2010年2月28日日曜日

個人的見解

ルックアップさんよりご質問を頂きました。

「循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン」1372ページの(5)で(だだし、院内CPAで、持続的にモニタリングされている症例に関しては、医師の判断で連続的なショックを行ってもよい)とありますが、これはどのような根拠があって連続ショックなのか教えてください。





鋭いご指摘です。よく読まれていて、感心致します。

循環器医の環境では、心電図モニタリングされている患者が目の前でVFになることが少なくありません。CCUや、或いはカテ室などが代表的です。そのような時に、first shockの後2分間の胸骨圧迫という通常のアルゴリズムから逸脱することは現実的にはあり得ます。
例えば、カテ中にVFになった場合、すぐ隣りに除細動器がありますので十数秒のうちにfirst shockを行えます。除細動できていないと判断出来た場合、2分待たずに(例えばジュール数を上げて)second shockを行ったりすることがあります。VF発症直後の超急性期であり、2分間の胸骨圧迫で除細動タイミングが遅れるより、より早い2度目のshockの方が良いかもしれない、、という考えです。(恐らく)エビデンスはない、現場の判断です。当然、通常のアルゴリズムを理解した上での判断です。勿論、High Quality CPRも忘れてはいけません。
このような判断が、特殊な状況下ではあり得ます、ということかなと推測しますが、いかがでしょう。

2010年2月27日土曜日

倉敷ライブデモンストレーション



倉敷ライブデモンストレーションに参加しています。
例年、光藤先生が淡々とほぼ全症例をこなしていましたが、今回は光藤先生以外の術者が多くを担当しています。光藤先生の健康上の理由のようで、少々心配です。次回以降の倉敷ライブは光藤先生はコースディレクターから降板し、今後ライブの術者もほとんどやらないとのことでした。
今回担当された他の術者の方も経験豊富な先生方でしたが、光藤先生の技術、経験、精神力の強さを逆に感じてしまいました。圧倒的な存在感、たいしたものです。
CTOのバイプレーンの考え方や、ランデブー法のtipsなど、勉強になりました。一症例一症例丁寧にディスカッションされ、映像もあまり端折りがなく、良いライブデモンストレーションだと思います。本日も楽しみです。

昨夜は、大好きな乙島しゃこをたくさん食べました。揚げしゃこ、ゆでしゃこ、お刺身。揚げしゃこは絶品ですが、刺身も甘くておいしかったです。その他の地魚の刺身や、タコの卵、タコの肝といった珍味系もおいしく、地酒がすすみました。
その後は、倉敷の一駅隣の温泉宿に泊まって、のんびり入浴しました。循環温泉のようでしたが、pH9のアルカリ性の湯でつるつるお肌になりました(笑)。

2010年2月19日金曜日

失神その②

虚血性心疾患を有し、PCI歴もある高齢者。朝新聞を読んでいる時に突然失神。前兆は無かった。2−3分で自然改善したが、救急車で某病院に搬送。詳細不明だが、点滴などして帰宅となったとのこと。
翌日当院受診。症状再発はなく落ち着いており、心電図も問題なく、





外来管理可能と判断し、検査をいくつか予約して帰宅。
その検査のひとつが、薬物負荷心筋シンチグラフィー。
ジピリダモールを使用し薬物負荷を行ったところ、間もなくpulseless VTとなり(!!)、検査室でCPRを行うはめになりました。AEDを要請し、胸骨圧迫をしている間に自然に洞調律に回復し、自己心拍再開しました。
その後準緊急CAGを行ったところ、冠動脈に高度狭窄あり、PCI施行しました。

今回の失神の原因が、心筋虚血→VTであったという証拠は有りませんが、その可能性は十分考えられます。

虚血性心疾患患者の失神、しかも、前兆ない失神。心原性を疑う要素あり、リスクは高いものと考えるべきであり、某病院での救急対応でとった”帰宅”の方針は、レトロスペクティブに見ると、リスクある対応だったかもしれません。幸い、結果的には問題は生じませんでしたが、一歩間違えると、院外突然死。。。。怖いです。

