2009年6月30日火曜日

Valsalva maneuverの合併症

頚動脈洞マッサージは,頻度は低いとは言え、脳塞栓や脳梗塞など中枢神経系合併症が怖いので若年女性くらいしかやりたくありません。Valsalva maneuver;バルサルバ手技を行うほうが気持ち的に楽です。過剰効果発現時の徐脈性不整脈はともかく、それ以外の、バルサルバ手技の合併症なんてないだろうと思っていたんですが、報告はあるようです。耳の”正円窓(蝸牛窓)の破裂”だそうです。ふーん。正円窓ってなんでしたっけ(笑)。

2009年6月29日月曜日

頚動脈洞マッサージで心室性不整脈

まだまだ続く、迷走神経刺激ネタ(笑)。頚動脈洞マッサージの合併症は数多く報告されているようですが、頻度は低く、対象を慎重に選択した場合、0.28-0.45%程度とされます。代表的な合併症は脳塞栓、脳梗塞ですが多くは一過性です(参考:頚動脈洞マッサージ(CSM))。
その他、失神、洞停止、心静止、房室ブロック、頻脈性不整脈などがACLS resource Textには記載されています。前4つはともかく、頻脈性不整脈はあまり知られていないように思います。Up To Dateにも重大な合併症としてVT、VFと書かれていますが、頻度は稀であり、多くの場合はジギタリスを投与されていたり、重症基礎心疾患を有している人であったりするようです。引用文献を見ると、 Ventricular tachycardia and fibrillation due to carotid sinus stimulation. RI Med J 1968; 10:622. とか、Ventricular fibrillation with cardiac recovery, caused by carotid sinus pressure in a case of auricular fibrillation. Am Heart J 1931; 6:758. とか、激古(笑)!
いずれにしても、頚動脈洞マッサージ前にリドカインを準備するとの記載に、へえーと思いましたが、この心室性不整脈に備えてということのようです。リドカインより除細動器、という感じがしますが。。。。

2009年6月28日日曜日

循環器医とAHA ACLS

昨日の記事のように、心臓カテーテル室内で患者さんが心肺停止、特にVFになることは多いです。
"カテ室内は特殊環境だから、BLSやACLSの知識なんて通じないんだ"という循環器医が結構います。そのような方の多くはBLSやACLSの教育を受けていません。特殊環境故にアルゴリズムを臨機応変にmodifyすることは当然ありますが、それでもBLS、ACLSの基本的概念は極めて重要ですし、その基本概念を理解できていないと、心臓のプロとは言え、最善の心肺蘇生術を患者さんに提供できないと思います。
その意味でも、日本循環器学会が循環器専門医にAHA ACLS provider資格を必須にしたことは大変画期的なことと思います。自分としては循環器医を相手にAHA BLS、ACLSを教える機会が多いので、上記のことを理解して頂くことも1つのポイントと考えています。
多くの循環器医はAHAコースを受講後、認識を新たにした、とか、大変勉強になった、とか喜んで頂けています。嬉しいことです。

2009年6月27日土曜日

右冠動脈の急性心筋梗塞

緊急入院となった中年男性、STEMI患者。バイタルサインは安定。CAGを行い右冠動脈完全閉塞ですが、何てことのない1枝病変。型通りにPCIを施行。血栓吸引を行い再灌流した途端、モニター上HR100→20ほどの洞性徐脈となり、呼びかけに反応なくなり、頚動脈触知不能、PEAとなりました。カテの動脈圧は20mmHgほどだったと思います。すぐに胸骨圧迫開始。先日AHA BLS、ACLSコースを受講した後期研修医が高品質の胸骨圧迫をしてくれました。数十秒の後に意識回復したため胸骨圧迫を中止しました。血圧、心拍数は徐々に回復しました。
右冠動脈の急性心筋梗塞の時に強い迷走神経亢進状態を呈し、徐脈や低血圧に陥ることはよくあり、Bezold-Jarish reflexと呼ばれています。今回の現象もBezold-Jarish reflexによるものと考えられますが、PEAになってCPRが必要になるようなことはそれほど多くはないと思います。
PEAに対するACLSを行ったわけですが、病態的にエピネフリンよりもアトロピンを優先して使用しました。その判断が正しかった否か分かりませんが、結局エピネフリンは使用するまでもなく回復しました。
その後何事もなかったようにカテーテル治療は行われました。ところがステント留置後に今度はVFになりました。また先ほどの彼が高品質の胸骨圧迫をしてくれて、早々に電気的除細動がなされ、洞調律に回復しました。
その後の経過は極めて良好です。
右冠動脈の急性心筋梗塞のカテーテル治療は、様々なトラブルが起こりえて、右冠動脈には魔物が棲んでいると言われることもありますが、正にそんな感じのカテでした。

2009年6月26日金曜日

頚動脈洞マッサージのやり方

ACLS Resource Text P132を参考に頚動脈洞マッサージのやり方も確認しておきましょう。
・静脈路を確保
・アトロピン、リドカインを用意 へー(笑)
・連続心電図モニター装着
・問診上、脳梗塞やTIA既往、最近の心筋梗塞、致死的心室性不整脈患者は除外
・身体所見上、頚動脈血管雑音、頚動脈手術歴を有する患者は除外。
・処置が必要な徐脈性不整脈に備え、TCPを準備
・患者に手技について説明

