2009年10月31日土曜日

予想外

当直中、胸部絞扼感、呼吸苦で救急搬送された中年女性。バイタルサインは安定。心電図を記録してみると僅かなST低下を認めるも、著明な所見は認めず。


左回旋枝の急性心筋梗塞?すぐに心エコーを施行してみましたが、左室壁運動異常は明らかでなく、左室収縮は大変良好でした。?。このような時は大動脈解離や肺塞栓といった鑑別
が頭に浮かびます。
と思ったら、「先生、胸が苦しくなった時から左腕が動きづらいんです」との訴えあり。診てみると確かに不全麻痺がありそう。下肢は客観的にはほぼ正常に近いくらい動きますが、聞いてみると左足も少しへん、、と言います。客観的には発語もスムースですが、自覚的には少ししゃべりづらい感じもある、と言います。
脳卒中じゃん?。tPAも考慮しなきゃ。まずは頭部CT撮らないと。と思い、放射線当直に連絡。他患者の検査中とのことで少々待ち。脳外科にも連絡。その間、急性大動脈解離→脳虚血も疑い、エコーで出来る範囲で評価。心エコーで上行大動脈、大動脈弓、腹部大動脈に明らかなフラップなし。頚動脈エコーで総頚動脈にフラップなし。違うかな? そんな間に、徐々に麻痺が強くなり、左上下肢の麻痺が著明になってきて、構語障害も出現してきました。いそげー。
ようやく頭部CT撮影、病的所見なし、出血は認めませんでした。変な胸部症状があるだけに、大動脈解離の併発も十分に否定しておきたく、大血管CTも施行、解離はありませんでした。ちなみに肺塞栓もありませんでした。
虚血性脳卒中として、脳外科医に対応頂きました。

CT後幸いにも著明に神経症状が軽減し、結果的には、tPAは施行しませんでした。
胸部症状も知らないうちに治まっていました。

ところで、胸部症状はなんだったんでしょ?。わかりません。まぎらわしいです(苦笑)。

来院からCT撮影までに50分くらいかかってしまいました。初めから丁寧に診察していたらもうちょっと早かったかもしれません。普段、ほとんど心臓の患者しか診ていませんので、視野が狭くなってしまいます。心臓ばかりみているといけません。つねに全身を診る習慣を忘れないようにしないといけません。反省反省。

2009年10月30日金曜日

糖質制限

昨日の続き。糖質ゼロ、糖質制限。かつて、低炭水化物ダイエット、低インスリンダイエットなどが流行ったそうですが、それと同じ理屈でしょう。僕はダイエットには疎いので良く知りませんでした。

糖質、ブドウ糖に対する著者の考え方は以下の如くです。

・古来人類の主食は骨或いは骨髄であった。その後石器を開発したことで肉が加わった。いずれも糖質は含まれない
・その後、本来の主食にはない、糖質を多く含む物を食べたために、肥満、糖尿病などが発生した
・三大栄養素「糖質、脂質、タンパク質」。人の主要エネルギー源は糖質(グリコーゲン、ブドウ糖)ではなく、脂質(中性脂肪、脂肪酸、ケトン体)である。
・自然界の動物は通常は脂質をエネルギー源とし、非常時(狩りなど)に短時間のみ糖質をエネルギー源として使う。糖質の貯蓄量は少ない。
・脳の主要エネルギーはケトン体である。少なくとも、脳はブドウ糖しか使えないというのは誤りである。
・機械文明が発達し重労働がなくなった現在、エネルギー源としてブドウ糖を使う必要がない。今やブドウ糖はスポーツにしかつかわなくてよいエネルギー源である。
・ブドウ糖は赤血球などミトコンドリアを持たない限られた細胞のエネルギー源となるが、体内で作られる(糖新生)ので摂取する必要はない
・本来使わなくてよいはずのブドウ糖を1日中使わせられてる食生活をしているのが現代人。