循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン

循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン がようやくHPで公開されました。

2010年2月17日水曜日

失神

とある日の未明。中年男性。妻と、自宅でテレビを見ていたら突然失神。2-3分で意識回復したそうですが、心配になり救急車要請。救急隊現着時意識清明、血圧110/60、PR100、SpO2 97%。当院救急外来搬送。バイタルサインは問題なく、採血データや、頭部CTも問題ありません。心電図も問題ありません。幸い、以前の心電図もあり、経時的変化もありませんでした。





対応した当直医は、帰宅させようとも思ったそうですが、念のため経過観察目的で入院させました。

入院7-8時間後。装着していた心電図モニターにて VFが確認されました。





看護師が駆けつけると、呼びかけに反応せず、あえぎ呼吸だったそうです。心肺停止として、CPR開始、AED装着、ショック作動するも戻らず、その後医師がかけつけ、ACLS施行、数回のショックの後にPEAを経て、自己心拍再開しました。
冠動脈造影は正常で、左室機能も正常、器質的異常は認めませんでした。
その他、Brugadaや、QT延長など、原因となる疾患は明らかではありませんでした。

VFのきっかけは、R on Tからtorsades de pointesでした。
Short coupled PVC variant of torsades de pointes なるものが疑われているようですが、この辺はかなり専門的な世界でしょう。

いずれにしても、今回の失神はこの心室性不整脈が原因であったものと思われます。

さて、この失神患者。救急外来の対応は難しい判断と思われます。
一般的に失神の原因として、起立性低血圧、神経調節性失神、心原性、(脳血管)が代表的ですが、心原性失神は最も予後不良と考えられていますので、その鑑別は重要となります。
日本循環器学会のガイドラインによれば、以下の因子を有しているほどリスクの高い失神、(つまり心原性)を疑い、慎重な対応をすべきとしています。
高齢者(65歳以上)、うっ血性心不全の症候、うっ血性心不全既往、心室性不整脈既往、虚血性心疾患、中等症以上の弁膜症、心電図異常、胸痛を伴った失神 

今回のケース、上記の因子はひとつも当てはまりません。
強いて言えば、問診上、その失神が前駆症状を伴わない突然発症であったこと、が心原性を示唆させる要素だったと思われます。
失神は問診が極めて重要です。本人から、目撃していた人から、よーーく話を聞くことが必須です。
心原性を否定できない場合は、循環器医にコンサルトするか、入院させる等慎重な対応が安全です。

2010年2月13日土曜日

週末

先週末はAHA ACLSを自施設開催しました。受講生30人を超える大規模コースでしたが、各インストラクター、スタッフの方々の献身的な働きで無事にコースが終了しました。特に今回参加頂いたインストラクターの方々は、かつての神奈川サイト時代に共に過ごした方が多く、大変懐かしく、そして黙っていても当然のように質の高いコースが展開できました(笑)。さすがです。いろいろな意味で大変嬉しく思いました。また皆でやりたいですね。

今週末はBLS-R、BLSを午前午後で開催しました。同日開催は、当施設的には初めての試みでした。コースとコースの間の時間が慌ただしかったですが、これまた献身的なインストラクター、スタッフの皆様のお陰で無事に運営できました。感謝です。気持ちの良い仲間達で、ちょっと夜は飲み過ぎました(笑)。

