2010年11月1日月曜日

外科→耳鼻科→耳鼻科→循環器内科

中年男性。数年前に大腸癌手術既往あり。現在椎間板ヘルニアによる痛みで、NSAIDs内服中。

1-2ヶ月前頃から、歩行すると100m程度で心窩部痛、両側顎下部痛がみられていた。疼痛出現後も歩行を続けていると、少し楽になるときもあり、休むとすぐに疼痛改善見られた。症状の出現はほぼ毎日であった。
相変わらず同症状が出現するため心配になり、かかりつけの外科を受診。腹部エコーにて胆石あり、これによる痛みか、NSAIDsによる症状が疑われ、上部消化管内視鏡を予約し帰宅。また、顎下痛に対して耳鼻咽喉科受診を勧めらたため、2日後近医耳鼻科を経て当院耳鼻科受診。エコー等が予定された。

その2日後の朝、胸痛・心窩部痛で覚醒、起床、冷汗あり、顎下部痛も伴った。改善せず、救急外来受診。

BT 36.1℃ HR 79  BP 162/114   SpO2 98% 




V1-4でST上昇みられ、STEMIと診断、CAG施行し、左冠動脈前下行枝の完全閉塞認め、primary PCI、ステント留置し早期再灌流療法を施行しました。その後経過は順調でした。


8月からの症状は心筋虚血による労作性狭心症だったようです。危なかったです。心窩部痛は、やっかいです。顎への放散もくせ者です。かつて同様のケースで歯科を受診してしまった方もいました。いずれも、虚血性心疾患も頭の片隅にいれておく必要があります。後出しジャンケンですが、このような経験を皆で共有することが大事です。

循環器に限らず、その分野を専門としない者も、致死的となりうる病態を見逃さない視野の広さが求められます。人ごとではありません。気をつけましょう。

2 件のコメント:

  1. 勉強になります。話には聞いていましたが、やはり顎が痛くなる人がいるんですね。

    私の分野では腹痛の人を診た場合には忘れてはならない疾患です。

    返信削除
  2. Kim先生、有り難うございます。
    循環器医にとって、腹痛は大変苦手な主訴です(苦笑)。

    返信削除