などなど。
要は、本来多量にとるべきものではない糖質を(過剰)摂取することが、糖尿病やメタボリックシンドローム、肥満などの元凶となっている、と説いています。
ということで、なるべく糖分を減らすことを心がけてみています。ただ、多くのものに糖質が含まれているため、著者の推奨する糖質ゼロはとても無理です。
大好きなビールや日本酒にも勿論糖分が含まれているんですが、やっぱり飲んじゃいます(笑)。
糖質ゼロのビールも売っていますが、これはこれで添加物等が含まれていそうで、やや抵抗があります。

2009年10月29日木曜日

1日1食

新刊というわけではないのですが、ある方に教えて頂き読んだ本。釜池豊秋著『糖尿病の新常識 糖質ゼロの食事術』

うさんくさい部分も少なからずある(笑)のですが、結構、納得する部分もあったりします。
ダイエットに詳しい方は、よくご存知のことなのかもしれません。
かまいけ式糖質ゼロ食とは、

①糖質を摂らない
②食事は1日1回、夜だけにする

この2つを守るだけで、糖尿病は薬も、インスリンも必要なくなる、とのこと。自分は糖尿病ではないし、肥満でもありません。しかしながら検診によると耐糖能障害の素因がありそうなことと、最近、年なりに腹が出てきたので少し食生活を是正しなければと思っていました。そこでこの食事方法をちょっと試しに施行してみることとしました。

まず②について。著者の考えはざっと以下の如くです。

・野生動物の如く、空腹→活動→食→休養 が自然の摂理にかなった順序である
・野生動物は、生態系のフィードバックを受けるため過食が持続することはない
・野生動物に肥満はいない
・農耕や、各種道具を生み出し多くの食材を手にした人類は、食を生態系に規制されない唯一の生き物になった。食べたいだけ食べれる唯一の動物である。
・現代社会では、食後に休めるのは夜しかない。朝昼抜き、夜1食が自然の摂理にあった食事法
・朝食後インスリンが分泌され約3時間で食前の血糖値に戻る。しかし残ったインスリンの働きで食前より血糖が低下してしまい、その血糖低下で空腹感を感じるようになる。そこで昼食をとることになる。同じ理屈で夕方に空腹感を感じる。そして夕食をとる。即ち、朝食をとれば1日3回食べざるを得ないはめになる。→朝食を摂れば過食になりやすい、朝食は肥満のもと。


これまでは、腹もたいして減っていないのに、朝だからというだけで習慣的に朝食をたべたり、昼になったからというだけで習慣的に昼食をたべたりすることも少なからずありました。旨くもない病院の食堂の定食を文句いいながら食べたりして。
そんなことも手伝い、ちょっと始めてみました。1日1食生活。まだ僅か4日なのですが、それなりに耐えられるものだな、と感じました。
糖質についてはまた明日にでも書きますが、夜は糖質少なめの食事にしています。それでも肉も魚も食べてアルコールもかなり飲みますが、4日で3kg痩せてしまいました(笑)。腹も結構ヘッコンできました。あまりに急激な変化がでるので結構不健康な食生活なのかもしれません(苦笑)。
いつまで続けるかは、、決めてませんが、習慣になったら結構続くかもしれません。

2009年10月27日火曜日

急性心筋梗塞


この心電図、中年男性、急性心筋梗塞です。回旋枝の完全閉塞で、緊急PCIを行いました。昨日のST上昇(大たこ出現!(下記参照))がいわゆる”急性心筋梗塞”でなく、このST変化がほとんどないのが急性心筋梗塞。心電図って難しいです(苦笑)。

2009年10月25日日曜日

無駄遣い。

大事件です。今さらですが、ついつい、iPhoneを衝動買いしてしまいました(笑)。
2月にdocomoのSH-04Aを買ったばかりだったのに、、あまりの使い勝手の悪さに、つい(笑)。以上。

2009年10月24日土曜日

カテーテル挿入で患者死亡

カテーテル挿入で患者死亡...大阪医療センター

数日前の報道です。詳細は分かりませんが、重篤な患者で循環呼吸状態が極めて不安定となり緊急でPCPS(経皮的人工心肺装置)を挿入する方針に至ったかと推測します。その際カテーテル挿入中に大腿静脈を裂いて、大量出血を生じたのでしょう。

