2009年7月8日水曜日

cardioversionという言葉

cardioversionに該当する日本語はないように思います。リーダーズ英和辞典で引くと、『(医)電気的除細動、カルジオバージョン(不整脈治療のために電気ショックを与えること)』と記載されています。
一般的には頻脈性の不整脈を電気的に元の調律(多くの場合は洞調律)に戻すことを指すと思われます。心室細動に対する除細動(defibrillation)とは区別されるでしょう。
ただ、このcardioversionという言葉自体やや幅がある表現のように思います。
AHA G2005ガイドラインやACLSプロバイダーマニュアルではsynchronized cardioversionという表現もあれば、単にcardioversionという表現もあります。cardioversionの中に"synchronized;同期”をも含んだ意味で使われることもあれば、含まないような表現をされることもあるということと解釈できそうです。
また、synchronized shocks(cardioversion)とも記載されています。ちなみに、unsynchronized shocks(difibrillation)の記載もあります。
ACLS Resource Text には、electrical cardioversionとか、synchronized cardioversionとか、単にcardioversionとかやはりバリエーションがあります。”shock”を使った記載もあり、shock自体にエネルギーは問わないように解釈でき、より丁寧に表現すれば、
high energy unsynchronized  shock =defibrillation
low energy synchronized  shock =cardioversion
こんな感じでとらえることもできます。
The Textbook of Emergency Cardiovascular Care and CPRもほぼ同様です。shock therapy(cardioversion or defibrillation)と表現され、更に、
cardioversion=synchronized electrical shock
difibrillation=unsynchronized  shock
とあります。synchronized cardioversionの表現もあります。
AHA/ACC/ESCの心房細動のガイドラインには、direct-current cardioversion、R-wave synchronized direct-current cardioversion、単なるcardioversionなどのバリエーションです。
その他、direct-current countershock、external countershockなどの表現もありました。
UP TO DATEは以下の記載です。
Cardioversion is the delivery of energy that is synchronized to the QRS complex, while defibrillation is nonsynchronized delivery of energy, ie, the shock is delivered randomly during the cardiac cycle.
やはりcardioversionの中にはsynchronizedの意味が含まれているようです。でも
synchronized external DC cardioversion という表現もあります。
一方で、薬物的に調律を戻す方法として、 pharmacologic cardioversionなる表現もあります。cardioversionは"electrical"という意味を含んだ場合と、そうでない場合、即ち単なる調律変換という意味である場合があるということでしょう。
前出のAHA/ACC/ESCの心房細動のガイドラインでもpharmacologic cardioversionという言葉は出てきて、Cardioversion may be achieved by means of drugs or electricalshocks.(カルディオバージョンは薬物的に或いは電気的ショックにより成し得る)、と単に調律変換を指している文面もあります。
なんだか、よくわからなくなってきました(笑)。

まとめますと、Shock therapy(direct-current countershock、external countershock)は、synchronized shock(=cardioversion)とunsynchronized  shock( =difibrillation)に分けられて、cardioversionは狭義には”elctrical(電気的に)”、”synchronized(同期下に)”調律を戻すこと、と解釈できます。ただ、電気的に調律を戻すこと、或いは同期下に調律を戻すこと、或いは単に調律を戻すこと、を指す場合もある、ということでしょうか。


2 件のコメント:

  1. 興味深い記事ありがとうございます。

    英語って時々「女のおばあさん」みたいな事ありますよね。

    でもそれだけ、除細動とカルディオバージョンを区別していると言う事でしょうか。日本でも、電気ショックと同期電気ショックと言うようになっていますもんね!

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  2. kekimura99さん、有り難うございます。
    「女のおばあさん」はいいたとえですね!!

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