2009年2月21日土曜日

胸骨圧迫のみのCPR

2008年1月にMLにこんなメール出しています。この後早々にHands only CPRが発表されましたね。

人工呼吸なしで胸骨圧迫のみのCPR(Continuous Chest Compression; CCC)の有用性は以前から言われていました。G2005では、”最良のCPRは換気と胸骨圧迫をうまく組み合わせることであるが、一般市民が人工呼吸を施すことができない、或いは気が進まない時は胸骨圧迫のみを行うように推奨すべき(クラスIIa)”との記載になっています(G2005 P34)。30:2もエビデンスはなく、あくまでも専門家のコンセンサスなわけです(G2005 P33)。
 
2007上旬にLancetという一般的な臨床医がよく目にする医学雑誌に、CCCの有用性が示唆される臨床論文が日本から発表されました(SOS-KantoLancet. 2007;369:920 –926.)。 
さらに、2007年末には、一般的な循環器医が目にする機会の多い医学雑誌Circulation(AHA発行です)に、やはりCCCの有用性が示唆される臨床論文が2つ発表されました(Circulation 2007;116;2900-2907、Circulation 2007;116;2908-2912)。そのうちの1つは大阪発です。
いずれも、成人の心原性心肺停止に対しては(特に早期は)、CCCは従来の人工呼吸を含むCPRと同等か、或いはより高い蘇生率を期待できる、、、という概ね同じような結論です。
同じCirculationには、ガイドラインを改定したほうがよいのでは、、という論調のEditorial(Circulation. 2007;116:2894-2896.)が掲載されていますし、一方で、CCCのやりかたを解説・指導するような一般市民向けの記事(Circulation. 2007;116:e566-e568.)も掲載されています。
上記論文はいずれもG2000の15:2時代のデータですが、CCCがG2005の、即ち30:2のCPRよりも蘇生後の機能予後が良かったという動物実験の論文もCirculationに出ています(Circulation 2007;116;2525-2530)。

今後一般市民向け、或いはHCP向けのガイドラインがどう変更されていくのかは分かりませんが、少なくとも現時点では、上記のような情報が比較的大きな臨床データとともに目に付くような状況になってきています。しかも日本発のデータもあり、注目度も比較的高いかもしれません。特に循環器医が受講生として参加してきた場合に、上記記事を目にしているケースが少なくないと思われ、コース中にCCCに関する質問が今まで以上に出てくる可能性は十分考えられると思います。どのように答えるべきか、インストラクターは心構えが必要かもしれません。
 

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