2009年8月31日月曜日

院外VF

路上で倒れていた中年男性。通りがかりの女性(看護師)がCPR(Hands Only)を施行。救急隊現着時VF。除細動施行し、2分のCPRの後自己心拍再開。当院搬入時は意識レベルはほぼクリア。バイタルサインは安定し、心電図では2,3,aVFでST上昇。緊急冠動脈造影施行、右冠動脈は閉塞しており、primaryPCIを施行しました。全く後遺症ない回復が期待できます。

以前は、このような素晴らしい救命の連鎖が行われると嬉しくて興奮したものですが、最近は頻度も増え、珍しいことではなくなり、以前より冷静に見ることができます。

とは言っても、バイスタンダーCPRのなされない心肺停止例は山のように搬入されてきます。
今回のこのような事例を元気の源にして、地道な心肺蘇生教育活動は続きます(笑)。

2009年8月30日日曜日

横浜スタジアム転落事件

8月27日プロ野球横浜対阪神の試合で観客が外野スタンドから転落。救急車で病院に搬送されましたが、29日にお亡くなりになったそうです。4-5mの高さから頭から落ちたとのこと。泥酔されており、約1mのフェンスを乗り越えての転落だそうで、自業自得とも言えますが、気の毒ですね。御冥福をお祈り致します。

さて、スポーツニュースで転落直後の映像が流れていたのですが、傷病者はぴくりとも動かなかったように見受けられました。係員らにそのまま担架にのせられ、退場していきました。
中日新聞には、”応急処置をした横浜球団のトレーナーは「心肺停止で意識がない状態だった。心臓マッサージなどで心臓と脈拍が戻ったところで救急隊員に託した」と説明した。”と書かれています。
転落直後に心肺停止に陥っていた可能性がありますが、どうだったんでしょうか。頚髄損傷から心停止もありえますね(参考:プロレスラー三沢選手の死因  1    2 3)。その場ではなんの処置もされていないように見えました。
まあ、正確な情報が分からないのであまり云々言えませんが、初期対応に少し疑問を抱いた映像でした。

CPR後一時意識回復したとの情報もあるようですが、これもどこまで正しい情報なのかわかりません。

2009年8月29日土曜日

心筋梗塞早期診断

心筋トロポニンの新しい高感度アッセイを用いて、胸部症状を訴えて救急外来を受診した患者の心筋梗塞の診断率を調べたところ、従来の心筋マーカーより精度が高く、特により早期(3時間以内)の診断が可能となり得る(NEJM2009;361:858-67)、とのこと。
実用化されれば、急性冠症候群の診断に迷うことがより少なくなりそうですね。
医学は本当に日進月歩です。

第4回JES 慈恵医大 大木隆生 バッチグー!


昨日は第4回Japan Endovascular Symposium(JES)に参加致しました。1日のみの参加でしたが、AAAやTAAに対するステントグラフト、下肢動脈や頚動脈に対するステント治療など色々な学びを得ました。大木先生は朝から晩まで大活躍でそのバイタリティーには感服致します。大木節も健在でした(笑)。外科医不足が社会問題化していますが、大木先生率いる慈恵医大外科学教室は新入医局員24人とのことで大盛況だそうで、その求心力には目を見張るものがあります。良き外科医、血管外科医が続々排出されればよいと思います。僕も血管外科には憧れるなー、入局しようかなーなんて思ったりして(時既に遅し!)。
一点、循環器医として、頚動脈ステントライブを拝見していて感じたこと。大木先生ほどの経験豊富な卓越した血管外科医、血管内治療医でもやはり厳しい狭窄の複雑病変に対する014ワイヤーのデバイス選択や操作に関してはそれほど精通していないように見受けられました。このへんは冠動脈インターベンションでは日常茶飯事のことであり循環器医が一日の長が有りそうです。循環器医として全身の血管病変に対する血管内治療に貢献できる部分は大いにあると実感しました。

そういえば、こんな記事もありました。まさに、小倉の横井先生のおっしゃるとおりです。

2009年8月28日金曜日

循環器医も脳梗塞tPA

循環器専門医の試験が先日あったのですが、受講した先生に聞いたところによると、脳梗塞に対するtPA治療の適応についての問題が出たそうです。循環器医も知らなくてはいけないことみたいですね。