2010年2月10日水曜日

高齢者のCSM

安定したQRS幅の狭い頻拍に対して施行しうる「頚動脈洞マッサージ(CSM)」。頚動脈の動脈硬化から脳塞栓症等の合併症が危惧されますので、G2000ACLSプロバイダーマニュアルには「高齢者,さらには中年後期の患者に対してCSMを行う専門家はほとんどいない。」と記載されていました。その記載が非常に印象的で、自分としては、高齢者には”ほぼ禁忌”という認識でいました。
ACLSリソーステキストP132には、「高齢患者にはとくに気をつけ、除外基準に十分注意する」とか、「CSMの合併症は数多く報告されているが、除外基準に十分注意を払い、手技を慎重に行えば、高齢患者でも副作用や合併症の発現率が低くなる」との記載あり、気をつければ高齢者でも施行可能とのニュアンスです。
ちなみに除外基準とは、頚動脈雑音、脳卒中や一過性脳虚血発作の既往、最近の心筋梗塞、致死的心室不整脈といった記載があります。

自分の認識と少々ずれがありました。高齢者でも、上記除外基準が該当しなければ施行してよいんですね。
でも現場では自分は絶対やらないです(笑)。

TCPの電気的捕捉

症候性徐脈患者にTCPを装着し、出力を上げて、心電図上電気的捕捉を認めたものの、脈拍が触れない場合どうするか。
ACLSリソーステキストP122には、「心室の脱分極を伴う電気的捕捉に有効な心拍出量が伴わないことがあり、、、、、TCP開始から1-2分で起こることが多い」と記載されています。
「電気的捕捉に必要以上にペーシング出力を上げていくと血行動態的に有効な機械的捕捉に至る可能性がある」んだそうで、認識を新たにしました。英語では一度読んだはずなんですが(笑)。。。まだまだ読み込みが足りません。
非心停止状態なら出力を上げつつ、アトロピンや、ドーパミン、アドレナリンの使用を考慮する、そして頚静脈ペーシングの準備を急ぐ、といった感じでしょうか。

「電気的捕捉を伴うペーシングで触知可能な脈拍を維持できない時は、つねに胸骨圧迫を行う」とも書いてあります。心停止(PEA)に至ればこれは大変重要なことですね。

2010年2月9日火曜日

いまさらMONA

先週末のACLSコースで話題にでたこと。急性冠症候群のMONAの話。ACLSリソーステキストP196にはMONAの投与順はアスピリン、酸素、ニトロ、モルヒネ、であると書かれていることは以前このブログでも書きました。
ECCハンドブック2005 P28を見ると、MONAの投与順は酸素、ニトロ、アスピリン、モルヒネ、と明記されていました。
ECCハンドブック2008 P28には、酸素、ニトロ、アスピリン、モルヒネの順に記載されてはいますが、2005版と異なり"投与順"とは明記されていません。
書いてあることが微妙に異なるんですね。受講生は混乱しそうです。

我々の周囲では、アスピリンは酸素、ニトロより後に投与することが多い、といった意見が主流です。
リソーステキストの記載については、アスピリンを救急隊が所持していたり、救急箱に入っていたりと、日本より普及している背景の相違があるのかもしれません。

2010年2月7日日曜日

歯磨き

最近の心電図モニタのアーチファクトの原因は何?とのご質問をKim先生から頂きましたが、残念ながらわかりません。
お詫びに、原因が特定されているアーチファクトを提示します。





有名な、歯磨きアーチファクトです。300/分くらいで、素早い磨きかと思われます(笑)。

2010年2月4日木曜日

幅の広いQRS頻拍

肺塞栓で入院中の高齢者。
看護師からVT様の波形が出たと、担当初期研修医に連絡がありました。





確かに、一見、幅の広いQRS頻拍。
初期研修医は、研修医なりに考えた結果、上室性頻拍+変行伝導と解釈し、上級医にも連絡しなかったようです。。。。。。うーん。
VTです!!!と上級医に慌てて連絡してきてくれる初期研修医だと安心します。
優秀な人ほど、考えすぎてしまうのでしょうか。これをVTではなく、上室性頻拍と考えしまうことは、危険性を秘めた対処につながります。初期研修医にはシンプルに幅広いQRS頻拍=VTと教えてしまった方がよいかもしれません。