・患者の頭部を左側へ向ける。
・下顎角の直下、胸鎖乳突筋の上に頚動脈洞が位置する。(G2000 プロバイダーマニュアルには甲状軟骨上縁の位置で拍動を最も触知 する頸動脈を探し頚動脈洞を特定する、と記載されています。また、日本人はもっと上に存在する傾向があると、神経内科の先生にお聞きしたこともあります。)
・2本指を使って、頚動脈を押すようにして5−10秒しっかりと上下にマッサージを行う。
・指と頸椎で、頚動脈洞を挟んで圧迫するように、後内側方向の圧(posteromedial pressure)をかけつつ、縦方向(longitudinal)にしっかりとマッサージをする。
(Up To Dateには、拍動的な加圧方法(pulsatile pressure)のほうがより効果的と思われるが、再現性が高いため一定の加圧方法(steady pressure)を御勧めする、と書かれていました。)
・このマッサージを、5-10秒間隔をあけて2-3回繰り返す。
・血圧や心電図を注意深く観察する。マッサージ前後の心電図ストリップを記録する。
・効果がない場合、血圧、心拍数がベースラインレベルであれば、同じ方法で左側も試みる。
・決して両側同時に行ってはならない。脳血流が低下する可能性がある。
・頚動脈洞マッサージが成功したら、リズム変化後の12誘導心電図を記録する。
・もし頚動脈洞マッサージの効果がない場合、他の迷走神経刺激手技と併せて行うことを考慮する。例えば、バルサルバ手技をしながら、或いは肌に氷嚢を当てながら行う。

マッサージの圧の加え方が結構微妙です。自分の英語力が低いので細かなニュアンスが理解できているか正直分かりません(苦笑)。

2009年6月25日木曜日

Valsalva maneuver

ACLS Resource TextP131を参考に、Valsalva maneuver(バルサルバ手技)のやり方を確認しておきます。
・姿勢は立位か、半立位。
・対処が必要な症候性徐脈の出現に備えて静脈確保か或いは経皮ペーシングを準備しておきます。
・患者へ手技の説明をし、咳の練習をさせます。咳は迷走神経に対抗する効果があるため、迷走神経刺激手技で徐脈性不整脈を呈した場合への対処に役立ちます。
・ベースラインの血圧、脈拍を測定し、心電図を記録します。
・深吸気で息止めしてもらい、息んでもらいます。腹部中央を片手で押しても良いです。そしてこの”押し”に対し腹圧で対抗するように言います。
・15秒から30秒息止めさせ、息ませます。
・小径チューブやマノメーターやスパイロメーターがついたシリンジがあれば、それで息ませるとよいでしょう。患者は30mmHgの圧を15秒から30秒維持します。
・1分後血圧と心拍数を測定、リズムストリップを記録します。調律が変われば、12誘導心電図を記録します。
・もしバルサルバ手技が不成功なら、(禁忌なければ)頚動脈洞マッサージを行います。

もちろんバルサルバ手技にも様々なやり方がありますので、これが絶対に正しいというわけではありません。Up To Dateにもその旨記載されており、例えば仰臥位で行う、とか10秒息んで、それから解除する、など微妙に違います。
Up To Dateにはバルサルバ手技がうまくかかっている目安として、頚静脈怒張や腹筋の緊張、顔面紅潮などが挙げられています。結構難しいですから、思い通りにできないことも少なくないですよね。

2009年6月24日水曜日

MBT:MASAI Barefoot Technology


MBT(マサイベアフットテクノロジー)というシューズ。MBTウォーキングスタジオという販売店が近所にあるせいか、我々の周りで密かに流行りつつあります。シューズ底のソールが厚く、そしてカーブしているために不安定な形状をしています。この”自然の不安定さ”に対しバランスをとることで、”感覚受容性の運動制御トレーニング”になるとされます。日常生活での着用により全身の筋、神経系に働きかけ、筋肉の活動性を高め、姿勢や歩行動作が改善し、筋、腱、靭帯、関節への負担を軽減しながらもエネルギー代謝量を増加させると言います。腰痛にも良いらしいです。
優れた身体能力と美しい姿勢、そして背中や関節のトラブルとは無縁なことで知られるアフリカの半遊牧民族マサイの人々が、名前の由来だそうです。
効果の程は、まだ実感できませんが、歩き心地は良く、癖になります。歩く姿勢は確かに良くなる気がします。ネックは、値段が3万円くらいとちょいとお高いことです。

迷走神経刺激手技の順序

安定した幅の狭いQRS頻拍で心リズムが規則的である場合、まず迷走神経刺激手技を行うことが推奨されています。ACLSプロバイダーマニュアルには「バルサルバテストまた頚動脈洞マッサージ」と記載されています。
さて、どちらの手技も行える患者に対し、この2つはどのような順番で試みればよいのでしょうか。ACLS Resouce Textには、「これら2つの方法は頻脈性不整脈を停止させることにおいては同等に効果的であるが、一方が不成功でも、他方が成功することもある。(P131)」と記載されています。そして、「もしバルサルバ手技が不成功であったら頚動脈洞マッサージを行う(P132)」、「もし頚動脈洞マッサージが不成功だったら、他の迷走神経刺激手技と併用することを考慮する。例えば頚動脈洞マッサージ+バルサルバ手技、頚動脈洞マッサージ+皮膚へのアイスパック(P132)」と記載されています。
AHA ACLSとしては、バルサルバ手技→頚動脈洞マッサージ→バルサルバ手技+頚動脈洞マッサージ、がとりあえずの代表的な流れのようです。勿論,コースのメガコードでは1つ試みれば問題ありません。