2009年8月26日水曜日

房室ブロックとアトロピン

昨日の完全房室ブロックの件。心電図が小さくて見えないかもしれませんが、来院時の心電図は心室レート(QRS)は30/分ほど、心房レート(P)は75/分ほどでした。アトロピン0.5mg IV後、心室レート(QRS)は20/分ほど、心房レート(P)は100/分ほどになりました。心房レート(P)が上がったのはアトロピンの影響でしょう。なぜ、補充調律(心室レート)が下がったのでしょう。単に、病状が自然に悪化していった結果なのでしょうか。

G2000ACLS プロバイダーマニュアルには、”アトロピンは3度房室ブロック、広いQRS幅の心室補充調律やMobitzII型の2度房室ブロックには適応はない。アトロピンは心房レートを速め、房室ブロックを悪化する可能性がある。”と書かれています。確かにアトロピンにより2度が3度になったり、高度ブロックの伝導比が低下したりすることはあると思われますが、心室補充調律への悪影響はないのでしょうか。

上記の補充調律(心室レート)の低下にアトロピンが関与していることはあり得ないのかな?と思って手元にある本などを調べてみていますが、まだ結論がでません。だれか教えて下さい。心臓生理学の理解が浅いですから(苦笑)。

たまには徐脈。

ふらつきとのことで受診された中年男性。やや徐脈とのことで循環器後期研修医が対応、
来院時血圧80台、心拍数50前後だったらしいのですが、12誘導心電図を記録してみると完全房室ブロック。
この時点では心拍数30/分前後となるも、自覚症状は強くなく、アトロピン0.5mgIVし、そのまま心エコーを施行。左室収縮は良好でSTEMIは否定。その後目の前で一度失神。意識清明に回復するも心拍数20/分前後。
慌てて除細動器を取り寄せるも、TCPのケーブルを忘れて、取り付けられず。結局心拍数20/分のままカテ室に搬入。この時点で僕も合流。
経静脈ペーシングを挿入準備をしつつ、ようやくTCPを装着、100mAほどでペーシング可能となったが、激痛を訴え、耐えきれず一旦中断。鎮静剤を用意したものの、すぐに経静脈ペーシングを挿入できたため、結局使用せず。

結果的には大きな問題となりませんでしたが、危うい橋をわたっています。

完全房室ブロック、特に補充調律が幅広いQRSの場合は油断できません。症候性ならなおさらです。心筋梗塞の有無を評価することも大事ですが、まず最優先にTCPを準備することが安全です。アトロピンの効果は期待できません。後期研修医には色々フィードバックしました。

一般的にTCPが本当に必要となる時はかなり切羽詰まっている時であることが多いですから、日頃からその操作に慣れていないと、肝心な時にうまく扱えないということが多いです。
この後期研修医は1−2年前にAHA ACLSコースを受講しているんですが。
いろいろな意味で考えさせられる出来事でした。



Cardioversionにおける抗不整脈薬の役割

8/23の記事と関連したことです。
amiodaroneはじめ、抗不整脈薬は除細動もしくはcardioversionの閾値へ影響があります。Up To Dateを見てみると、

Lidocaine(リドカイン) 上昇もしくは不変
Quinidine(キニジン)     上昇
Phenytoin(アレビアチン)上昇
Amiodarone (アンカロン)  上昇
Flecainide(タンボコール)上昇
Bretylium                              低下

だそうです。多くの薬が閾値を上げるんですね。ちなみにBretyliumは日本にはない薬です。
ACC/AHA/ACCの心房細動のガイドラインを見てみると、Pretreatment with amiodarone, flecainide, ibutilide, propafenone, or sotalol, which may also prevent recurrent AF.(ClassIIa)だそうで、やはり上に出てきた薬剤は再発予防の薬効が主のようです。 
 Among patients with persistent AF, beta blockers, disopyramide, diltiazem, dofetilide, procainamide, or verapamil; the ability of these drugs to increase the success of DC cardioversion or to prevent early AF recurrence is uncertain.(ClassIIb)β遮断薬、Disopyramide(リスモダン)、Diltiazem(ヘルベッサー)、Procainamide(アミサリン)、Verapamil(ワソラン)などはエビデンスは乏しいが、cardioversionの成功率を上げたり(閾値を下げる?)、早期再発を予防するかもしれない、、、とのこと。
なんか、VFとAFが混然としてわけわかりませんが、僕もよく分かりません(笑)。
循環器医として、cardioversionもしくは除細動に抗不整脈薬を併用することは少なくないですが、経験的にテキトーに使っていたことに反省します。その役割は主に再発予防であることを再認識致しました。