これは人ごとではありません。PCPSは、心肺停止に至った状態やその寸前で挿入することが多いです。少しでも余裕があれば心臓カテーテル室で透視で確認しながらの挿入としますので比較的安全に手技が行えます。しかし病状の緊急度やその時の設備の使用状況でどうしてもベッドサイドで透視なしで挿入することがあります。その場合は、カテーテルに先立って挿入するガイドワイヤーの挿入位置が正しいかどうか不安になることは少なくありません。誤ったワイヤー位置に沿って脱血、送血管(カテーテル)を挿入すると今回のような致死的事態に容易に陥ります。結構太いカテーテルですし。正しい大腿動静脈にワイヤーを挿入できたか否か、可能な限りエコーでワイヤーの位置を確認していますが、ワイヤー挿入の感触のみで判断しカテーテルを挿入してしまうこともあります。緊急度が高ければ高いほど迅速な挿入が不可欠になりますのでそのように挿入しがちです。

今回のケースも、恐らくはPCPSを入れなければすぐに死に至る極めて重篤な病状であったと推測します。ぎりぎりの状況の中で、最善の策を講じ、その過程の中で生じた合併症。これで、業務上過失致死容疑で大阪府警が捜査を始めたとのこと。。。。同じような業務をしている者としては、厳しい対応と思わざるを得ません。
現場を知るものでないとなかなか理解できないことと思いますし、ましてや一般市民には理解不能のことでしょう。報道の表現を見ると、病院側が当然のように悪く思えてしまいます。もっと中立に表現してもらいたいものです。
医療現場の正当性が証明されることを期待します。

今回のケースから、PCPSを挿入する時は可能な限り透視装置下で挿入することを徹底する必要があると再認識しました。

亡くなった方の御冥福をお祈り申し上げます。

2009年10月23日金曜日

アナフィラキシーショック

胸部大動脈瘤のfollowで造影CTを撮影した中年男性。今まで造影剤のアレルギーは全くなかったようですが、今回は造影剤投与後およそ3分程で嘔気、呼吸苦出現し、肺野で連続性ラ音著明、血圧測定困難となりました。SpO2も測定困難でした。アナフィラキシーショックです。自分はその場には居なかったのですが、居合わせた放射線科医や循環器後期研修医が対応しました。救急の医師に教えてもらいつつ、ソルコーテフ iv、輸液、エピネフリン筋注、H1,H2 blocker、エピネフリン吸入、グルカゴン等を投与、代謝性アシドーシス著明(pH7.17)でメイロンも使用しました。
何とか、循環、呼吸状態は回復傾向を呈し、事なきを得ました。よかったです。

自分だったら、どうしていたかなと想像しました。
先日ACLS-EPコースを受講したのに、もうすっかり忘れています(苦笑)。

ACLS Resource Textのアナフィラキシーの項をちょっと読み返しました。
高濃度酸素を投与します。上気道閉塞や重度の気管支攣縮により著しい呼吸不全に陥ることに備え気管挿管の準備をしておきます。早めの挿管を心がけることが重要です。挿管困難になったらかなり厄介です
エピネフリンは、全身的な症状を認める場合は全例投与します。エピネフリンは皮下注では吸収が遅いので、筋注がベターです。0.3-0.5mg投与し、臨床的な改善が見られなければ15-20分毎に繰り返します。
致死的徴候を呈している場合は、エピネフリンは静注します。0.1mgを5分程で静注します。頻回に繰り返す必要がある場合は、1-4ug/minで持続投与するとよいかもしれません。
補液は大量に必要かもしれません。1-2Lの急速投与、場合により4Lの急速投与が必要となるかもしれません。肺水腫のモニターも必要です。
抗ヒスタミン剤をゆっくり静注か、筋注します。
H2Blockerを経口投与か、筋注あるいは静注します。
気管支攣縮が前景に出ている場合は、β刺激薬吸入も考慮します。
ステロイドも静注しますが、効果発現には4-6時間要します。

その他考慮できる薬剤としては、重症低血圧に対するバソプレッシン、徐脈に対するアトロピン、β遮断薬内服患者などエピネフリンの効果が不十分な場合にグルカゴン(1-2mg IM or IV 5分毎)。
当患者もβ遮断薬を内服していた患者であり、グルカゴンを使ったようです。