2009年6月23日火曜日

迷走神経刺激

AHA ACLSの頻拍アルゴリズム。安定した幅の狭いQRS頻拍で心リズムが規則的である場合、まず迷走神経刺激手技を行うことが推奨されています。ACLSプロバイダーマニュアルP101には「バルサルバテストまたは頚動脈洞マッサージ」と記載されています。しかし具体的なやり方の記載はありません。G2000のAHA ACLSプロバイダーマニュアルには頚動脈洞マッサージのやり方が詳細に記載されていましたが、G2005になりプロバイダーマニュアルからは削除されてしまいました。どうせ約20-25%しか頻脈が停止しないような手技だから、あまり重要視しなくてもよいのでしょうか。その割に、ACLSコースでのメガコードによる実技試験ではしっかり”迷走神経刺激法を試みる”とのチェック欄があり、これにチェックが入らなければ試験は合格となりません。試みればいいのであって、正しいやり方でなくとも構わないというスタンスなのでしょうか。それも中途半端ですね。せっかく行うのであれば正しいやり方で行いたいものです。ACLSプロバイダーが頻脈性不整脈に対して行える数少ない治療の1つですから、もう少し大事にしたいと思っています。

2009年6月22日月曜日

逆トレンデレンブルグ体位の謎

G2000、G2005AHA ACLSプロバイダーマニュアル(P213)には、アデノシン投与の際「投与前に患者を軽度の逆トレンデレンブルグ体位にする」と記載されています。逆トレンデレンブルグ体位とは頭を上げて、足を下げるような体勢です。なぜ、そのような体位をとるのか分かりません。そのほうが上肢から投与する場合は心臓への到達が早い?アデノシンで嘔気が生じた時に、誤嚥が生じずらい?あまりしっくりといく理由が思いあたりません。アデノシン投与の際、そのような体位にする、という記載は他の本などでは見当たりませんでした。
理由をご存知の方いらっしゃいましたらご教授御願い致します。

2009年6月21日日曜日

詐欺容疑で奈良の病院捜索


奈良県の山本病院なる、心臓血管外科や循環器科を標榜している病院。入院中の生活保護世帯の患者に対し、心臓カテーテル治療をしたかのように装って診療報酬を不正に受給していたという詐欺容疑で家宅捜索中と報道されています。同病院の従業員の証言によるとまず間違いないようです。
2009年3月には”充実の最新設備で地域に貢献、、”などと地元奈良新聞に大きく報道されている病院なんですが。。。。
心臓カテーテルにたずさわっている者としては少々気になるニュースです。正しい医療を献身的に提供している病院もあれば、このような病院もあるわけです。どのような経緯でこのような事態に至ってしまったのでしょうか。
日本には星の数程心臓カテーテル治療を行っている医療施設があります。そのような環境にメリットもあればデメリットもあるのでしょう。ここまでの行為をしている病院はさすがにない(はず)でしょうが、不要な治療を行っている施設の話は時々耳にします。症例数や診療報酬を増やすことも大事でしょうが、正しい標準的治療を常に心がけたいと思っています。

六本木ライブデモンストレーション


心臓カテーテル治療の研究会である、六本木ライブデモンストレーションに参加しました。教育的な局面がいくつかあり、勉強になりました。
このライブ、比較的若い先生方がオペレーターをつとめるのが一つの特徴でしょうか。若いながらも皆さん大変上手な方々なのですが、ライブという特殊な状況では十分実力を発揮しきれないことも少なく有りません。ライブって、大変な場です。
そのような光景を見ていると、ライブデモンストレーション常連の斎藤、加藤、鈴木、光藤、故玉井先生など達人、大御所の先生方の常日頃の落ち着きはらった手技、high qualityな実力を常に発揮する卓越する懐の深さ、、、、が逆に明瞭になります。

「プロフェッショナルになるための時間;10000=1万時間。彼らは例外なく少なくとも1万時間、「そのことだけに集中し専心したゆまぬ努力」をしていた時期があったというのだ。」(分子生物学者 福岡伸一)

達人たちは万単位の経験数をお持ちです。その実力は、集中したたゆまぬ努力の賜物なのでしょう。

2009年6月20日土曜日

三沢光晴3

プロレスラー三沢選手の話。バックドロップを受けた直後に駆けつけた2人の医師の証言によると、すでに呼吸は停止しており、2人ともに脈を触知することはできなかったとのことです。その後AED装着しましたが、心電図上心拍数40台の徐脈でありショックの適応は無いと判断されました。モニター付きのAEDだったのかな。徐脈性PEAだったということですね。

とある救命センターの先生に御聞きしたところによると、脊髄損傷でspinal shockを来たし、心停止にまで至るような病態を経験することはあるようです。
一般的にspinal shockは比較的カテコールアミン投与への反応は良好なことが多いそうですが、病院搬送前で、そのようなサポートがなく、かつ呼吸停止による低酸素も併存すると比較的早期に心停止に至り得る、、、、そんな意見も頂きました。勉強になります。