さて、この波形、先日と同様、やっぱりアーチファクト(ノイズ)です。矢印のところに元来の洞調律由来のQRSが重なっていると思われます。
結果的には、VTでなく、患者さんには何の問題も生じていないのですが、、二重の誤りが幸いでした(苦笑)。

2010年2月3日水曜日

日本循環器学会ガイドライン

日本循環器学会から、ガイドラインが新たに公開されました。

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)
急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン(2009年改訂版)
不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)

残念ながら、「循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン」はまだ公開されていません。

しあわせ

失神で入院した高齢者。心電図モニター装着していたらこんな波形が出ました。



VT?? モニターの自動解析は"V-FIB/TACH "すなわち「心室細動/心室頻拍」と解析しています。

VTが出たと思った担当医(非循環器医)は循環器科にコンサルテーションしてきました。「幅の広いQRS頻拍、起源がわからなければVTと考えよ、、」基本的かつ重要な考え方ですから、コンサルテーションに何の問題もありません。
ただ、循環器医としては、この波形を見れば一瞬にしてアーチファクトとわかります。このコンピューターの自動解析はいまいちですから、フィードバックする必要がありますね。
幅の広いQRS(らしきもの)のなかに、元来の洞調律の幅の狭いQRSが混在(赤矢印)していることがわかります。RR間隔はほぼ一定で、正常洞調律にノイズが重なっていることがわかります。



コンサルテーションしてきた先生は、救急にもたずさわる大変優秀な方でしたので意外でした。

自分も、他科の先生方からすると”当たり前!”というようなことを日々コンサルテーションさせて頂いていることを改めて認識します。皆、助け合ってより良い医療を提供できているのでしょう。お互い相談し合える今の環境は恵まれていると思います。感謝、感謝。

2010年2月2日火曜日


東京も久し振りに積もりました。

適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて

アミオダロンの適応外使用に関する件。
Heart View2010年2月号薬剤溶出ステント(DES)の特集の文献の一つ(On labelとOff label(適応内使用と適応外使用)加藤義紘、木村剛)に関連記事がありました。DESも現実的には適応外使用が多く行われています。

平成11年発行された「適応外使用に係る医療用医薬品の収扱いについて」において、
「外国において、既に当該効能又は効果等により承認され、医療における相当の使用実績があり、その審査当局に対する承認申請に添付されている資料が入手できる場合、既に当該効能又は効果等により承認され、医療における相当の使用実績があり、国際的に信頼できる学術雑誌に掲載された科学的根拠となり得る論文又は国際機関で評価された総説等がある場合、は臨床試験の全部又は一部を新たに実施すること
なく、当該資料により適応外使用に係る効能又は効果等が医学薬学上公知であると認められる場合には、それらを基に当該効能又は効果等の承認の可否の判断が可能であることがある、、、」

要するに、適応外(オフラベル)使用が必ずしも”否”というわけではなさそうです。ただ、保険償還されるか否かは別問題です、当然。

2010年2月1日月曜日

イングリッシュ


先週はCCT2010という学会で神戸に行きました。心臓カテーテル関係のかなり大規模な学会です。外国からの参加者も多く、公用語は英語です。みんなふつーに英語です。国際色豊かでした。色々と学んだことが多かったのですが、不慣れな英語だけに理解も半分、、、という局面も多々ありました。
循環器の世界では、このCCTのみならず、日本循環器学会はじめ、多くの学会や学術集会が公用語として英語を採用しています。かつては、英語が出来れば一つの長所になる、という感じだったでしょうが、今や既に英語は出来て当たり前、の世界になっているようです。英語が出来ることが前提になってきています。出来てプラスではなく、出来ないとマイナス。純日本人の自分としてはなかなか辛いところです。もっともっと慣れなくてはいけません。ということで、このブログも英語にすることにします。

うそです。