2010年4月18日日曜日

昨日のTCP

中年男性。気分不良を主訴に近医診療所を独歩受診、脈拍が20bpmくらいしかなく、対応した先生が驚愕して、当院に慌てて転送してきてくれました。




完全房室ブロックで、補充調律が20-30bpm程と結構遅いです。血圧は110/くらいあり。つらそうではありますが、意識は清明です。著明なST変化は認めず、少なくともSTEMIはなさそう。直ぐに施行したちょい当て心エコーでも左室壁運動異常は認めませんでした。
症候性徐脈で、しかも完全房室ブロックであり、とりあえずTCPということで、新人後期研修医の先生にやって頂きました。パッドは、いわゆる除細動時と同じ位置に貼りました。とりあえず鎮静鎮痛せずに、出力を上げていったところ、50mAくらいまでは、「大丈夫です」。80mAくらいから、「結構来てます!」、100mA超えると、「先生、痛いです!」、140mAでようやくcaptureしたのですが、もはや「耐えられません!!!!」。
やむを得ず、TCPをoffとして、いつでも再開できるようなstand-by状態にしました。鎮静鎮痛剤を使用してTCPを再作動させることも考えましたが、その血行動態、呼吸状態への悪影響もちょっと心配だし、症候性徐脈といえど、最低限の循環動態を何とか保った状態だし、直ぐに経静脈ペーシングを入れる準備もできたこともあり、そのままHR20bpmの状態で早々にカテ室搬入としました。速やかに経静脈ペーシングを挿入して、一安心となりました。
ついでにCAGもしてしまいましたが、冠動脈に有意狭窄はなく、その他薬剤や電解質異常はど可逆的原因は明らかではありませんでした。恒久的ペースメーカーが必要そうです。

TCPの使用について、ACLSプロバイダーマニュアルには、「大部分の覚醒患者にはペーシング前に鎮痛薬を投与すべきである」「鎮痛薬を投与する必要がある」などと、よほど状態が悪い場合を除き、原則鎮痛薬を使用することを推奨しています。ACLSコースでもそのように指導しています。

ACLSコースと、現場での対応に乖離がないように、教育しつつ、自分でもそのような行動を心がけています。

しかし、その一方で、今回のような現場での対応。
後期研修医のon the job trainingの良い場面でありながら、循環器医としての、”まあ大丈夫でしょ。”の気持ちから、スタンダードな、ACLSプロバイダーに推奨されるような対応をしていない場面をお見せしてしまったことに、自分自身の矛盾さを感じました。
真似をされると、あまりよくないことでしょう。

循環器医とそうでない者で対応が異なってくることは当然のことではありますが、非循環器医や若い先生達に標準的な対応をして頂きたいと考えるのであるならば、自分が行って見せなければいけません。
そういえば以前も似たような記事かいていたみたい(笑)。反省不足(苦笑)。

2 件のコメント:

  1. 現場と原則は異なる事があります。安定と不安定は実際の現場では難しいですよ〜といつも言っています。

    この人は厳密にガイドラインに従えば、ペーシングしなくても良い(スタンドバイぺーシングは必要でしょうが)のでしょうから、正しい行動だったと思います。

    無理にガイドラインと一緒の治療をする必要はないと思います。

    私はいつも、以下のような事を言っています。

    専門の先生が来て、これと違う治療をしていたとしても、それが本当の治療です。今回勉強する事は我々素人が専門医が来るまで何とかするにはどうするのがベストかと言う事です。
    何でもガイドラインに従えば治療できるほど現場は甘くありません。

    気にせず先生の思う治療をされ、若い先生にも指導されたら良いと思います。

    逆にこういう風にしなさいと言うと、ガイドラインには、、、、と言って全然言うことを聞かない研修医は困りますね。

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  2. Kim先生、貴重なコメント有り難うございます。
    現場での数々の経験をされているからこその良質な御意見だと思います。
    すごいなあ、Kim先生。

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