自分としては幸い心カテの時など含め、ひどいアナフィラキシーに遭遇したことはありませんが、いつ遭遇してもいいように、知識の確認をする必要があると再認識しました。復習、大事です。

2009年10月22日木曜日

スキャンで軽々

AHA ACLSコースにインストラクター参加する場合、どうしても荷物が多くなります。ACLSプロバイダーマニュアル、AHAガイドライン2005、ACLSインストラクターマニュアル、ACLS Resource Text、ハンドブック、BLSプロバイダーマニュアル、場合によってはG2000のACLSプロバイダーマニュアルとか(笑)。プロバイダーマニュアルやインストラクターマニュアルも英語版と、日本語版両方だったり。コース中のみならず、コース後のミーティングに備えてあらゆる本をかかえていくこともありました(笑)。自分の知識や記憶力に不安があればあるほど荷物が多くなります。おまけにPCも必要だし。1冊1冊も結構ボリュームがあり、重いです!鞄がはち切れそうになったり、肩が抜けそうになったりすることも少なくありません。
キャリアーの付いた鞄は重宝します。


数ヶ月前に、小山龍介著「整理HACKS!」という本を読みました。


この中で、富士通のスキャナーScan Snap S1500を活用する方法が出ています。

紙という紙はみんなScan Snapでスキャンします。本や雑誌は裁断機で裁断し、一気にスキャンします。フィード機能もついていますし、大変早く、楽々、両面スキャンができます。書類も、書籍も、雑誌もみんなスキャンしちゃいます。全ての情報がPDF化され、PC内に格納されます。
その方法に感銘を受けて、自分もそれなりに実行しています。
ACLSプロバイダーマニュアル2005、2000、BLSプロバイダーマニュアル2005、2000、ACLSインストラクターマニュアル、BLSインストラクターマニュアル、ガイドライン2000、ハンドブック、ACLS Resource Textなど、PDF化してPCのなかに入っています。

これをMAC Book Airに入れれば、ばっちりです(笑)。ACLSコースの時はMAC Book Airを小脇に抱えて身軽に出かけます(ちょっとうそ)。

2009年10月21日水曜日

インフルエンザ陽性がーん。

先週末自施設で開催したACLSコース(インスト、受講生ともに他施設の方々も多く含んでいました)。当然コース前の受講生体調チェックはしていましたが、コース終了翌日、コースに参加していた受講生の1人が発熱し、インフルエンザA陽性になりました。がーん。
コース参加者がすべて濃厚接触者というわけではありませんが、一部の受講生、インストラクターはやはり濃厚接触者になり得ます。
情報を得次第、早急に全受講生、全インストラクターに情報提供しました。具体的対処は御本人、所属施設の判断にお任せしました。
今回は、たまたま発症した受講生が自分の施設の職員でしたので、情報把握が早く、かつACLSコース関係者のみならず、自施設のICD(ICT)が奔走、対処してくれて大変助かりました。
自施設以外の受講生が、コース後発熱してもその情報がコース主催者に伝わる可能性は低いと思います。その意味では、今回は不幸中の幸いでした。

インフルエンザが猛威を振るっているこの現状。
コース前の体調チェックは勿論ですが、それ以外にも、
①コース後インフルエンザ罹患が発覚したらコース主催者に連絡するようアナウンスしておく
②コース主催者として、コース直後に罹患が発覚した場合の対策方法を前もって検討しておく

ことが必要かと思いました。

2009年10月20日火曜日

伝説の神奈川ECCトレーニングサイト(ひとりごと)

