とある日の未明。中年男性。妻と、自宅でテレビを見ていたら突然失神。2-3分で意識回復したそうですが、心配になり救急車要請。救急隊現着時意識清明、血圧110/60、PR100、SpO2 97%。当院救急外来搬送。バイタルサインは問題なく、採血データや、頭部CTも問題ありません。心電図も問題ありません。幸い、以前の心電図もあり、経時的変化もありませんでした。
対応した当直医は、帰宅させようとも思ったそうですが、念のため経過観察目的で入院させました。
入院7-8時間後。装着していた心電図モニターにて VFが確認されました。
看護師が駆けつけると、呼びかけに反応せず、あえぎ呼吸だったそうです。心肺停止として、CPR開始、AED装着、ショック作動するも戻らず、その後医師がかけつけ、ACLS施行、数回のショックの後にPEAを経て、自己心拍再開しました。
冠動脈造影は正常で、左室機能も正常、器質的異常は認めませんでした。
その他、Brugadaや、QT延長など、原因となる疾患は明らかではありませんでした。
VFのきっかけは、R on Tからtorsades de pointesでした。
Short coupled PVC variant of torsades de pointes なるものが疑われているようですが、この辺はかなり専門的な世界でしょう。
いずれにしても、今回の失神はこの心室性不整脈が原因であったものと思われます。
さて、この失神患者。救急外来の対応は難しい判断と思われます。
一般的に失神の原因として、起立性低血圧、神経調節性失神、心原性、(脳血管)が代表的ですが、心原性失神は最も予後不良と考えられていますので、その鑑別は重要となります。
日本循環器学会のガイドラインによれば、以下の因子を有しているほどリスクの高い失神、(つまり心原性)を疑い、慎重な対応をすべきとしています。
高齢者(65歳以上)、うっ血性心不全の症候、うっ血性心不全既往、心室性不整脈既往、虚血性心疾患、中等症以上の弁膜症、心電図異常、胸痛を伴った失神
今回のケース、上記の因子はひとつも当てはまりません。
強いて言えば、問診上、その失神が前駆症状を伴わない突然発症であったこと、が心原性を示唆させる要素だったと思われます。
失神は問診が極めて重要です。本人から、目撃していた人から、よーーく話を聞くことが必須です。
心原性を否定できない場合は、循環器医にコンサルトするか、入院させる等慎重な対応が安全です。
いつも勉強させていただいております.循環器を専門にしておりますが,救急はAMI以外はあまり診ません.経過観察入院させて心電図モニターをつけていた当直医の判断には感銘します.ちなみに教えてほしいのですが,この方の今後の治療は,①アミオダロン+ICD ②VPCに対するアブレーション+ICD ③その他 のどれになったのですか? 御教授いただけたら幸いです.
返信削除驚きました。
返信削除まったく基礎疾患のない、頻発するPVCに対しては、経過観察をしていますが、そのPVCが偶然R on Tになり、Vfもあるのですか?PVCが多ければその確率は高いように感じますが。
勉強になります!
返信削除この症例・・・私なら帰宅させてしまいそうです。
返信削除満床続きで転送ばっかりしている現状ではなおさらです。
その先に待っていたのはCPAですか・・・。危険な世界ですね。
今後の失神患者に対してよりいっそう気を引き締めなければと思わされる症例でした。
匿名さん、有難うございます。治療方針はまだ定まっていませんが、ICD植え込みは間違いないと思います。恐らく②になる可能性が高そうです。僕も専門家ではないので分かりません(笑)。
返信削除雪さん、有難うございます。仰るとおり、基礎心疾患のないPVCsは放置ですよね。。。ふつう。
Kim先生、いつも有難うございます。
consommeさん、有難うございます。本当に怖いですよね。お互い気をつけましょう。。。
当院は幸いアブレーションを行っていますので,可能な部位なら積極的にアブレーションでVPCを焼きに行くと思います.もちろんバックアップにICD植え込みは必要と思われますが.それでも no medicationになります.
返信削除Ku@Mさん、コメント有り難うございます。専門的御意見、勉強になります。御指導宜しくお願い致します。
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