2009年5月13日水曜日

TCP追記

ACLSコースにおいて、徐脈の管理の一つの肝はTCP(経皮ペーシング)です。症候性徐脈の場合はTCPをまず用意し、アトロピンが効果が無いようならすぐに作動させましょう、特に2度房室ブロック(Mobitz2型)や3度房室ブロックの場合はアトロピンは効果が期待できないため遅れることなくTCPを作動させましょう、とされています。
しかしそのエビデンスは明確なものはないようで、例えば、院外の症候性徐脈に対するTCP使用は効果が見いだせなかったとするsystematic reviewResuscitation. 2006:70:193-200. )もあるようです(まあ、TCPの症候性徐脈へのエビデンスなんて、アウトカムの設定も難しいような気がします)。
特に循環器医は徐脈には慣れており、いくら症候性徐脈でも、たとえ3度房室ブロックでも、経過や病態、補充収縮の程度やQRS波形などで徐脈としての重症度は推し量れることが多いし、経静脈ペーシング挿入にも長けており、TCPまで使用することは少ないのではないかと思います。循環器医へTCP使用を啓蒙することは結構難しいと思いますが、昨日お書きしたようなケースや、広範前壁心筋梗塞の合併症として生じうる高度ブロックなどは補充収縮が乏しく重篤な展開になることがしばしばです。そのような病態を想定させてTCPの有用性をお伝えすることが多いです。massとしての有用性は証明できなくとも、大きな恩恵を被る症例があることは間違いありません。
AHA/ACCのSTEMIのガイドライン(http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/110/9/e82)でもTCPは比較的広い範囲でclass Iの適応とされています。ガイドライン様がおっしゃっているから、TCP使いましょう、とお伝えすることも効果的な場合もあります。

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