2013年7月9日火曜日

CPR Quality 9:デブリーフィング

心停止イベント後のデブリーフィングは心肺蘇生術のパフォーマンス向上に大変効果的です。デブリーフィングでは、個人の行動やチームのパフォーマンスを振り返り、焦点を定めたディスカッションがなされます。施行されたCPRについての記憶がはっきりしているうちに早期にCPRの質を振り返ると、効果的です。院外心肺停止でも院内心肺停止でも活用し得るし、様々な形式のデブリーフィングが存在します。定期的に、例えば毎週デブリーフィングセッションを設けるような体制も効果的で、それにより、CPRのパフォーマンスが向上したり、院内心肺停止の自己心拍再開率が向上したとの報告があります。院内院外の既存の組織もこのデブリーフィングを効果的に取り入れることができます。デブリーフィングを施行する際には、実際に蘇生処置に関わったプロバイダーが議論に参加することが極めて重要です。
デブリーフィングは、構造化して議論がなされると効果的です。チェックリストを利用する方法もあります。

モニタリングデータをデブリーフィングに取り入得ることでより客観的な視点でアプローチすることができます。

2013年7月8日月曜日

CPR Quality 8: 過換気

過換気を避ける:

「換気回数毎分12回未満」「胸郭挙上は最小限」が推奨されています。

CPR中の陽圧換気は冠動脈灌流圧を低下させます。
換気回数が多かったり、1回換気量が多かったりすることによる過換気は蘇生現場では良く見られることです。
十分に血液を酸素化しつつ、かつ、循環への影響を最小限にすることが、CPR中の換気の目的です。

現行のガイドラインにおいては、換気回数は高度な気道確保(8-10/分)の有無や、患者の年齢・救助者の数(15:2, 30:2)、等に影響されます。他の推奨(胸骨圧迫100-120/分、人工呼吸は1秒など)に準じると、結果的に換気回数は毎分6-12回程度となります。

過換気の有害性についての動物実験の結果は様々のものが混在していますが、過換気が利益をもたらしたという研究は皆無です。

G2010の推奨は妥当であり、毎分12回未満の換気回数とし、陽圧換気の循環への影響を最小限にすることが推奨されます。

換気回数が過剰にならないように、メトロノームを使用することは有用です。



1回換気量は、視覚的に胸郭挙上が確認出来る程度以上に増やすべきではありません。陽圧換気は自己心拍下であっても、CPR中であっても、心拍出量を低下させます。CPR中において低めの1回換気量での換気はPaO2の変動とは有意な関連がありません。加えて、高度な気道確保がなされていない場合、陽圧換気は胃膨満、誤嚥を助長し得ます。CPR中の胸骨圧迫は肺のコンプライアンスに影響を与えますし、至適な換気圧は明らかではありません。CPR中の換気圧と換気容量の相関に関しては良く知られていますが、臨床的なデータが乏しいのが現状です。

一回換気量の過剰を防ぐ方策は確立されていませんが、より小さいバッグマスクを使用したり、マノメーターの使用、よく観察する、ことが挙げられます。



2013年7月6日土曜日

CPR Quality 7: リコイル

Full Chest Recoil: No residual Leaning

不完全なリコイルとは、主に傷病者の胸部にもたれかかることで、その拡がりを阻害するということです。
不完全なリコイルの臨床的アウトカムへの影響は明確ではありませんが、動物実験では右房圧上昇、脳灌流と冠灌流減少、心拍出量減少、左室心筋灌流減少と関連することが示されています。
複数の研究で、多くの救助者が頻繁にCPR中胸壁にもたれかかっており、不完全なリコイルを助長していることが指摘されています。胸壁へもたれることを最小限にすべきです。
また、胸骨圧迫を深くすると、リコイルが不十分になりがちです。背の高い救助者や踏み台を使用した時に、生じ易くなります。至適な深さを達成しつつ、リコイルをモニターすることが推奨されます。即ち、胸骨圧迫の(圧迫と圧迫の)間に胸部への圧を残さず完全に解除されていることを確認することが必要です。

Incomplete chest wall releaseとleaning、chest recoilとchest expansion、、、、
似たような意味の英単語のニュアンスの相違がわかりずらいです。。。

どなたか教えて下さい。。

2013年7月5日金曜日

CPR Quality 6: 疲労

胸骨圧迫は時間とともに質が低下していくことがよくありますが、救助者は質の低下の前に疲労を自覚しないことも多いです。G2010では2分毎の交代を推奨していましたが、胸骨圧迫の質には大きな個人差があります。10分もの間、質の高い胸骨圧迫をできる人もいれば、1分もできない人や、全くできない人もいます。フィードバックデバイス、特に視覚的なもの、の使用はある程度の効果が期待できます。
チームリーダーが、胸骨圧迫者をよく観察して疲労度をモニターすることを推奨します。疲労していたり、不十分な圧迫で、かつフィードバックを試みてもその質が改善できないなら、2分経過していなくても可能な限り早く他のメンバーに交代させるべきです。頻回な交代はCCFの低下につながり得るとする研究もありますが、適切なコミュニケーションと準備にて、交代は3秒以内に可能です。