日本ACLS協会の、日本にACLSを普及させた功績は非常に大きいと思います。その後の運営方針に賛否はありますが、個人的にはかなり評価しています。
かつて、協会所属の神奈川ECCトレーニングサイトなる組織が存在しました。知る人の中では、伝説化されています。個人的偏見では、ACLS教育において、世界一のトレーニングサイトであったと思います。本場のAHAも一目置いていた存在でした(これホント(笑)!)。臨床医学の各分野のプロフェッショナルが集い、自らの臨床経験を胸に、それでいて難しくし過ぎず、だれもが理解しやすいように、AHAのインストラクションスキルを周到しつつ、多くの受講生にノウハウを提供していました。AHAを凌駕するインストラクションとも言える面もあったかと思います。
救急医、循環器医、麻酔科医、心臓外科医、一般外科医、神経内科医、呼吸器内科医、、、、、偏った考えにならぬような広範な分野の者達が集っていました。
病態の奥深くを理解した上での、ACLSインストラクションは深みがあります。
多くのACLSコースを開催し、その度にコース後深夜までディスカッションを重ね、お互いスキルアップしました。
ある年の年間コース開催実績です(かつてはACLS協会のHPで公開していました。下記はそのデータです。)。プロバイダー数とコース数です。ACLS協会の中のランクですが、当然トップです。


その後神奈川ECCトレーニングサイトは諸事情で閉鎖、いまは一部は別のサイトが後継しています。
当時神奈川サイトで活動していたインストラクター達は各々の立場で今もなお活動しています。活動場所は変わっても、”神奈川魂”はみんな持ち続けているはずです。みんな根本は同じ方向で、日本の心肺蘇生教育に貢献しています

なんか最近混迷。つぶやき。

元々はACLSインストラクターに憧れて蘇生教育の世界に入ったのですが、色々な状況や成り行きで最近はBLSコース中心の生活です。それはそれで良いのですが、自施設で久しぶりにACLSコースを開催したところ、やっぱり深みがあっていいですね。
命を救うのはBLS、エビデンスが有るのはBLS。その通り。
でも臨床現場での経験を積んでいる者の感触では、ACLSも命を救うと感じる瞬間は多々あります。なんとかデータとして出せると良いのですが。
もっとACLSコースを展開していこうかと、思います。

2009年10月15日木曜日

心タンポナーデ

最近心タンポナーデによるPEAに2度遭遇しました。急速に心タンポナーデに陥る症例は心嚢液の絶対量は決して多くなく、心嚢穿刺もなかなか難しい傾向があります。心肺停止になり胸骨圧迫をしていたら尚更です。刺す時はどうしても胸骨圧迫を中断せざるをえませんし、とはいえその中断は最小限にしたいものです。2症例ともに結構苦労しました。
穿刺しなければ心肺停止からの脱却も難しいわけですから、割り切って穿刺できるまで胸骨圧迫を中断する方法が結局はいいのかな、なんて思います。一発で入れば10秒くらいで済むかもしれませんが、難渋する場合は分単位でかかる場合もあるでしょう。1分くらいの胸骨圧迫中断ならまだ許容範囲内かな?なんて、いろいろ考えますが、自分なりの結論は出ていません。
外科的に切開する手もあるでしょうが、急性大動脈解離なんかの場合は、大きくあけたら出血が止まらなくなり収集つかなくなる可能性もあるでしょう。内科医としては何とか穿刺で対処したいところです。
皆さんどうしているんでしょうか。PEA時の心嚢穿刺の良いtipsをご存知の方、教えて下さい。

2009年10月14日水曜日

当たり前のことですが

先日の急変の時、思ったこと。

心肺停止に初めに気づいたのは看護師でしたので、単体のAED(フィリップス社ハートスタートFR2)を装着しました。ショックの適応はなく(PEAだった)、胸骨圧迫を継続している時にマニュアル式除細動器(フィリップス社ハートスタートXL)が到着しました。
パッドは互換性があり、AEDのコネクターを抜いてそのままマニュアル式除細動器に連結させて使うことができますので、そのように使用することが通常です。
今回は、パッドとAEDはそのままで、マニュアル式除細動器の心電図リードを更に患者に装着して心電図波形をモニタリングしました。
その後のCPR中も、AEDは作動を継続していましたので、2分毎のアナウンスをしてくれて、良きタイムキーパーになってくれました。
人手が少なくて記録が係がいないとか、ストップウオッチが無い場合等は、ちょっとだけ役立ちます。


2009年10月13日火曜日

腹痛、嘔気、嘔吐

腹痛、嘔気、嘔吐で救急受診された高齢者。腹部手術歴、イレウスの既往もあるため外科の当直医が対応しました。心電図を記録したらST上昇しており循環器医に連絡がありました。