2009年6月19日金曜日

アデノシンとATP

最近adenosineネタが多かったので、adenosineとATPの整理をしておきます。これは数年前に我々周囲のACLSインストラクターで交わされた議論が元になっています。
adenosine(アデノシン;商品名アデノスキャン)は日本では心臓核医学検査の薬剤負荷として使用されていますが、頻脈性不整脈の治療には使用されていないのが一般的と思います。一方、ATP(アデノシン三リン酸;商品名アデホス)は各種神経疾患の自覚症状軽減や難聴、耳鳴りなどの保険適応がありますが、日本ではこれが頻脈性不整脈の治療に使用されていることが一般的です。頻脈性不整脈への保険適応はありません。
頻脈性不整脈治療に使用する場合の投与量はadenosine6mgの記載が一般的です。それではATPはどのくらい使用すればよいのでしょうか。古い文献ですがAm.Heart J1990;119:316-323にその情報が示されています。大腿静脈から投与した場合は、adenosine3.8mgとATP6.6mgが同等であり、肘正中静脈から投与した場合は、adenosine8.4mgとATP9.3mgが同等であったと記載されています。投与ルートによって変わる傾向があるのですね。我々は一般的に肘正中静脈に近いルートを使用するでしょうから、adenosine6mgはATP6.64mgに相当します。したがって、肘正中静脈から投与する限りは、adenosineもATPも投与量は大差ないと考えてよさそうです。大腿静脈から投与する場合はadenosine6mgはATP10.4mgに相当します。
日本では慣習的にATP10mgで投与されることが多い印象がありますが、肘正中静脈投与の場合はあまり根拠がないわけです。この論文のアブストラクトには「adenosine3.8mgとATP6.6mgが同等」のみの情報が記載されており、この記載だけが一人歩きして、adenosine6mg=ATP10mgとなった可能性も考えられます。
当施設では40mg/2mlのアンプルを使用しており、自分としては6mgという半端な量の調節が面倒なので、初期投与量10mgにしてしまうことが多いです。結局10mgじゃん(笑)、すいません。

2009年6月18日木曜日

慌ただしい1日

今日は30代の不安定狭心症、40代の急性心筋梗塞→院外心肺停止、50代の急性心筋梗塞などなど慌ただしい一日でした。心カテ用プロテクターが重くて、持病の腰痛が悪化しました(泣)。
若い急性冠症候群患者が少なくなく、ひとごととは思えません。昨夜は飲み会でたらふく食ったし、今日も串カツ食ったしなあ。自分も冠動脈CTくらい撮っておくかな、なんて思います。

2009年6月17日水曜日

心筋梗塞と急性大動脈解離

中年男性、胸背部痛を訴える患者が搬送されました。後期研修医が初期対応してくれました。12誘導心電図では2,3,aVFでST上昇していました。STEMIではありますが、背部痛も認めており、急性大動脈解離が冠動脈を巻き込んで生じている貫壁性虚血の可能性も考えたようです。心エコーでは大動脈内に明らかなフラップは見えなかったようでしたが、否定しきれないとしてまず造影CTを撮影しました。結局、CTで大動脈解離は完全に否定、その後心臓カテーテル検査、治療を行いました。通常の急性冠症候群で、右冠動脈にステント留置しました。
治療は順調で良かったのでしたが、造影CTを撮影した分、時間的に早期再灌流療法が少々遅れたり、造影剤を多く要したり、結果的にやや無駄な面がありました。
急性大動脈解離のおよそ5%にSTEMIの心電図所見を伴います。解離が右冠動脈を巻き込むことが多く、即ち2,3,aVFのST上昇の時は確かに注意が必要です。この後期研修医、そのような病態も頭に入っており、視野が広く、評価されることとは思います。
今回右側胸部誘導心電図もきちんと記録していました。これは2,3,aVFのST上昇即ち下壁梗塞の場合は必ず右側胸部誘導も記録し、右室梗塞合併の有無を評価する、ことはガイドラインでクラス1の推奨です。V4RのSTは上昇しておらず、右室梗塞の合併はありませんでした。右室梗塞とは右冠動脈の比較的近位部から分岐する右室枝が虚血に陥ることで生じます。右冠動脈近位部閉塞で生じるわけです。大動脈解離に下壁梗塞が合併する場合は当然右冠動脈は起始部から閉塞しますので、当然右室梗塞を合併することが多いです。右側胸部誘導でV4RのST上昇がなければ高い確率で大動脈解離による下壁梗塞の可能性は否定されると考えてよさそうです。今回も、そのように考え、造影CTを取らずに心臓カテーテル室に直入していたほうがベターだったと、その後期研修医にお話ししました。大変よく考えてくれている後期研修医ですが、更なる成長を期待します。

2009年6月16日火曜日

三沢光晴2

プロレスラー三沢選手の死因が”頚髄離断”と報道されています。外傷とか整形外科領域のことは疎いのですが、頚髄損傷のひどいやつと解釈しています。外傷性脊髄損傷の入院早期の死亡率は4-20%ほどとのことです。予後を規定する因子として年齢や損傷レベル、神経障害の程度等が挙げられています。頚髄損傷はそのレベル以下の損傷よりも予後は悪くなります。死因は併存外傷によるもの、各種感染症や呼吸不全などが挙げられます。
しかし、受傷直後の死亡となるとやっぱり素人なりに疑問が残ります。損傷の程度によっては受傷直後に呼吸停止することはあるでしょうが、今回のケースはすぐに心肺蘇生術が行われていますし、呼吸停止→心停止に移行してしまうのはタイミングが早い気がします。
脊髄損傷時に血圧低下、徐脈を呈し、それが他に原因となる因子がない場合、spinal shock(神経原性ショック)と言い、通常受傷後数時間から数週間持続するようです。これが受傷直後に心停止にまで及んでしまうような病態を来しうるか、よくわかりません。少なくとも一般的によくあるケースではないような気がします。虚血性心疾患等の併存疾患があり、spinal shockから二次的に心筋虚血を来たし心停止に移行する可能性はあるでしょうが、プロレスラーという極めて運動耐容能の良い心臓が、簡単に二次的に心停止に至ってしまう可能性も低いと思います。頚髄損傷を来すような高エネルギーを受けていますので、頭蓋内損傷も容易に疑えますが、受傷直後話すことができたとのことですので、それも考えにくいかなとも思います。血管損傷等も否定されているのでしょうし。。。
頚髄損傷単独で突然心肺停止に至る機序、、、だれか易しく教えて下さい。