2009年8月24日月曜日

心房細動に出会ったら

先日心臓血管研究所の山下武志先生の心房細動に関する講演を聴講しました。非常にシンプルで、説得力があり、明日から役立つ講演内容でした。特に非専門医の方にとっては、心房細動が親しみのある疾患に思えるようになるのではないかなと思いました。
現在、本邦で慢性心房細動患者は70万人を超えており、一過性心房細動を含めると恐らく100万人を超え、今後も増加の一途を辿ることは間違い有りません。従って、もはやcommon diseaseと考えるべきであり、循環器専門医のみならず非循環器医もその管理にたずさわっていかなければいけません。
心不全合併例などは予後不良ですので、循環器医に紹介する必要がありますが、非循環器医でも管理できる心房細動患者は沢山います。

心房細動管理のポイントは次の3ステップです。

ステップ1:患者の全体像を把握
高血圧、糖尿病など、これらの管理で発作も減少し得るし、生命予後改善においても極めて重要。心不全合併や(心房細動以外の)心電図異常、レントゲンでの心拡大があれば循環器医に紹介。
ステップ2:脳梗塞予防
心原性脳梗塞の1年生存率は50%程の極めて予後不
良。予防のためにCHADS2スコアによりワーファリン適応を考慮。CHADS2スコアx2%が年間脳梗塞発症率。ワーファリンの脳出血発症率0.6%/年。このバランスを考える。

ステップ3:QOL改善目的で心拍数コントロールまたはリズムコントロール
洞調律維持による生命予後改善のエビデンスはない。少なくとも慌てて対処することではない。
詳細は、『心房細動に出会ったら』メディカルサイエンス社 にまとまっています。講演を聴講した後、読んでみました。1日で読めてしまうくらい読み易い本です。お勧めです。

2009年8月23日日曜日

難治性VFに対するamiodarone

amiodaroneは難治性VFに対して投与を考慮する抗不整脈薬です。院外発症難治性VF患者にamiodaroneを投与したところ生存退院率が増加したというARREST Trial(NEJM1999;341:871-878)なる研究があり、ClassIIbの推奨です。
一方で、amiodaroneは除細動閾値を上げる作用があると聞きます。なぜ、除細動閾値が上がるのに、難治性VFの治療効果が上がるのでしょうか。
ある専門の先生にお聞きしましたところ、概ね以下のごとくご説明頂きました。
amiodaroneは確かに僅かながらに除細動閾値を上げ得る。ただ、その上昇は、経胸壁除細動のエネルギーとしてはごく僅かである。一方で、一度除細動できた場合は再発予防の効果はある。院外VFにアミオダロンを投与することで生存入院率を上げた要因は、除細動後のVF再発を減らしたことであると思われる。必要エネルギー数を解析してみたら、必要除細動エネルギーは上がっているかもしれない。へえ。

ACLSコースで、除細動閾値を下げるためにamiodaroneを投与しましょう、と言ってしまうことがあると思われますが、正確に言えばそれは誤りで、難治性VFの除細動閾値を下げるではなく、除細動後のVF再発を減らす、ということみたいです。

勉強になります。

2009年8月21日金曜日

地味な心電図

息苦しさを主訴に通常の内科外来を受診した中年男性。冠危険因子は喫煙のみ。自覚症状は強くなく、バイタルサインも安定。12誘導心電図は一見著明な所見はなさそう。

採血してみたらCKも、トロポニンTも著明に上がっており、内科の先生びっくり。循環器科に連絡があり、心エコーで下壁の壁運動低下あり。自覚症状が残存しており緊急CAGを施行しました。右冠動脈の高度狭窄病変を認め、PCI施行しました。
一見、ほとんど問題のないような心電図でもACSは決して否定できません。