勿論急性心筋梗塞です。
胸部症状は全くなかったので、心電図を記録した外科の先生のセンスに感心しました。

2009年10月12日月曜日

つぶやき

一生懸命ベストを尽くしてもうまく行かないこともあります。良かれと思ってやったことが裏目に出ることもあります。

今日はついていませんでしたが、明日はもうちょっといいことがあるでしょう。

こくごのじかん

なおざり【等閑】
1.いいかげんにしておくさま。本気でないさま。おろそか。「−な練習態度」「子供のしつけを−にする」
2.ほどほどで、あっさりしているさま。

おざなり【御座なり】
いいかげんに物事をすませること。その場だけの間に合わせ。また、そのさま。「-を言う」「−な処置をする」

(大辞林より)

これ、常識ですか(苦笑)? いまさら、勉強になりました。

2009年10月11日日曜日

幅広いQRSの頻拍にアデホス

Up To Dateによると、幅広いQRSの頻拍にワソランやアデノシンを投与して頻拍が停止した場合は上室性頻拍を強く示唆する、と記載があります。しかし、これらの薬剤で停止する特殊な心室頻拍も存在しますので、完全な鑑別にはなりません。
そもそも非循環器医が幅広いQRSの頻拍に上記薬剤を投与すること自体極めて危険です。より重篤な事態に陥る可能性が十二分にありますので、確実に上室性であると確信が持てない場合は投与を避けるべきです。

循環器医としては、幅の広いQRS頻拍の鑑別目的でアデホスを投与することがあります。十分量のアデホスを、正しい投与法で投与しても、心電図上全く変化がない場合は心室頻拍であることを強く示唆します。

診断に迷った場合、自分としても稀にそのような使い方をすることはあります。しかし一度、投与直後心静止に移行してCPRをするはめになり、やっぱり安易にやるものではないと痛感したことがありました。数分間のCPRで何とか回復しましたが(苦笑)。

2009年10月9日金曜日

リドカインで停止するQRS幅の広い頻拍

幅の広いQRS頻拍を目の当たりにした時、不安定な状態であれば当然同期下電気的cardioversionです。安定している場合、AHA のアルゴリズムではアミオダロンが第一の選択肢となりますが、現実的には救急カートに入っていなかったり、諸々の事情でリドカインが使用されることも少なくありません。

この幅の広いQRSの頻拍は恐らくは心室性だろうが確信が持てない、、、。そこでリドカインを投与してみて、幸い洞調律に回復したら、”やはり心室性だったね!”と考えることが時々ありました。
改めてUp To Dateを読んでみると、”幅の広いQRS頻拍にリドカインを投与し頻拍が停止した場合は、心室性頻拍であることを示唆するが、確定できるわけではない。稀ではあるが上室性頻拍、特にAVRT(房室回帰性頻拍)はリドカインで停止することがある”と記載されていました。
ふーん、そうなんだ。初めて知りました。

2009年10月8日木曜日

過去の心電図

循環器医の方は読まなくてよい記事です(笑)。
動悸、胸部不快を主訴に救急外来に独歩来院した中年男性。血圧120/80程、心拍数200bpm。
12誘導心電図はRR間隔整のQRS幅の広い頻拍。ちょっとドキッとしますよね。
ACLSコースでは「上室性であると確信が持てなければ、心室頻拍として対処しましょう。」と指導しています。これは大変大事なことです。
一般的に、幅の広いQRS頻拍が上室性か心室性かの判断は循環器医にとっても難しいこともありますし、非専門医やコメディカルの方にとっては尚更です。難しいアルゴリズムを使った鑑別法もありますが、非専門医が覚える必要はありません。
そんな時、まず是非とも欲しい情報は以前の心電図です。この方の場合、、、ありました、過去の心電図!ヨカッタ(笑)。