参考:Up To Date:Acute traumatic spinal cord injury

2009年6月15日月曜日

相対的徐脈

relative bradycardia(相対的徐脈) という言葉がAHA ACLSプロバイダーマニュアルに出てきます。”基礎にある状態や原因から期待されるよりも脈拍が少ない状態(P82)”と記載されています。ACLS Resource Text P99には”低血圧、敗血症の患者が心拍数70/分の場合”が例として挙げられています。敗血症の患者なら通常もっと頻拍になっているはずなのですが、70/分しかないので、この患者にとっては遅い心拍である、ということです。
ACLSプロバイダーマニュアルを見る限り、相対的徐脈に対する対処も通常の徐脈アルゴリズムに従うようにも受け取れます。従って、相対的徐脈にもTCPやアトロピンを使う??という疑問も湧いてきます。一般的にはTCPはペーシングレート60/分で開始することになっていますが、70/分の相対的徐脈患者にはいくつで始めればいいの?なんて質問が受講生から出たりします。
この件に関する記載がACLS Resource Text P100にありました。
"It is important to note that attempts to increase the heart rate using chronotropic agents and pacing are not indicated unless drug toxicity or high-degree AV block is complicating the clinical situation."
(相対的徐脈において)薬物中毒や高度ブロックが併存していないのならば、陽性変時薬やペーシングを使用して心拍数を上げようとする適応はないことを頭に入れておくことが重要である。
Textにこのような記載があれば、自分の臨床経験と合致しますので、自然なインストラクションにつながります。
状況的に(昇圧剤として)カテコールアミンは使うことはあるかもしれませんが、それよりも何よりも大事なことは原因、即ちH'and T'の同定と是正でしょう。自分の経験では相対的徐脈は心停止寸前であることが多いですから迅速な対処が望まれます。

2009年6月14日日曜日

三沢光晴

昨夜はACLS-R、BLSの後、飲んだくれて、今朝は朝一番でBLS-Rだったのでテレビも新聞もネットも見ていなかったので全然知りませんでしたが、プロレスラーの三沢選手が試合中に心肺停止になったそうで、驚きました。
バックドロップを受けて動けなくなり、レフリーの「動けるか?」の問いに「動けない」と答えたらしいですが、その直後に心肺停止に陥ったらしいです。倒れた直後の映像がTVでも公開されたようで、You Tubeでも見れます。緊迫する映像です。居合わせた医師(らしい)によりマット上でCPRが行われましたが、レスラー達の人垣で、どのような処置がされているかよく見えません。胸骨圧迫しつつAEDは使用されたようです。ショックは適応なしだったように見受けられますが、よく分かりません。
死因はなんでしょうか。バックドロップで死亡したと報道されていますが、内因性疾患の可能性もあるかもしれません。いずれにしても46歳という若さですし、残念です。ご冥福を御祈り致します。

腹部大動脈瘤破裂

腹部大動脈瘤破裂で男性死亡

腹痛、吐き気症状の70代男性患者に対し「胃腸炎」と診断したが、4日後腹部大動脈瘤破裂で死亡したという話。
詳細は存じ上げませんので分かりませんが、この裁判で医師側が敗訴するようなら、腹痛、吐き気患者さんは全員CT撮影することになるのでしょうか。。。。。うーん、大変ですね。

AHA ACLSリニューアルコース

昨日は初めてAHA ACLSリニューアルコースに参加しました。受講生13人3ステーションでしたが、半数以上がプロバイダーカード期限切れの受講生でした。
リニューアルコースは原則有効期限内のプロバイダーカードを有している方対象のカード更新のためのコースです。しかしカード期限切れの方の受講を拒む訳ではありません。ただし期限切れの方々は、実技、筆記試験はレメディエーションなしの一発勝負です。一発で合格しなければ、再試験はなく、通常の2日間のACLSコースをもう一度再受講して頂くことになります。受講生はハラハラドキドキでしょうが、インストラクターも同様です(汗)。なんとかレメディエーションにならないように手厚いインストラクションになります。各アルゴリズムを復習する時間はメガコード練習の時間のみですので、これが大変です。今回のコースは期限切れでも、循環器医やBLSインストラクターの方など優秀な受講生が多かったので無事全員合格することができましたが、力量が低めの受講生が期限切れで参加するような状況になるとかなりつらいコースになりそうです。
期限内に受講することを強くお勧めすることが最も重要と思います。

2009年6月13日土曜日

超高齢完全房室ブロック

徐脈、息切れ、下肢浮腫とのことで受診された患者さん。心拍数37bpmの完全房室ブロックでした。その他のバイタルサインは保たれていました。問診上は4月頃から息切れが増悪して、、、ということで恐らくその頃から発症した完全房室ブロックと思われました。2年前にも受診歴があり、この時は洞調律でした。
ACLS providerとしては、症候性徐脈で、かつ完全房室ブロックなら、TCPを遅れずに使用!、専門医へコンサルテーション!ということになります。それで全く問題ありません。
しかしながら、循環器内科の外来ではその限りではないわけです。経過や問診、診察所見等から急性のものか、そうでないのかを判断し、心電図の補充調律の安定性やQRS幅等から、ある程度のリスク評価をします。電解質異常もチェックが必要で、またACSや心筋炎など致死的疾患の潜在の可能性も常に気を使う必要があります。心臓超音波検査も速やかにできればなお安心です。
この患者さんも、軽い心不全を併発していますが、超緊急性はないと判断し、また諸事情あり外来対応としました。
AHA ACLSプロバイダーマニュアルの徐脈の項では「アルゴリズムの治療手順は、患者の症状の重症度によって決まる。」と記載されています。循環器内科医はこの重症度判断に長けているということだと思います。でも時々足もとすくわれて判断を誤ることがあります(汗)ので、慎重さを持ち続けることは重要と思っています。
この患者さん、医学的には恒久的ペースメーカーを入れるべきでしょうが、なにせ、95歳!(苦笑)。元気な方ではありますので、お勧めしましたが、ご本人はもう少し考えさせてくれ、と。でも100歳くらいまでたくましく生きていけそうな方でした。
超高齢社会に向け、今後もこのような方は増えるものと思われます(汗)。