2009年8月20日木曜日

急性大動脈解離による脳卒中

意識障害、左上肢の痙攣と、左上下肢の麻痺で搬送された高齢女性。救急隊現着時は意識レベル100/JCS、血圧90台。当院搬入時は意識3/JCS、血圧100台/。痙攣は消失するも、麻痺は残存していました。NIHSS18。脳梗塞を疑いましたが、正確な発症時期が不明であり、痙攣あり、MRIでは所見に乏しかったこと、また臨床症状が改善傾向でありtPAは控え、Todd麻痺の疑いとして保存的に対処致しました。
その後バイタルサインや神経学的所見は改善傾向を示しましたが、数日の経過で炎症反応高値を呈し、入院約1週間後胸部CTを撮影したたところA型の大動脈解離が発覚しました。がーん。入院時のイベントは急性大動脈解離によるもので間違いなさそうです。病態悪化がなく幸いでした。

初期治療の際、一歩間違えれば、tPAを投与してしまう可能性も十分ありえたケースでした。
カルテを見返してみると、血圧の左右差や末梢動脈触知などはチェックされていないようでした。ただ、意識状態改善後も含め胸部症状は一貫して認めなかったようで、症状的には大動脈解離は疑いずらかったと思われます。胸部レントゲンでは縱隔がやや拡大傾向でしたので、レトロスペクティブに検討してみて、気づくチャンスがあったとすれば、このへんでしょうか。
脳卒中を疑うようなケースは必ず急性大動脈解離を忘れてはいけません。教育的症例でした。

2009年8月19日水曜日

高齢者ACS

高齢者は急性冠症候群(ACS)を発症しても典型的な症状を呈さないことが少なくありません。

発熱、腰痛が主訴の80代女性。救急部の後期研修医が対応、採血やCT等施行し、病態ははっきりしないものの38度の発熱でもあり入院の方針とし、入院時のルーチン検査として12誘導心電図を記録したところ、STEMIでした。V5,6でST上昇とT波終末の陰転化を認めます。心筋マーカーも上昇していました。
その後施行した緊急冠動脈造影では回旋枝が閉塞しており、primary PCIを施行致しました。

発熱、腰痛とSTEMIの関連はよくわからないのですが、当院受診から再灌流まで結構時間を要してしまいました。
後から振り返ってみても、胸部関連症状は全くなく、ACSを鑑別に挙げることは難しかったかもしれません。
STEMI患者の(研修医等の)初期対応の遅れによる早期再灌流療法の遅れが、循環器医としては気になることはしばしばあり、その都度研修医等にはフィードバックするのですが、今回ばかりは、仕方ない、、、という症例でした。経過が良いことを願います。

2009年8月18日火曜日

単相性と二相性

心室細動の電気的除細動の推奨エネルギー量は単相性360J、二相性120-200Jです。
cardioversionは単相性100Jから、二相性の至適エネルギーは不明です。でも心房細動の時は単相性100-200Jから、二相性100-120Jから開始します。

Up To Dateには、”generally one-half that required with monophasic waveforms”と、二相性は単相性の概ね半分のエネルギー(で同等の効果)、と記載されています。
心室細動に対する除細動に関する研究のメタアナリシスでは、二相性115-130Jが単相性200Jと同等の効果であったとしています(Resuscitation. 2003;58:9-16.)。
心房細動に対するcardioversionの研究(nonRCT)では、cardioversionに要したエネルギー量の中央値は単相性で200J、二相性で100Jだったそうです(Am J Cardiol 2004;93:1495-9.)。
はい、確かに、半分くらいってことで。

でも、8/15の心房粗動のcardioversionの記事では、”約1000回の心房粗動のcardioversionの成功エネルギー量の中央値は二相性で50J、単相性で200Jほどだった(Am J Cardiol 2004;93(12):1495-9.)”。うーん、半分じゃないですねん。



2009年8月17日月曜日

東京スイーツ&カフェ専門学校

昨日の通りすがりの「東京スイーツ&カフェ専門学校」は2010年4月開校予定なんですってね。
うちの近所にも辻口とか、タカギとか、NAOKIとか、おしゃれなスイーツありますね。結構ニーズがあるんでしょうね。僕は和菓子が好きですが。