洞調律ですが、確かに以前から右脚ブロックです。今回の心電図とQRSの形や極性は変わっていません。これで、今回の心電図は上室性頻拍+右脚ブロックと結論できます。PSVTか心房粗動の可能性が高そうです。
安心して”安定したQRS幅の狭い頻拍のアルゴリズム”に準じて対処できます。そこで、、バルサルバ手技を行って頂きました。が、びくともしません。アデホス10mgを急速静注しました。HR180bpmくらいまで低下しましたが、止まらず、また200bpm程に戻ってしまいました。20mgの急速静注をしたところ、洞調律に戻りました。
もとの洞調律波形と同じ波形です。めでたし、めでたし。今回の頻拍はPSVT+右脚ブロックだったということで、アブレーションをお勧めして、お帰り頂きました。
救急外来の初期研修医は多忙をきわめ、他の患者にかかりっきりで、この症例にはたずさわれませんでした。初期研修医にとってはそれなりに勉強になるケースだったので残念でした。
ひとりぽっちで、対処して少し寂しかったです(笑)。

2009年10月7日水曜日

出血

ACLSコースにおいて、Asystole/PEAで特に重要なH' & T'。
その中でも頻度が比較的多いHypovolemia。代表的な病態が出血です。
自分は循環器医ですから、出血性の疾患に関わる機会はあまり多くありません。
内因性疾患による出血では、その過程で何らかの自覚、他覚所見が生じるでしょうから、対策を講じることができるので心肺停止にまで至ることは少ないのでは?と密かに思っていました。ただし、大動脈瘤破裂などの大血管のトラブルは別ですし、勿論外傷も別です。

先日の急変は、十二指腸潰瘍からの出血でした。派手な下血もなく、吐血もなく、著明な自覚症状もないままに、心肺停止に陥ってしまうことに驚き、認識を新たにしました。

少し前には、入院中の方が、特発性の後腹膜出血による出血性ショックから心肺停止(PEA)にまで至ったケースがありました。この方も心肺停止になる少し前までは著明な訴えはありませんでした。

抗血小板薬・抗凝固薬が大好きな循環器医は注意が必要です。。。。




2009年10月6日火曜日

元気の源

最近急変が多いです。

早朝6時前。心筋梗塞で大部屋入院中であった高齢者が心肺停止になりました。病棟の心電図モニターがHR20bpm程の徐脈であることに気づいた看護師がベッドサイドに駆けつけると、意識なく、呼吸なく、脈拍触知 せず、心肺停止でした。すぐにナースコールで応援を要請、AEDを持って他の看護師が駆けつけました。AED装着したらショックの適応なし、CPRを継続しました。数分のうちに研修医、当直だった自分も到着。そのときはAsystoleでした。Critical conceptを意識したHigh Quality CPR、エピネフリン、アトロピンといった薬物投与、H' & T'による原因検索、、、。診療情報、状況、採血、エコー等の所見より、消化管出血による出血性ショックからPEA、Asystoleに陥った可能性が高いと思われ、輸血オーダーしつつ、輸液急速投与を施し血管内容量を是正することで自己心拍再開し、状態は落ち着いてきました。正に、ACLSコースのPEA/Assystoleのシナリオそのものでした。
勿論それなりにバタバタしましたが、チームとしてまずまず機能していたのではないかと思います。

医師は自分と初期研修医1人。看護師は入れ替わり立ち替わりでしたが4人。計6人が関わりました。自分はAHA ACLSインストラクターで、研修医と看護師1人がAHA ACLSプロバイダーでした。その看護師はAHA BLSインストラクターでもあります。残り3人の看護師は全てAHA BLSプロバイダーでした。うち、1人は最近更新コースを受講した方でした。
BLSインストラクターの胸骨圧迫は見事でした。適切な建設的介入も随所に見られ、大変心強かったです。他のプロバイダーたちの胸骨圧迫も勿論high qualityで、良きチームメンバーとして動いて頂きました。

AHAコースが全てではありませんが、たまたまAHAコースのプロバイダーが集まり、各々が良き働きを見せ,適切な蘇生処置が出来たことに、ちょっと感銘を受けました。
AHAコースの活動を続けていく元気の源になる出来事でした。

