数日前の報道です。詳細は分かりませんが、重篤な患者で循環呼吸状態が極めて不安定となり緊急でPCPS(経皮的人工心肺装置)を挿入する方針に至ったかと推測します。その際カテーテル挿入中に大腿静脈を裂いて、大量出血を生じたのでしょう。
これは人ごとではありません。PCPSは、心肺停止に至った状態やその寸前で挿入することが多いです。少しでも余裕があれば心臓カテーテル室で透視で確認しながらの挿入としますので比較的安全に手技が行えます。しかし病状の緊急度やその時の設備の使用状況でどうしてもベッドサイドで透視なしで挿入することがあります。その場合は、カテーテルに先立って挿入するガイドワイヤーの挿入位置が正しいかどうか不安になることは少なくありません。誤ったワイヤー位置に沿って脱血、送血管(カテーテル)を挿入すると今回のような致死的事態に容易に陥ります。結構太いカテーテルですし。正しい大腿動静脈にワイヤーを挿入できたか否か、可能な限りエコーでワイヤーの位置を確認していますが、ワイヤー挿入の感触のみで判断しカテーテルを挿入してしまうこともあります。緊急度が高ければ高いほど迅速な挿入が不可欠になりますのでそのように挿入しがちです。
今回のケースも、恐らくはPCPSを入れなければすぐに死に至る極めて重篤な病状であったと推測します。ぎりぎりの状況の中で、最善の策を講じ、その過程の中で生じた合併症。これで、業務上過失致死容疑で大阪府警が捜査を始めたとのこと。。。。同じような業務をしている者としては、厳しい対応と思わざるを得ません。
現場を知るものでないとなかなか理解できないことと思いますし、ましてや一般市民には理解不能のことでしょう。報道の表現を見ると、病院側が当然のように悪く思えてしまいます。もっと中立に表現してもらいたいものです。
医療現場の正当性が証明されることを期待します。
今回のケースから、PCPSを挿入する時は可能な限り透視装置下で挿入することを徹底する必要があると再認識しました。
亡くなった方の御冥福をお祈り申し上げます。
0 件のコメント:
コメントを投稿