ジギタリス中毒患者のcardioversion

ジギタリス中毒患者の心臓は電気刺激に敏感になっており、cardioversionを施行すると心室細動を始めとする心室性不整脈が生じ易いとされています。特に低カリウム血症を伴っている場合はリスクが高いです。従って、ジギタリス中毒患者へのcardioversionは原則禁忌だそうです。ジゴキシン中毒の場合はDigibindというジゴキシン特異抗体を投与することをまず考慮します。ただし日本では認可されていません。
どうしてもcardioversionが必要な場合は、Up To Dateによると、リドカインを予防投与した上で、低エネルギーで施行します。低カリウム血症がある場合は、可能な限り是正することが望まれます
ACLSプロバイダーマニュアルには10-20Jと記載されています。
ACLS Resource Textには25-50Jと記載されており、無効の場合、或いは状態が極めて不安定の場合は除細動レベルの高エネルギー(単相性360J、二相性150-200J)で行うことを勧めています。
最近はジギタリスの使用頻度は多くはないし、自分はこのような経験はありません。

2009年8月16日日曜日

通りすがり

昨日は、私用あり僅かな時間だけでしたが、とあるACLSコースを覗かせて頂き、勉強させて頂きました。有り難うございました。
通りすがりに見かけた建物。いろいろな学校があるんですね。美味しそうです。

2009年8月15日土曜日

心房粗動のcardioversion

心房粗動も、PSVTと同様に、「cardioversionを行う場合に必要なエネルギー量は、一般的にこれ(100J)よりも低い。初回エネルギー量は50-100J(単相性)で十分なことが多い」とACLSプロバイダーマニュアルには記載されており、cardioversionを試みる時は50Jからが通常です。

あるreviewによると、約1000回の心房粗動のcardioversionの成功エネルギー量の中央値は二相性で50J、単相性で200Jほどだったとのことです(Am J Cardiol 2004;93(12):1495-9.)。単相性のこの値は結構高いですね。

心房粗動は、type 1(typical,F波240-340bpm)、type2(atypical,F波340-440bpm)の2つに分類してみると、type2のほうがcardioversionされずらく、より高いエネルギーを要するようです。type1は100Jから、type2は200Jから開始することを推奨する専門家もいるとのこと。ふーん。まあtype2は心房細動に近いと考えれば、当たり前の話でしょうか。

2009年8月14日金曜日

今日の頻脈性心房細動

心血管系疾患の既往のない元気な中年女性。朝からの動悸で来院。心電図はHR160bpmほどの頻脈性心房細動。血圧80台と低めでしたが、動悸以外の自覚症状は乏しく、他覚所見も血圧以外に不安定な所見はなく、cardioversionはせずに、ジギ静注で対処する方針としました。
後期研修医が施行してくれた心エコーでは弁膜症はなく、左室収縮も正常範囲内でしたが、右心系がやや拡大傾向とのことでした。それ以上の情報は得られていませんでした。でも、このような時は絶対に心房中隔欠損を疑わなければいけません。
同日夜自然に洞調律に回復しました。その後心エコー再検をしたところ、やはりありました、心房中隔欠損。エコーでも油断すると見逃しますので注意が必要です。
中年になって心房細動となり病院を受診して、初めて心房中隔欠損が見つかるケースは少なくありません。

2009年8月13日木曜日

105歳追記

下記、紛らわしい記事を書いてしまったので、誤解を招くといけませんので、一応ひとこと。
105歳はcardioversion禁忌ではありません。不安定頻拍と判断した場合は、もちろんcardioversionの適応はありますので、どうぞ。
このケースは、他にも諸事情あり、施行しませんでした。

今日の頻脈性心房細動

恐らくは最近だが、それでも発症時期が判然としない頻脈性心房細動の患者。後期研修医が対応。HR150bpm程で、血圧が70台/だったそうです。発熱あり、CRP26と感染症も併存しているようでしたが、とはいえ、心エコーでは軽度の大動脈弁狭窄症と左室肥大あり。いわゆる不安定頻拍の要素もあるか、、、とcardioversionも頭をよぎったそうですが、「超高齢者だったので腰が引けてジギで対応しました」と後期研修医談。

