備え胸骨圧迫を開始することが望ましい、ということが良く理解できます。
心肺停止と判断していない段階からAEDを装着してしまうことは推奨できることではありません。心電図波形を見たかったそうです。心停止の判断は心電図モニターではなく、身体所見による、ということは皆、頭では分かっているはずですが、とっさの危機的現場では発揮できないことが良く有ります。
ナースステーションで確認した心電図波形はVT,VFでなく、かつ臨床状況として窒息が疑わしい。このような患者が、仮に心停止であってもAEDを装着することは、胸骨圧迫中断の助長につながります。可能ならばマニュアル式除細動器の装着がベターです。まさにこの文献に示されていることにつながりそうです。
AEDの使用を考慮したときに、良く病態を考えて装着するか否かを判断せよ、、、と看護師には指導することは難しいでしょう(苦笑)。院内AEDの使い方についてはなかなか一筋縄にはいきません。
まあ、後からならなんとでも言えます。すいません。
難しい問題はあるものの、このような経験が成長の糧になります。
貴重な報告ありがとうございます。
返信削除やはり実際の現場ではモニター見たくなりますよね。難しいです。がモニター付きAEDが出てくるのはすごいですね!
色々な事例を皆で検討して良い蘇生をして行きたいですね。
Kim先生、有り難うございます。
返信削除みんなが多くを経験できるわけではありませんので、ひとつひとつの事例を共有できればよいですね。