2009年6月12日金曜日

CTO club


6月12日-13日は豊橋で恒例のCTO Clubが開催されます。CTOとはChronic Total Occlusion;慢性完全閉塞のことで、慢性的に完全閉塞している冠動脈をカテーテルを使って開通させるという、最も難易度の高い心臓カテーテル治療です。その達人たちが手技を披露してくれます。最も楽しみにしている心臓カテーテルのライブデモンストレーションの一つで、ここ数年、毎年参加していたのですが、今年は残念ながら行けません(泣)。世界最高峰の巧みの世界を拝見できず残念です。かなりマニアな世界ですが(笑)。
13日はAHA BLS、ACLS-Rの同時開催です。その準備も含め、いろいろ忙しいです。14日はBLS-Rです。頑張ります。

2009年6月11日木曜日

cardioversionおあずけ

冠攣縮性狭心症疑いの方に心臓カテーテル検査を行いました。アセチルコリン負荷による冠攣縮誘発試験を施行。右冠動脈にアセチルコリンを注入した後、洞調律→心房細動になりました。検査は無事に終わりました(陽性)が心房細動は持続。
多くの場合は自然に治まりますので経過観察としていたのですが、翌朝になってもなお心房細動が持続していました。薬剤によるcardioversionでも良かったのですが、退院の時間が迫っているし、確実で手っ取り早い電気的cardioversionを選択。AHAはパドルよりパッドを推奨しているので、やっぱりパッドでしょ!とつぶやきつつ、パッドを開封し、前胸部と背部に装着し、モニターつけたら、あれ?洞調律(苦笑)。
今になって、自然に回復してしまいました。
患者さんにとってはよかったのですが、同期下電気的cardioversionを行いそびれた研修医は寂しそうでした。パッドももったいなかったです。
治療寸前に自然に回復してしまうことってよくありますね。電気ショックかけますよーという説明でびびらせると、ショックがかかってしまうのかもしれません(笑)。

2009年6月10日水曜日

アデホス投与時の上肢挙上2


前の記事の続きです。narrow QRS tachycardiaにadenosineと投与するとその反応により不整脈の鑑別が可能になることが少なくありません。従って、その貴重な情報を残すためにadenosine投与時は必ず心電図を流しながら行いましょうと御伝えしています。
今回も、12誘導心電図を装着しながらアデホスを投与したのですが、僕が上肢を挙上させたせいで肢誘導電極が動きノイズが入り、心電図が乱れてしまい、その乱れが是正される前に洞調律に復してしまい綺麗な心電図記録が残せませんでした(苦笑)。研修医に少しにらまれました(笑)。ごめんなさい。
ACLSコースでも、現場でも、上肢挙上はアデホスの効果を最大限に引き出すための手技ですからなるべく行いましょうとお伝えするわけですが、心電図が乱れないようにしましょうと追加しようかと思います(笑)。

アデホス投与時の上肢挙上


昨日もまた安定したnarrow QRS tachycardia患者さんに遭遇しました。研修医に対処をしてもらいました。息こらえが無効であったため、薬物治療としてアデホス10mgを1-3秒程で投与し、生食20mlで後押ししました。速やかに洞調律に回復しました。
研修医はきちんとした手技が出来ていましたが、ただ、投与直後の上肢挙上を行いませんでしたので、その場で僕が介入して挙上してあげました。ACLSプロバイダーマニュアルには上肢挙上を行う旨記載があることをお伝えしましたが、本当に必要かどうかは正直疑問が残るところです。手元にある本などでちょっと調べてみました。
ACLS Resource Text P133にも6mgを1-3秒で投与、20ml生食で後押し、上肢挙上と記載してあります。こうすることでハイレベルなアデノシンが心臓に達するとのことです。
一方、Up To Dateには1-2秒で投与、生食で後押しと書いてありますが、上肢挙上までは書いてありません。The Textbook of Emergency Cardiovascular Care and CPRにも6mgを1-3秒で投与20ml生食で後押し、としか書いてありません。上肢挙上の記載はありません。BraunwaldのHeart Diseaseにも6-12mgを急速投与、後押しする、としか記載がありません。
きっとあまり根拠はないのでしょうね。まあどうでも良い話なのですが(笑)。

AHA ACLSインストラクターとしては、今後も、ACLSコースでも、現場でも、上肢挙上はアデホスの効果を最大限に引き出すための手技ですからなるべく行いましょうと一応お伝えしていきます。