「で、何歳だったの?」

「105歳。」

「・・・・・なるほど。気持ちは分かる。」

高齢化社会は確実に進んでいます。

2009年8月12日水曜日

PSVTのcardioversion

PSVTが不安定頻拍を呈することは稀ですし、比較的安全な薬剤であるアデホスで多くの場合停止しますから、(電気的)cardioversionを行うことはほとんどないかと思います。僕もPSVTにcardioversionを行った記憶はあまりありません。
仮にcardioversionが必要になった場合、「必要なエネルギー量は、一般的にこれ(100J)よりも低い。初回エネルギー量は50-100J(単相性)で十分なことが多い」とACLSプロバイダーマニュアルには記載されており、あまり経験はないものの、想像するイメージと合致するこの記載を信じていました。
ところが、Up To Dateにへえ、という記載を見つけました。「(PSVTの)cardioversionの必要エネルギー量は通常比較的高く、(単相性)150-200Jほどである。恐らく、リエントリー回路が深い部位に存在するためであろう」、だそうです。

AVRTとAVNRTでも違うんでしょうが。本当のところはどうなんでしょう。

2009年8月11日火曜日

乳児の脈拍チェック

苦手の乳児ネタ。時々コースで出る話題ですが、今回も出ました。
乳児の脈拍チェックは上腕動脈で行うことが推奨されていますが、なぜ頚動脈でないのでしょうか。大腿動脈ではいけないのでしょうか?
経験のある小児科の先生や看護師さんから、乳児の首は短いし、肉々しているから動脈を触れにくいから、、、との御意見は良く聞きます。なるほど、経験に基づいた御意見で説得力があります。
大腿動脈は、衣服やおむつがあるからアプローチしづらいですね。そりゃそうですね。

BLSプロバイダーマニュアルにおける乳児の上腕動脈触知 の引用文献(Crit Care Med. 1983 ;11(3):189-90)によると、1980年のガイドラインで、乳児の脈拍評価は心尖拍動触知 から上腕動脈に変更されたようで,それを確かめるべくデザインされたこの研究でも上腕動脈触知 は心尖拍動触知 よりも容易で正確であった、とされています。アブストラクトだけからは、頚動脈や大腿動脈との比較の情報はありません。
もう少し新しい情報を探ってみますと、ある文献( Paediatr Anaesth. 2006;16:394-8.)では、上腕動脈、大腿動脈、頚動脈で脈拍触知 を比較してみると、大腿動脈が最も触知 しやすかった、との結果であり、現行のガイドライン(上腕動脈触知 )に一石を投じる、としています。
他の文献(Paediatr Anaesth. 2003;13:141-6)では、上腕動脈、大腿動脈、頚動脈、心尖拍動、心尖拍動聴診(耳で)の5つを比較していますが、心尖拍動聴診(耳で)が最も早く正確だった、という結果でした。
上腕動脈は、大腿動脈、頚動脈よりは良かったようです。
別の文献( Pediatr Crit Care Med. 2005;6:212-5)では、上腕動脈、大腿動脈、頚動脈、心尖拍動聴診(耳で)を比較しています。心尖拍動聴診(耳で)が最も早く正確だった、という結果でした。上腕動脈、大腿動脈、頚動脈は同等でした。

整理しますと、以下の如くでしょうか。

上腕動脈は心尖拍動触知 よりは容易で正確である。
上腕動脈が大腿動脈や頚動脈より明らかに優れているというわけではない。大腿動脈がより優れているというデータもあれば、上腕動脈が優れているデータ、同等であったとするデータも存在する。頚動脈が優れているというデータはなかった。
心尖拍動聴診が優れている傾向がある。

上記文献の原文は読んでおらず、アブストラクトのみです(無責任)。

やっぱり、衣服やおむつなどを考慮するとアプローチしやすい上腕動脈が妥当でしょうか。
ただし、心尖拍動聴診は考慮する余地はあるかもしれません。僕はやったことありません。

小児科の先生方の経験論はやっぱり正しそうです。さすが。



2009年8月10日月曜日

一本不足


三軒茶屋は良く行く街のひとつです。路地裏がマニアックでよいです。

2009年8月9日日曜日

リハビリ

夏休み最後の2日つぶして昨日はBLS、本日はBLS-Rでした。明日からいよいよ通常業務です。夏休みぼけした心身には、この2日は良いリハビリになりました。
いつも感じることですが、BLS-Rは受講生には大変評判が良いです。多くの人が気軽に受けて頂ける環境を作っていきたいです。

