最近adenosineネタが多かったので、adenosineとATPの整理をしておきます。これは数年前に我々周囲のACLSインストラクターで交わされた議論が元になっています。
adenosine(アデノシン;商品名アデノスキャン)は日本では心臓核医学検査の薬剤負荷として使用されていますが、頻脈性不整脈の治療には使用されていないのが一般的と思います。一方、ATP(アデノシン三リン酸;商品名アデホス)は各種神経疾患の自覚症状軽減や難聴、耳鳴りなどの保険適応がありますが、日本ではこれが頻脈性不整脈の治療に使用されていることが一般的です。頻脈性不整脈への保険適応はありません。
頻脈性不整脈治療に使用する場合の投与量はadenosine6mgの記載が一般的です。それではATPはどのくらい使用すればよいのでしょうか。古い文献ですがAm.Heart J1990;119:316-323にその情報が示されています。大腿静脈から投与した場合は、adenosine3.8mgとATP6.6mgが同等であり、肘正中静脈から投与した場合は、adenosine8.4mgとATP9.3mgが同等であったと記載されています。投与ルートによって変わる傾向があるのですね。我々は一般的に肘正中静脈に近いルートを使用するでしょうから、adenosine6mgはATP6.64mgに相当します。したがって、肘正中静脈から投与する限りは、adenosineもATPも投与量は大差ないと考えてよさそうです。大腿静脈から投与する場合はadenosine6mgはATP10.4mgに相当します。
日本では慣習的にATP10mgで投与されることが多い印象がありますが、肘正中静脈投与の場合はあまり根拠がないわけです。この論文のアブストラクトには「adenosine3.8mgとATP6.6mgが同等」のみの情報が記載されており、この記載だけが一人歩きして、adenosine6mg=ATP10mgとなった可能性も考えられます。
当施設では40mg/2mlのアンプルを使用しており、自分としては6mgという半端な量の調節が面倒なので、初期投与量10mgにしてしまうことが多いです。結局10mgじゃん(笑)、すいません。
このアデノシンの量はいつも議論になりますよね。PALSでは同じで良いと教えています。こういう文献がある事初めて知りました。
返信削除大変勉強になりました。ありがとうございました。
kekimura99さん、コメント有り難うございます。少しでもお役に立てたら嬉しいです。小児対象のアデノシンのデータもあるといいですね。僕にとっては小児は未知の世界ですが。。。。
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