2009年6月9日火曜日

ペースメーカー(ICD)植え込み患者への除細動パッド貼布位置

AHA BLSプロバイダーマニュアル含め、これまでペースメーカー(含ICD)が植え込みされている患者に除細動を行う場合、パッドはデバイスから1インチ(2.5cm)以上離して装着することが推奨されていました。
ACLS Resource Textによると、最近の研究から、パッドはデバイスから3インチ(8cm)以上離して装着することを推奨しています。これは、患者自身に対する問題ではなく、デバイスへの悪影響を最小限にすることが目的のようです。メーカーによっては、6インチ離すことを推奨しているところもあるようです。
この情報は、心房細動患者へのcardioversionの研究から得られた知見であり、具体的にはパッドは胸骨右と背部に装着しています。非心停止の状況で、背部に装着できる余裕があれば良いですが、心肺停止の状況では難しいことが容易に推測されます。
Resource Textにも”前胸部と背部に装着することがデバイスへのダメージ軽減には望ましいが、それにより除細動が遅れるべきではない”と記載されています。
最新のCurrents2009年春号のQ&Aでも、植え込み型医療機器から2.5cm離して貼る云々、、という記事が出ています。8cmという話は出てきません。
少なくともBLSにおいては、今まで通り2.5cm離して貼ることで、問題なさそうです。

2009年6月8日月曜日

安定頻拍患者

当直中に動悸が主訴の中年女性が来院。動悸以外の訴えも特になく、脈拍以外のvital signは安定していました。12誘導心電図を記録したところ、HR170bpm、regular narrow QRS tachycardia。ACLSで言う、”安定した頻拍”です。逆行性P波がQRSの直後に確認できました。AVRTでしょうか、AVNRTも否定できません。いずれにしても静脈路を確保し、TCP付除細動器をそばにおいて、迷走神経刺激手技を試みました。息こらえをしてもらいましたが、全く効きませんでした。頸動脈洞マッサージは中年ゆえに避けました。アデホスを10mg急速静注、生食20mlで後押し、上肢挙上10-20秒、とマニュアルどおりに行いました。あ、マニュアルは6mgでしたね(笑)。いとも簡単に洞調律に回復しました。長いpauseも出ずにあっさり洞調律になったので、同席していた研修医に対してはimpressiveではなく、ちょっと残念。
ちなみに、投与時、PVCs2連発が1回でました(66%)。AFにはなりませんでした(1-15%)。(6/4アデノシン
AHA ACLSを最近受講した研修医と一緒に行いました。循環器医にとっては何てことない対処ではありますが、研修医にとっては貴重な学びの場です。講習で習ったことを現場でそのまま再現することで、理解が深まるし、正しい手技が身に付いていくものと思います。
現場で行うことをそのまま講習で行う、講習で行うことをそのまま現場で行う、そんなことをいつも心がけています。

この方、5年ぶりの発作のようで、ablationの御話もしましたが、希望なく、経過観察です。洞調律時の12誘導心電図は全くの正常で、Δ波もありませんでした。

2009年6月7日日曜日

AHA ACLSメガコードケースB

AHA ACLSメガコードケースBに、規則的で狭いQRS幅の安定した頻拍患者にアデノシン投与した後に虚血によると思われるVFが生じた、というシナリオがあります。単なる虚血性心疾患としては臨床的にはやや不自然な印象を持っていますが、この患者は実はWPWのような副伝導路を有しており、アデノシン投与により頻脈性心房細動を経て心室細動に移行、といった病態が背景にあるのかもしれません(6/4アデノシン 参照)。それならあり得るかなと。。一度VFになり、元来虚血が潜在していたことで悪循環に陥り、難治性VFとなったのでしょうか。
アデノシンを投与してVFになった、という流れは受講生にアデノシン使用に対する抵抗感が生まれてしまい、現場で使ってもらえなくなる可能性もあるので、アデノシンとの関連がないような形でVFに移行させるようケースプレゼンテーションをしましょう、という考え方が我々周囲のインストラクターの中ではコンセンサスを得ています。
でも、現場では、アデノシンを使用するときに除細動器やTCPを準備する人は意外と少ないような気がしますので、そのようなことに警鐘を鳴らし、是非とも現場では除細動器を準備した上で使用することを強調する意味でも、アデノシンがVFを誘発したというプレゼンテーションで良いのでは、と個人的には内心思っています。

2009年6月6日土曜日

dual-dispatch system

Dual Dispatch Early Defibrillation in Out-of-Hospital Cardiac Arrest: The SALSA-Pilot (Eur Heart J 2009;May 27)

【方法】消防隊にCPRとAED操作方法をトレーニングし、院外心肺停止と思われる救急通報の時に至近の救急隊のみならず、至近の消防隊も出動するシステム(dual-dispatch system)(n=863)と、以前の救急隊のみ出動するシステム(n=657)を比較した。
【結果】94%のケースで消防隊は心肺蘇生術のサポートを行っており、消防隊が先に現場到着したケースは36%であった。前者のシステム(dual-dispatch system)で、早期到着(7.1分vs7.5分)、早期除細動(8.2分vs9分)をなし得ており、1ヶ月後の生存率は有意に高かった(6.8% vs 4.4%)。同様に、目撃者のいる心停止の場合、1ヶ月後の生存率は有意に高かった(9.7% vs 5.7%)。
【結論】dual-dispatch systemは院外心肺停止例の生存率を60%向上させる。

ストックホルムのデータです。変更したシステムの効果を測定することは大変重要ですね。東京も救急通報時に消防隊が出動するケースがありますが、その効果はどうなんでしょうか、興味があるところです。