突然死症候群

8月6日にラグビーの元日本代表の石塚武生氏が57歳という若さで急逝されました。早稲田大学、リコー、そして日本代表のフランカーとして活躍し、激しいタックルが売りでした。
現在は茨城の常総学院ラグビー部の監督を務めており、熱い指導を行っていたそうですが、その日練習に現れないため関係者が自宅へ訪れたところ、ベッドで死亡していたとのことです。
ラグビー好きの自分としてはかなりショッキングです。宿沢広朗氏といい、早稲田ラグビー人は短命なのでしょうか。
2019年のラグビーワールドカップの日本開催が決定し、将来の日本代表選手育成に燃えていたと思われます。残念です。御冥福をお祈り致します。

ところで、死因は”突然死症候群”と報道されています。はて。乳幼児突然死症候群(SIDS)ならともかく、成人の”突然死症候群”という表現は一般的なのでしょうか。器質的心疾患がないのに致死的不整脈で突然死を来しうるBrugada症候群QT延長症候群のことを”突然死症候群”、”家族性突然死症候群”と表現することはあるようですが、石塚氏はそのような既往があったのでしょうか?土浦市在住ですから、もしかして不整脈領域では日本トップレベルの病院である土浦協同病院にかかりつけだったのかな?なんてことも想像したりして。だったら、とっくに植え込み型除細動器(ICD)入っているでしょうか。
報道によっては、”死因は突然死だった”なんて、よくわからない表現になっていたりします。
突然死亡したら、なんでもかんでも突然死症候群になってしまいますね。
大原麗子も?押尾学の愛人も?
安易に使わないほうが良い表現なような気がします。


2009年8月6日木曜日

cardioversion後の外傷

cardioversionや電気的除細動の稀な合併症として、電気ショック放電の際、身体の強い動きにより外傷が生じ得るとの報告もあるそうです。

確かに、放電の瞬間に身体が大きく動くことはありますね。ご高齢の方など脆弱な方はこのようなこともないとは言えないですね。。。。まあ、そのような方はVF症例であれば、その前の胸骨圧迫で傷んでそうですが。

参考:Up To Date

2009年8月5日水曜日

山本KID徳郁

夏期休暇中でネット環境がすこぶる悪いです。昨日は全くネットにはつなげることができませんでした。何とか今日はつながりました。


ところで、僕は結構格闘技が好きです。PRIDE、K-1は大好きでした。一時の熱はさめたものの、最近も、Dream、Hero'sなど見ます。山本KID徳郁選手は大好きな格闘家の一人です。天才的な身のこなしは観るものの期待感を高め、人を惹きつけます。怪我から復帰後残念ながらDream、K-1ともに完敗してしまいましたが、完全復活を心待ちにしています。

昨日、旅でふと目にした1シーンです。神の子山本KIDを思い出しました。


2009年8月3日月曜日

cardioversion後の火傷

cardioversion或いは除細動後に生じうる合併症のひとつに皮膚の火傷があります。20-25%の頻度で中等度以上の火傷が生じ得るとの報告もあります(Resuscitation. 2004;61:281-8.)。心尖部よりも胸骨側が多く、パドルの中央より縁が火傷しやすいようです。残存する痛みについては総通電エネルギー量や通電回数と相関します。

パッドやパドルの不適切な手技や位置が主因です。上記の原文は読んでいないのでどのような予防措置がとられているか分からないのですが、待機的症例群が対象であり、これが緊急症例であったらもっと火傷頻度があがることが想像できます。この文献では、両方のパドルに均等に力をかけ、またエッジが浮かないようにすること、低エネルギーから開始すること等を対策として推奨しています。

他の文献では、予防的にイブプロフェンクリームを塗布することで痛みや炎症を減らすとの報告があります(Resuscitation. 2005;65:173-8.)。ステロイドクリームの予防的塗布の効果は今ひとつだったようです(Resuscitation. 2005;65:179-84.)。火傷のリスクは二相性除細動器を使用することで減少します(Resuscitation. 2006;71:293-300.)。

我々の施設ではパドル使用時には、以前はジェルを塗布していましたが、現在はジェルパッド(正式名称ではないかもしれません。ジェル状のシートのようなものです)を使用しています。ジェルよりは使い勝手が良いです。AHA推奨のように、パドルでなく、パッドを使用することが最もスムースな手技となりますし、このような火傷の合併症も減らすような気がします。