普段、日常生活の中で、自分としては特に疲れていないつもりなのに、人から「疲れてるね」なんて言われると、ああ、みすぼらしいってことだよなー、老けたってことかなー、と思って若干ブルーになります。なので、あまり人には「疲れているね」とは言わないようにしています。

でもCPR中は、疲れてそうなら「疲れてるねー」と目ざとく指摘しなくてはいけません(笑)。

2013年7月4日木曜日

CPR Quality 5: 胸骨圧迫時の姿勢

胸骨圧迫は、胸骨圧迫者の姿勢に影響されますが、胸骨圧迫の至適な姿勢のコンセンサスはありません。
短時間での圧迫の質の差はないかもしれませんが、立位での胸骨圧迫は、踏み台の使用や立て膝による圧迫よりも労力が増えるように思われます。
踏み台を利用することで深さが改善され得ます(特に背の低い胸骨圧迫者)。従って、至適な高さで胸骨圧迫をすることがその質の維持に重要であり、そのためにはベッドの高さの調整をしたり、踏み台を利用したりすることが推奨されます。

まあ、当たり前といえば当たり前。
深く押せない受講生、特に小柄な女性とか、指導に困ることがあります。決定的な良き方法はあまりないです。ケースバイケースで試行錯誤で、その受講生に合った方法を模索します。


以前、当院のBLS for HCPに、心肺蘇生で有名なアリゾナ大学のKern教授いらっしゃったことがありました。そのとき、至適な圧迫のコツとして、膝間づいてのCPRの場合、両膝を傷病者の脇にぴたっと付けるくらい傷病者に近づいて圧迫することを強調していました。残念ながら、このコンセンサスには、その記載はありませんでしたー。

2013年7月3日水曜日

CPR Quality 4: バックボード

背板、ですね。

胸骨圧迫において、適切な深さを得るためには、下が硬い必要があります。
ガイドライン2010では「CPR中のバックボードの使用についてはエビデンスが不十分で,反対意見もある」とされ、「使用する場合は,CPRの開始が遅れないように注意し,CPRの中断を最小限に抑え,,」あまり肯定的なニュアンスではありませんでした。

このステートメントでは、「バックボードは至適な深さを達成するためによく使われており、救助者の労力も軽減する。可能な限り素早くバックボードを入れたり、硬い地面に移動したりすることを勧告する」と、若干肯定的な表現になったような気がします。
質の高い胸骨圧迫への意識の高まりでしょうか。


我々の普段のコースでは当たり前のように硬い地面や台の上でトレーニングしていますので、正直あまり意識していません。よろしくないですね。
たまには、柔らかいベッドの上でのトレーニングも交えることができるとよいですね。

ずいぶん昔、どこかのACLSコースで、患者の反応が無ければ、院内救急コール、たくさんの人、AED、救急カート、背板を要請すること、と教わった気がします笑 なつかしい。

2013年7月2日火曜日

CPR Quality 3: 胸骨圧迫の深さ

CPR Qualityに関するAHA Consensus Statementについてです。

最近の研究によると、胸骨圧迫の深さは成人で44mm以上が妥当と考えられますが、実際には救助者の圧迫の深さが十分でないことが多数報告されています。50mm以上の深い圧迫により除細動成功・ROSCの率が改善し、38mm未満の浅い圧迫であるとROSCや生存率の低下と関連したとの研究結果があります。

ただ、至適な深さは様々な要素に影響されるものと思われます。例えば、傷病者の体格、環境(マットレスの有無など)、或いは、速すぎる胸骨圧迫は、目標の深さ(5cm以上)に達する割合が低くなる可能性がある、ということもその1つでしょう。従って、「深さ」単独の、アウトカムへの影響を評価することには限界があります。



上記の「44mm」や「38mm」といった具体的数値の記載はG2010にはなかったように思います。
成人に関し、「44mm以上の深さで押す」ことが重要とのデータがあり、かつ勧告より浅い圧迫となるのが常、とうことだから、「50mm以上」で押すように促す勧告は妥当ということなのでしょう。

胸骨圧迫の深さの上限について、ERCでは60mmとする一方でAHAのG2010では上限は設けていませんでした。このstatementにも、深さの上限の記載はありませんでした。マネキンが破壊されそうな強い圧迫をコース中散見しますが、個人的には多少不安を感じることがあります(苦笑)。でも、リコイルがしっかりされているなら、介入する根拠はないですね。
また、小児に関してはデータは不十分であり、乳児、小児ともに、胸郭の1/3以上押すことを目標とするのが妥当、との記載にとどまります。