2009年10月4日日曜日

忘れちゃいけない喘ぎ呼吸

昨日の急変エピソード。初めに患者さんに遭遇したのは新人看護師でした。ノーマークの患者さんだったのでびっくりしたそうです。
訪室したら意識なく、脈もなかったけど、呼吸があったので、混乱してしまい、血圧測定や酸素飽和度の測定なんかを考えてしまったそうです。すぐさまCPRに取りかかれなかったと、後で、残念そうに言っていました。

最近AHA BLSコースを受講してくれた看護師だったんですが。。。。

脈は触れなくとも、呼吸が残存することは良く有ります。多くの場合が”喘ぎ呼吸”になっています。BLSやACLSコースで喘ぎ呼吸を意識させるシナリオを織り込むことは重要だと思います。

G2005 のAHA BLSのDVDだと、サラッと流れちゃいますからね。

この新人看護師さんは、喘ぎ呼吸は2度と忘れないことでしょう。

2009年10月3日土曜日

船頭多くして、船、山に登る

大部屋入院中の全くノーマークの患者が急変しました。幸か不幸か日中の、人の多くいる時間帯だったため複数の医師を含め多くの人が集まりました。しかしながら、皆が勝手なことを言って、勝手なことをやって、、、、全くもってまとまりがなかったそうです。僕自身は残念ながらその場にはいませんでした。
しばらくの蘇生行為の後何とか自己心拍再開しましたが、その後、その蘇生行為に参加していた後期研修医は、リーダーが不在であった旨感想を漏らしていました。

やはりチームダイナミクスは大事です。

AHA ACLSのメガコードテストチェックリストには、”チームメンバーにCPRの役割を適切に割り当てる”といった項目がありますが、勿論それも大事ですが、その前に”自分がリーダーである”ことを周りにアピールすることが大事であることを感じた一件でした。
いつも同じチームで行っている場合や、明らかなるリーダーが存在する場合は、あまり問題になりませんが、そうでない場合はより重要になります。

2009年10月2日金曜日

フェイスシールドキーホルダー



おなじみのLaerdalのフェイスシールド。みんな持っています(笑)。
でも、continuous compressionの時代、フェイスシールドの使用頻度は極めて低いと言えます。


最近、中身のフェイスシールドは除けて、こんな物を入れています。じゃーん。


広げると、感染予防の手袋です。手袋って結構コンパクトにたためます。
心肺蘇生術以外でも医療従事者としては手袋を使用することは日常茶飯事です。常に携帯していると、予想以上に便利で、フェイスシールドの使用頻度とは桁違いです。

2009年10月1日木曜日

いまさらteam dynamics

心肺蘇生術、特に二次心肺蘇生術はチームで行うことが必須ですし、チームワークが重要なことは本当に理解できます。G2000からG2005になった頃、初めてプロバイダーマニュアルを見たとき、チームダイナミクスという概念の存在に目から鱗でした。

AHA ACLSプロバイダーマニュアルには、チームダイナミクスにより”蘇生の成功率を何倍にも高める”と書いてあり、またAHA ACLSのDVDでも"蘇生チャンスが高くなる"と言っています。

たぶんそうでしょうけど、、、でも、本当にそう言い切るほどの根拠はあるのでしょうか??

ガイドラインに特に書いてなさそうだし、CoSTRにも書いてなさそう(書いてあったらご指摘ください)。

なぜ突如?チームダイナミクスという概念が出てきて、なおかつ大胆な言い切りになってるんでしょう。

Up To Dateには、航空業界の危機管理を、麻酔科医が医療界に応用した、と記載されています。それにより蘇生行為中の混乱が減少し、患者管理が改善したとのことです。3つの文献が引用されていました。

・Crisis resource management training for an anaesthesia faculty: a new approach to continuing education.(Med Educ. 2004;38:45-55.)
・Emergency medicine crisis resource management (EMCRM): pilot study of a simulation-based crisis management course for emergency medicine.(Acad Emerg Med. 2003;10:386-9.)
・Crisis resource management among strangers: principles of organizing a multidisciplinary group for crisis resource management.(J Clin Anesth. 2000;12:633-8.)

原文は読んでいませんが、どうやら”蘇生率を何倍にも高める、、”と言い切るほどの確たるエビデンスではなさそうです。
根拠となる論文などご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。麻酔科の先生が詳しいのかな??