蛇足ですが、超音波検査の時に使用するようなエコージェルは伝導性が悪く使用してはいけません。


参考:Up To Date

2009年8月2日日曜日

除細動時の引火

Kim先生のブログで除細動時の引火についての話題がありましたので、良い機会ですから再確認してみました。

ACLS Resource Textによると、除細動やcardioversionの際、引火を避けるには3つの要素に気をつけます。

①可燃物②高濃度酸素③電気アーク(火花)


①可燃物

体表面の細かい体毛、多くの織物の表面の"けば"、周囲の空気浮遊する繊維や、ちり、微粒子なども引火を助長する要素になり得るようです。対策としては、ガウンやパジャマは除細動を行う領域から離す。布団などの寝具や、カーテンも近辺から遠ざけることが推奨されます。


②高濃度酸素

以下は引火を助長する因子となり得ます。

・酸素投与を継続したまま酸素マスク等のデバイスを除細動領域に近接しておく、或いは、酸素の連結を外しても、除細動領域に酸素が直接吹いている場合

・除細動領域に高濃度酸素が貯留(例えば胸毛の間など)してしまう場合


対策

・酸素供給ラインと気道補助器具(気管挿管と思われる)は常に適切に接続しておく。

・もし、適切に接続されていない、或いは使用していない場合は、酸素を止める。

・酸素が外に流れる気道器具(例えば酸素マスクやBVM)が側に置かれていたら、それを胸から遠ざける

・除細動の最中に胸部表面に酸素が直接吹き付けては決してならない

・ショック直前に酸素を止める、或いは換気バッグの接続を外すことを考慮する

・電気アークのハイリスクの状況の場合(例:不整な胸壁)、常に酸素を止めるか接続を外す


③電気アーク(火花)について

以下は引火を助長する因子となり得ます(火花が散り易い)。

・パドルを皮膚に強く押し付けない

・パドルの縁が浮く(パドルが皮膚表面に平行でない)

・伝導性ジェル未使用、或いは不足

・ジェルの過剰使用(表面に塗り、他方のパドルや心電図リード、電極に付着)

・胸毛(空気ポケット、皮膚とパドル間のギャップ形成)

・不整の胸壁(胸壁の高度彎曲、漏斗胸、肋骨間の陥没など)

・パドルやパッドがワイヤーや電極の上に位置していたり、近接し過ぎている

・パッドが乾いたり、しわがよっていたり、しっかりと貼付されていない

・蘇生行為が遷延しジェルやパッドが乾く


対策

・パドルを少なくとも25ポンドの圧で押し付ける

・パドルが皮膚と平行になり、浮いていないことを確認する

・十分な伝導性ジェルをパドル表面に塗る

・パドルの縁を超える過剰なジェルは避ける

・パドルと皮膚の間に胸毛が多い場合は、毛を切ったり,剃ったりするか、或いはより多くのジェル使用を考慮する(皮膚、胸毛、パドルの間の空間を埋める)

・胸壁不整の患者は、皮膚とパドルの間の隙間を注意深くチェックする。

・強く押し付けても隙間が改善されなければ、生食で湿らせたガーゼにジェルを含ませ、隙間を埋める

・心電図リードや電極の上やそばにパドルやパッドを置かない

・パッドが乾いていないこと、しわがないことを確認


英語力が低く、少し分かりにくいですね(笑)。解釈が誤っているところがあれば御指摘して下さい。

2009年8月1日土曜日

和式。

まあついでと言っては何ですが、トイレネタを。今やウォシュレットはトイレの必須アイテム。和式トイレの問題点の1つはウォシュレットがないこと。と思っていましたが、和式トイレ用ウォシュレットが存在していたとは今更ながらびっくりしました。

夏休みで頭が溶けているみたいです。

夏休み。


色々なことから後ろ髪を引かれつつも、今日から夏休みです。南の島です。インターネット環境がすこぶる悪いです。何か、落ち着きません。現代病でしょうか(笑)。

要注意。

昨夜は酔っぱらって変な写真アップしてしまいましたが、まあいいか(笑)。
酔っているときは気をつけなければいけません。

トイレ

最近洋式ばかり。和式ちょっと懐かしい感じ。