Flat Line Protocol


傷病者にモニターを装着したらフラットライン。このフラットラインが本当にasystoleなのか否か確認する”フラットラインプロトコール”はG2000時代には良く使われていましたが、G2005ACLSプロバイダーマニュアルからはこの言葉は消えて、コースでもあまり聞くことがなくなりました。
しかしG2005ACLSプロバイダーマニュアルには"You should comfirm that the flat line on the monitor is indeed "true asystole" by validating that the flat line is,,,,,,"と、フラットラインの時は、他のリズムでないか、或は技術的なミスの結果ではないか、確認すべし、と書かれています。技術的な問題としてリード類の接続ミス、電源入れ忘れ、感度が低すぎる、が挙げられています。
ACLS Resource Textには更に詳しく記載されており、”フラットラインプロトコール”という言葉もしっかりと登場しています。その具体的方法についての記載(下記)はG2000ACLSプロバイダーマニュアルとほぼ同じ内容です。
僕の中ではフラットラインプロトコールは死語だったのですが、やはり忘れてはいけないもののようです。絶え間ない胸骨圧迫などHigh Quality CPRがおろそかにならないように、プロバイダーマニュアルにおいては遠慮がちな記載になったものと推測します。High Quality CPRがしっかりと確実になされている方は、それを継続しながらフラットラインプロトコールも必要に応じ実践することになるのでしょう。

・除細動器とモニタの双方の電源を確認。(電源が別になっている機種もある)
・3誘導モニタを使用している場合、全ての接続を確認
 除細動器→モニターケーブル
 モニターケーブル→モニターリード
 モニターリード→患者の胸壁
・クイックルックパドルを使用している場合、次の接続を確認。
 除細動器→パドルケーブル
 パドルケーブル→パドル
 パドル→伝導パッドやジェル
 伝導パッドやジェル→胸壁
・ゲインや感度の確認
・誘導選択の調節
・3点誘導なら全ての誘導で素早く確認(VFのベクトル説)
・パドル誘導なら、VFのベクトルを確認するために2つのパドルを90度ローテーション移動
・パッド使用なら、張り替えせずに、3点誘導リードを使用する

2009年6月5日金曜日

Web会議


今日はWeb会議なるものを初めて体験しました。NTT ITのMeetingplazaなるシステムを使用したようですが、離れた場所の方々と一同に議論が交わせます。
同HPから拝借した写真ですが、雰囲気はこんな感じです。今どきーという感じで、世の中進歩したなあと感心しきりです。今回のシステムはWindowsのみ使用できて、Macは使用できませんでした。どーん。やっぱりMacは。。。。。

2009年6月4日木曜日

アデノシン


アデノシンはACLSプロバイダーが頻脈性不整脈の患者へ堂々と使ってもよい唯一の抗不整脈薬です。それだけ安全性が高い薬と言う訳です。
しかし副作用は40−60%で起こるとされています。ほとんどが顔面紅潮、動悸、胸痛、低血圧といった軽い副作用で、半減期が短い(5-10秒以下)ために一過性ですが、まれに重篤な副作用も起こりえます。
元々房室伝導をブロックするために使用するので、当然房室ブロックなどの徐脈性不整脈は生じ得ますが、多くが一過性です。一方、12mgのアデノシン投与で心房細動が12%に生じたとする報告があります。AHA/ACC/ESCの上室性不整脈のガイドラインにも「心房細動が1-15%の頻度で生じる」と記載されています。PSVTの種類でも出易いもの、出にくいものがあるようで、AVRT(WPWが含まれるタイプ)は15%に生じましたが、AVNRT(WPWは含まれないタイプ)は全く生じなかったとのことです。WPW症候群などの副伝導路を有している患者の場合は、心房細動が著しい頻拍化を呈し、心室細動等致死的事態に陥る場合があり得ます。また徐脈からTorsade de pointes(Tdp)、多形性VTに移行することがありますので、QTが延長している患者には慎重に使うことが必要です。ちなみに心室性期外収縮や非持続性VTの出現頻度は66%にも及びます。
亜急性期の心筋梗塞患者に使用する場合は、心房細動や多形性VTが生じやすいので注意が必要です。
ほとんどのケースで安全に使える薬ではありますが、使用の際にはTCP付き除細動器を側に用意しておくことが極めて重要です。ある著名な不整脈専門家はアデノシンを使用するときは除細動器を準備しておかないと怖くて使えない、と言っていました。

※日本の臨床の現場ではアデノシン三リン酸;アデホス を使用しています。薬効はほぼ同等です。

参考:
Up To Date :Major side effect of adenosine
AHA/ACC/ESC Guidelines for the Management of Patients with Supraventricular Arrhythmias

2009年6月3日水曜日

世界のタバコ警告表示


タバコは大嫌いなのですが、世界のタバコ警告表示(タバコは美容の大敵!より)がなかなか興味深いです。日本も表示すればよいですね。

2009年6月2日火曜日

Dock's murmur

心雑音のことをちょっと調べていたら、へえ〜という発見あり。左冠動脈前下行枝の高度狭窄を通過する乱流により、大動脈弁閉鎖不全に類似した拡張期雑音を聴取することがあるらしい(Am J Med 1967;42:617-9.)。Dock's murmurと称し、左第2〜3肋間胸骨左縁あたりで聴取しやすい。知らなかった。

2009年6月1日月曜日

MAC


MACとWindows、両方使っています。MACはスタイリッシュで、扱いやすい面も多々あるし、好きなのですが、困ることもこまごまあります。このブログの写真も縦横がどうも自由にいきません(苦笑)。縦の写真をアップロードしたら横になっちゃったり、その逆とか。先日のPEA、Asystoleのときの心電図もMACだとどうしても縦になってしまっていたのですが、Windowsではいとも簡単に横向きに直せました。知識が足りないだけかもしれませんが、MAC派には、やっぱりなりきれないです。