2009年2月21日土曜日

AHA ACLSのメガコードケースA

昨年のできごと。

50代男性が胸痛、脱力とのことで救急搬送されてきました。意識清明、血圧100/ほどありましたが、12誘導心電図で広範なST低下と、aVRでST上昇を認めました。重症感漂う心電図でした。IV,O2しつつちょい当て心エコーしたら左室は右冠動脈領域しか動いていません。左冠動脈主幹部のAMIと確信。危機的状況と悟り、アスピリン投与と、念のためのDC/TCPパッドは装着したものの、服もそのまま、剃毛もせず、尿バルーンも入れず、とにかく早期再灌流を最優先と考え、一刻も早くカテ室搬入させました(当院は救急外来のすぐ隣にカテ室があります)。
カテ台に乗せ、大腿動脈にシースを入れて、動脈圧を出したら70/と低下しており、その直後、高度房室ブロックに移行。TCPを作動させ、出力をあげていたところ、意識消失、VFに移行しました。モニターで分かりにくかったのですが、TCPをoffにしたところ明らかにVF。そのまま150Jで除細動しました。すぐに胸骨圧迫を開始、モニターでは著明な徐脈~ほぼ心静止、意識なく、換気の合間の圧モニターで圧は出ず、心肺停止状態でした。ACLSしつつ、大腿静脈確保、PCPS(経皮的人工心肺)挿入。PCPS作動させ循環を保ち、CAG施行、左冠動脈主幹部閉塞で、ステント留置し、再灌流させました。その後かなり厳しい経過を経ましたが、何とか回復傾向、PCPSも離脱しました。まだ入院中ですが、後遺症なく独歩退院できそうです。
 
 ふと経過を見直したら、AHA ACLSのメガコードケースAの2つめのシナリオ(Mobitz2型AVblock→VF→asystole)とほぼ同じ展開でした。消化不良を訴える57歳女性は左主幹部のAMIだったのかもしれません(笑)。
 
ところで、以前、ACLSコースの際、心肺停止かあるいはその寸前と思われるきわめて不安定な病状の場合、PCPSをまず考慮するとの意見を主張する循環器医の受講生が複数いました。確かに当症例のようにPCPSは有用ですから、(PCPSをまわすか、まわさないかは別として、いつでもまわせる体制作りとして)人的余裕があるのであれば、通常のBLS/ACLSを施行しつつ早期から大腿動静脈の確保を試みるべきかもしれません。ACLSプロバイダーがPCPSをまわすなんてことは非現実的ですが、大腿動静脈の確保はできなくはないかもしれません。心肺停止だと、動脈、静脈の区別は難しいですが。。。。早期から大腿動静脈確保できていればPCPS導入は楽です。将来的に、ACLS Secondary SurveyのCに、大腿動静脈確保が入ったりして。

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