2009年11月21日土曜日

不安定頻拍性心房細動

5-6時間前からの嘔気、嘔吐、気分不良で救急搬送された中年男性。血圧60-80/とショック状態で、心拍数190bpm前後とかなりな頻拍。ぐったりとした感じで重症感あり。
心電図は基本はQRS幅の狭い頻拍ですが、時にQRS幅が広くなります。


RR間隔は不整であり、P派も判然とせず、頻拍性心房細動が最も疑われました。QRS幅が広くなることろは変行伝導でしょうか。いずれにしてもこの頻拍が状態を悪くしている可能性が高く、不安定頻拍として同期下電気的cardioversionを試みました。二相性100Jでショックしましたが、一瞬洞調律に復すものの直ぐに心房細動に戻ってしまいました。念のため、もう一度150Jで試みましたが同様に直ぐに再発してしまいました。再発予防としてアミオダロン150mg/10分で静注しました。
またこの間、著しい代謝性アシドーシス(pH7.0)が発覚し、メイロンも併用しました。アミオダロン投与後、再度150Jでショックしましたが、今度は全く洞調律に回復しなくなりました。200Jに上げてショックしましたが、やはり一瞬も洞調律に戻らず、無効でした。
ただ、アミオダロンの陰性変時作用のためか心拍数は160-170bpmほどに低下傾向、アシドーシス補正も効いたか、血圧はやや上昇傾向80-90/、自覚症状も軽減し、著しい不安定状態からは脱してきました。心臓超音波検査で観察すると、左室収縮能は悪くなく、器質的異常は明らかではありませんでした。左房拡大なく心房細動も慢性なものではない可能性が高いと推測されました。血管内脱水もあり、補液を増量しました。ジギタリスと少量のヘルベッサーを投与し心拍数コントロールを試みました。循環動態は徐々に軽減改善し、数時間後には洞調律に回復しました。

その後アルコール多因歴などが明らかとなり、アルコール性ケトアシドーシスが病態の主と疑われました。アシドーシスと著しい脱水状態から頻拍性心房細動を続発し、状態がさらに悪化した、、、というようなシナリオの可能性が高いと推測されています。頻拍性心房細動による純粋な不安定頻拍ではなかったということです。臨床はシンプルにはなかなか行きません。本当に難しいです(汗)。
結果的には決して間違った対処にはなっていませんが、学びの多い経験でした。

1.不整脈そのもののみならず全体的な病態を見る習慣を忘れてはいけません、とまたまた再認識致しました。
2.アルコール性ケトアシドーシスという病態を学びました
3.頻拍性不整脈の改善においてもH's and T's(脱水、アシドーシス)の補正が重要であることを認識する良い例でした
4,アミオダロンの除細動閾値上昇作用の可能性を再認識しました

各項目についてはまた後日触れようと思います。

2 件のコメント:

  1. 脈拍数が150以上でも、もともと不整脈があれば他の原因である事も多いと言う事ですね。勉強になります。

    ちなみにビタミンB1やマグネシウムは低下していたのでしょうか?

    私だったら採血後にビタミンB1を入れちゃいます。

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  2. Kim先生有り難うございます。
    ビタミンはすぐに救急の先生が投与してくれました。Mgは正常範囲内でした。

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