2009年12月17日木曜日

恐怖のベプリコール

心房細動を有する高齢男性。心不全の既往あり。リズムコントロール目的にこれまでいくつかの抗不整脈薬が処方されたようですが、無効で、最近ベプリコールが処方開始されました。その2週間後、繰り返す失神を主訴に救急受診されました。著明なQT延長、Torsades de pointes(TdP)による失神でした。



ベプリコール(ベプリジル)は持続性心房細動に適応が認可されています。しかし副作用としてQT延長によるTdPの出現が少なくありません。心房細動への投与にて約1%の頻度で出現するとされますが、基礎心疾患や心不全を有する場合は5%にも及ぶとのデータもあります。しかも、不整脈専門家が慎重に用量調節や心電図チェックをしていても、そのくらい生じるということですから、非専門家が不用意に処方すると、恐らくもっと高率に出現するものと推測します。抗不整脈薬による心房細動のリズムコントロール(洞調律に戻すこと)は生命予後改善のエビデンスはありません。生命予後の改善が明らかでない治療で、致死的不整脈が出現するというのはやはり問題です。よほどの専門家以外はベプリコール処方を避けた方が無難なような気がします。

2 件のコメント:

  1. 勉強になりました。

    QT延長を起こす薬剤は結構あるので注意が必要ですね。

    気をつけます!と言っても私はこの薬の名前すら知りませんでしたので大丈夫です(^.^)。

    返信削除
  2. Kim先生、有り難うございます。当院のそばには某大学病院があり、そこの循環器教授の専門は不整脈です。その大学病院かかりつけの患者様が、抗不整脈薬によるQT延長、TdPで、当院の救命センターに時々搬入されてきます。
    研究会などでたまにその教授とお会いすると、「いつもお世話になってます!」と言われます(苦笑)。

    返信削除